働き方改革の推進と、昨今の新型コロナウイルス感染拡大防止で、注目を集めるようになったリモートワーク。テレワークや在宅勤務といった呼び方もされますが、それぞれ何が異なるのでしょうか。本記事ではリモートワークの概要と、導入における課題、またリモートワークを成功へ導くためのポイントをわかりやすくご説明します。
はじめに、同じような意味で使われることの多い「テレワーク」「リモートワーク」「在宅勤務」の違いについてそれぞれご説明します。
テレワークとは、「tele=離れたところで」と「work=働く」を合わせた造語で、総務省発行の「テレワーク導入手順書」の中では「ICTを活用した場所にとらわれない柔軟な働き方」と定義されています。日本では少子高齢化に伴い、生産年齢人口の減少が大きな社会課題となっています。子育て中の女性や65歳以上の高齢者なども含め、労働人口を確保し、職場の労働生産性を向上させていかなければなりません。そこで厚生労働省や総務省ではテレワークという表現を用いて、柔軟な働き方を選択できる社会にするための普及活動に取り組んでいます。
テレワークを活用することにより、所属企業のオフィスではない場所から、インターネット等を通じて社内のデータにアクセスして業務が行えるため、効率的で多様な働き方が可能となります。テレワークという言葉には、単純にオフィスからの離れているという距離の意味だけでなく、ワーク・ライフ・バランスの実現による労働環境の改善の意味も込められています。
リモートワークとは、「remote=遠い」と「work=働く」を合わせた造語で、テレワークと同様にオフィスから離れた場所で勤務を行う働き方のことを指します。テレワークとリモートワークはほぼ同じ意味と捉えて差し支えありませんが、 テレワークが「ICTを活用した」「柔軟な働き方」として定義されているのに対し、リモートワークについては明確に定義されていません。そのためリモートワークについては、単純に距離的な意味で、オフィスから離れて行う仕事全般を指すと捉える考え方が一般的です。
在宅勤務とは、自宅に居ながら会社の仕事を行うことをいいます。オフィスから離れた場所である自宅での勤務となり、在宅勤務もテレワーク・リモートワークの一種です。
言葉としての意味は字面通りですが、在宅勤務がもたらすメリットとしては、従業員の通勤負担の軽減により、育児・介護などの事情がある方でも就労を継続できるようにすること、プライベートの時間を創出しやすくすることなど、ワーク・ライフ・バランスを実現する効果が期待されています。
リモートワーク(テレワーク)の種類を簡単に図にするとこのような関係になります。
(図)テレワーク・(リモートワーク)の形態
参考:総務省「情報システム担当者のためのテレワーク導入手順書」より作図
https://www.soumu.go.jp/main_content/000668432.pdf
リモートワークの種類としては、営業先の会社や飛行機・新幹線などの移動中、カフェ等も就業場所に含める働き方である「モバイルワーク」や、自宅で働く「在宅勤務」、所属する事業所以外の事業所で働く「サテライトオフィス勤務」など、様々な働き方が含まれます。
次に、リモートワーク(テレワーク)を政府としても推進するようになった背景についてご説明します。
働き方改革において重要な位置づけとなる取り組みの一つが、リモートワークの導入です。政府が定めた「世界最先端IT国家創造宣言」では、「2020年にはテレワーク導入企業を2012年度(11.5%)比で3倍にする」という目標を掲げています*。
前述の通り日本では少子高齢化が深刻な問題となっており、労働人口が今後大幅に減少していくことが予想されています。一方、職場では長時間労働が行われ、育児中の女性は働くことができず、男性中心の職場がまだ多いのが現状です。このような働き方は過労死など人命や健康への影響が心配されるだけでなく、少子化の原因を作り、また女性のキャリア形成を阻む要因、男性の家庭参加を阻む要因にもなります。
そこで、この悪循環を断ち切るために、働き方改革が断行される運びとなりました。長時間労働を改め、より短い時間で成果を出せる、生産性の高い働き方に変えていくことによって、働く意欲のある方が個々の事情に応じた働き方を選択できるようになることを目指した取り組みです。
リモートワークが導入されれば、働く意思のある女性のみならず、身体に障害のある方や、足の不自由な高齢者など、多様な人材を登用できる可能性が広がります。
*参考:首相官邸:世界最先端デジタル国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画について
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/kettei/pdf/20190614/siryou1.pdf
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政府を中心に導入の推進活動を行っていますが、実際何割程度の企業がリモートワークを導入しているのでしょうか。総務省の「令和元年通信利用動向調査の結果」によると、2019年の導入率は20.2%で、なかなか導入が進んでいるとはいえない状況でした。
導入が一気に進んだのが2020年の春以降です。新型コロナウイルス感染症の流行とそれに伴う緊急事態宣言の発令が導入を急激に進めることになりました。国の統計はまだ出ていないため東京都の調査にはなりますが、コロナ以前の東京都内企業(従業員30人以上)のリモートワーク導入率は2割程度でしたが、2020年4月の緊急事態宣言下では、62.7%に急増しました。
参考:
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/statistics/data/200529_1.pdf
https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/hodohappyo/press/2021/01/22/17.html
リモートワークでは働く場所を選べることで、企業と従業員の双方にメリットがあります。
リモートワークが進むとオフィスに出社する従業員数が減るので、通勤手当などが不要になります。また、これまでと同様の広さを確保する必要がなくなるので、オフィスそのものを縮小し、家賃や光熱費を削減することもできます。さらに、離れた場所でも業務を円滑にするために、書類の電子化などが進むと、印刷代や紙書類を管理するためのスペースも減らしていくことができます。
オフィス以外で働くことができるようになると、地方や離島、国外など遠方に居住する人材も採用することができるようになります。これによって、これまでエリアの問題で採用ができなかった優秀な人材を採用できるようになり、企業の資産である人の質を上げられます。
さらに、リモートワークによって育児や介護中の従業員をはじめとした多種多様な人材の働きやすさを担保できるようになり、離職率を下げることができます。離職率は就職で企業を選ぶ際に気にする人も多いポイントなので、離職率が下がることで、自然と人材の集まりやすい企業にもなっていくでしょう。
働く場所が選べることで、移動にかかる時間を削減することができます。
総務省統計局の平成28年社会生活基本調査の結果によると、通勤時間の平均は1時間程度です。在宅勤務の場合、往復2時間分の時間が自由に使えるようになると考えると、影響度の大きさがよくわかります。また、通勤は時間がかかるだけではなく、天候や事故などによる遅延の可能性や、長時間にわたる満員電車などで精神的なストレスがかかっています。そのようなストレスからの解放もリモートワークの大きなメリットです。
浮いた時間は、趣味や仕事に役立つ勉強はもちろん、睡眠時間に充てることもできるでしょう。自分で使い道を決められる時間が増えることで、これまでよりも満足できる生活が送れるようになります。
リモートワークによって、距離的な意味での通勤可能性を気にせずに済むことになります。これまでは距離の問題で断念していた企業や、そもそも検討の候補にもしていないかった国外などまで含めた、幅広い選択肢から就職先や転職先を選ぶことができます。
通勤が必要なくなることで、家庭の事情があっても働き続けやすくなります。これまでは、配偶者の転勤や、育児・介護などで距離や時間の制約が生まれてしまうと、退職するしか方法がない場合もありました。しかし、リモートワークによって、オフィスに出社する必要がなくなれば、配偶者の転勤先がオフィスから遠く離れた場所でも問題ありませんし、育児や介護で不規則な対応が必要になる可能性があっても、対応しやすい場所で勤務ができれば、働き続けることができます。
新型コロナウイルス感染症による緊急事態宣言で実際に体感した方もいらっしゃるかもしれませんが、突然リモートワークをしなくてはいけなくなった場合、業務に支障が出てしまう可能性があります。あらかじめ導入の準備をしておくことで、どのような状況になっても円滑に業務を遂行できるようになるでしょう。導入時の課題を解消するためのポイントを5つご紹介します。
働いている姿が常に目に見えるわけではなくなるため、本来の職務が全うできている状態かどうか可視化をする必要があります。それは怠慢防止の観点だけでなく、生産性の高い業務を行っている従業員の能力を適切に評価する観点からも必要なことです。
目が行き届かなくなると従業員のモチベーション低下にも繋がりかねないため、マネジメントラインはこれまで以上にメンバーの意識付けや管理に注意を払う必要があります。成果物や日報の提出を義務付けるなどの工夫が求められます。
リモートワークを行うにあたっては、主にノート型パソコンやタブレット端末を利用します。こうした端末はサイバーセキュリティ対策がしっかりと行われている職場と比較すると、情報漏洩リスクに晒されやすい環境といえます。
ウイルス対策ソフトをインストールする他、パスワード管理の厳格化や、重要情報へのアクセスへの二段階認証の設定、通信の暗号化、端末紛失時にはアカウントロックがかかる設定など、あらゆる技術的なセキュリティ対策を施しましょう。
また、技術的な対策のみならず、従業員による人為的なセキュリティリスクも回避する必要があります。適切な従業員教育を行い、情報管理ルール等を遵守することが求められます。
会社の中にいれば、デスクにいるときに声をかけたり、会議室で顔を合わせて議論をしたりできますが、リモートワークになると同じ場所に従業員が対面で集まることができなくなります。業務が滞ることのないよう、打ち合わせのためにWeb会議システムを導入しておくことは不可欠といえるでしょう。また、メールでのやり取りに加えてビジネスチャットツールを活用することで、テキストベースの情報共有がスムーズに執り行えます。
リモートワーク中に通信が度々遮断されたり、接続できない状態が続いたりすると、業務が進められず、従業員側にもストレスがかかります。適切な回線を整備し、必要に応じてWi-Fi端末を従業員へ貸与できるようにするなど、アクセス負荷に耐えられる通信環境の整備も大切です。
リモートワークではノート型パソコン等の端末以外にも、周辺機器が必要になることがあります。ディスプレイやマウス、延長コード、ヘッドセット等がその一例です。周辺機器の他にも、付箋やメモ帳といった事務用品や、作業用のデスクや椅子が必要になる可能性もあります。
周辺機器も含めて会社から貸与するのか、従業員で購入した場合は会社に請求できるのかなど、ルールと合わせて整備する必要があります。
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将来的な人材不足への備えとしても、企業は従業員が働きやすい環境を整え、優秀な人材が長く働いてくれるよう配慮をしていくことが求められています。リモートワークの導入にあたり、社内のITインフラ環境を整備していきましょう。
リモートワーク推進の味方となるツールの一つが、シヤチハタの提供する「Shachihata Cloud(シヤチハタクラウド)」です。オフィス内にいなくても書類の捺印・回覧ができる電子決裁システムであり、クラウド型のため導入にあたっては複雑なシステム開発を必要とせず、すぐに導入することができます。本認証機能、改ざん防止機能も付いて、セキュリティ対策も安心です。リモートワークを推進していきたい企業の方は、「Shachihata Cloud」の導入を検討されてみてはいかがでしょうか。無料トライアルもございますので、ぜひご利用ください。
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