働き方改革の一環で、時間外労働の上限規制が厳格化されることとなりました。中小企業においては2020年4月より施行されています。残業規制をはじめとする政府が推進するこの改革により、これまでの労働を取り巻く環境に見直しが迫られています。本記事では働き方改革とは何か、また改革が中小企業へ与える影響についてご説明します。
はじめに、働き方改革の概要をご説明します。働き方改革とは、働く人々がそれぞれの事情に応じて、多様で柔軟な働き方を自ら選択できるようにするための改革です。
日本では少子高齢化に伴い、生産年齢人口の減少が大きな社会課題となっています。人手不足を解消するためには、育児や介護などの事情で仕事を諦めている方が就業しやすい環境を作る、働きすぎで健康を害する方を減らすといった対策が必要です。職場の生産性を向上させ、働く人がより良い将来展望を持てることを目指して取り組みが進められています。
国内雇用の約7割を担う中小企業・小規模事業者においては、働き方改革の着実な実施が特に必要とされています。柔軟な働き方を選択できるようになれば、生産性の高い魅力的な職場となり、ひいては人材確保へも繋がります。優秀な人材が集まれば業績の向上が期待できるようになります。働き方を変えることによって好循環を作ることが重要です。
(図)働き方改革による好循環のイメージ
参考:https://www.mhlw.go.jp/hatarakikata/index.html
働き方改革にはさまざまな政策が含まれていますが、実施時期などが大企業と中小企業で異なります。中小企業に該当するかどうかについては、資本金(出資金)の額と常時使用する労働者数によって決められます。
※個人事業主や医療法人など資本金や出資金の概念がない場合は、労働者数のみで判断
引用:https://jsite.mhlw.go.jp/kyoto-roudoukyoku/content/contents/000271655.pdf
では、働き方改革で具体的に何が行われるのかというと、主に次の3項目が挙げられます。
働き方改革の柱の一つは、残業時間の上限規制です。これまでは仮に36協定に違反し時間外労働の上限を超過した場合でも、労働基準監督署による「指導」に止まっていました。しかし、今後は「罰則」が設けられることとなります。1か月の時間外労働45時間、年間360時間の上限を厳守しなければなりません。
また、臨時的残業を例外的に年6回まで許容する「特別条件付き協定」についても、条件が明確に定められました。36協定を超えて時間外労働を行う場合には、原則として以下4つのルールをすべて守る必要があります。
1. 時間外労働は年間720時間以内
2. 時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満
3. 時間外労働と休日労働の合計について、「2か月平均」「3か月平均」「4か月平均」「5か月平均」「6か月平均」がすべて1か月あたり80時間以内
4. 時間外労働が月45時間を超えることができるのは年6回まで
引用: https://www.mhlw.go.jp/hatarakikata/pdf/000463185.pdf
今後は特別条項の有無にかかわらず、1年間を通じて常に、時間外労働と休日労働の合計を月100時間未満、2〜6か月平均80時間以内にしなければなりません。
日本の年次有給休暇の取得率は低い傾向があり、2018年では52.4%でした。原因としては、従業員が年休取得を申し出たくても、言い出しにくい環境があることが考えられます。そこで2019年4月から労働基準法が改正され、年5日の年次有給休暇の確実な取得が義務付けられました。使用者は時季を指定し、年次有給休暇が10日以上付与される労働者に対して取得させる必要があります。また、労働者ごとに年次有給休暇管理簿を作成し、3年間保存しなければなりません。
参考:https://www.mhlw.go.jp/hatarakikata/pdf/000463186.pdf
長時間労働が続くことで健康を害したり、最悪の場合は過労死や自殺に至ったりするおそれがあるため、使用者が従業員の労働時間を正確に把握し管理することは非常に重要です。そこで2019年4月より、裁量労働制が適用される人なども含め、すべての人の労働時間の状況を、客観的な方法で把握するよう義務付けられました。「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」も公表されています。
参考:https://www.mhlw.go.jp/kinkyu/dl/151106-04.pdf
労働生産性の向上に期待がかかる働き方改革ですが、実際に前述のような好循環を生み企業の収益化に繋げるためには、まず社内の環境整備が必要です。続いて、働き方改革が中小企業へ及ぼす主な影響を3つご紹介します。
これまで従業員が正しい残業時間を申告していなかったり、有給消化が行われていなかったりする場合には、今後はその分の給与を支給することになるため、人件費は今までよりも上昇することになります。労務管理もこれまでより手間がかかるでしょう。本来支払うべきであった人件費がこれを機に適正化されるわけですが、これまで抑えられていたコストが急にかかるとなると、中小企業にとっては痛手となり得ます。
矛盾するように思えるかもしれませんが、生産性向上を目的としたこれら働き方改革を励行するにあたっては、一時的に生産性が低下する可能性があります。なぜなら、会社のあらゆる制度や仕組みは、これまでの働き方を前提に形成されているためです。有給休暇取得日数が各々増えれば、従業員の休暇期間中に仕事が止まる事態も発生するかもしれませんし、引き継ぎをする手間などが増えます。新しい働き方を軌道に乗せるまでは、使用者・従業員双方で不便を感じる場面があると想定されます。
有給休暇取得日数の管理、残業時間の管理が厳格化されることに伴い、これまでの勤怠管理や実務の進め方を改めて、新しい働き方へ対応させていくことが求められます。就業規則の変更なども含め新制度に対応できるよう、普段の業務・管理のフローの見直しが必要です。
このように、働き方改革を最終的に業績・収益向上へと繋げるためには、制度に対応するための環境整備を早急に進める必要があります。最後に、労働生産性を向上させるためにすぐにでも準備しておきたいツールをご紹介します。
中小企業の中にはタイムカードや出勤簿など、紙ベースの仕組みを利用して勤怠管理をしている企業もあるかもしれません。しかし正確に把握・管理するには、データとして記録に残せる勤怠管理ツールの導入は検討するべきといえるでしょう。
勤怠管理ツールを導入することで、従業員の日常的な勤怠の集計はもちろん、給与計算も正しく行うことができます。残業が多い従業員とその管理者に対し適宜アラートを発して、上限に近づくことを防ぐ機能などもあります。
残業ができなくなる以上、就業時間内に確実に業務を消化できるよう、業務を効率化するツールの活用は必須といえます。ツールの種類も多岐にわたりますが、極力デジタル化しスピード感を持って対応できるものを選定しましょう。
たとえば、シヤチハタの提供する「Shachihata Cloud(シヤチハタクラウド)」を活用することで、書類の承認・決裁にかかるフローをすべてデジタルに一元管理でき、業務効率が向上します。書類を紙に印刷することなく、関係者へオンラインでスピーディーに回覧・捺印が可能となります。出張先などでもスマートフォンやタブレット端末から対応でき、業務が滞ることがありません。
その他、社内の業務効率化を推進するツールについて詳しく知りたい方はこちらの記事もご参照ください。
働き方改革に伴い、労働時間管理に関する法整備が進むこととなりました。既に施行されているため、準備が不十分であれば早急に対応しなければなりません。生産性を向上させるための便利な仕組みは数多く誕生しています。まずは「Shachihata Cloud」のように比較的簡単に導入できる仕組みの検討から着手し、従業員の業務効率化・職場全体の生産性向上を図りましょう。
また、特に中小企業が働き方改革にどう対応していくべきかについて詳しく知りたい方はこちらもご参照ください。
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