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コラム

時代とともに変わりゆく”ペーパーレス”と、その先にあるもの

WRITER
小倉 隆幸
シヤチハタ株式会社 システム開発部部⻑
入社後30年を経過中。入社当初は営業部門に配属され12年間市場動向を学び、その後現在のシステム部門へ異動。17年目を迎える(ん︖)現在も、強い意を持ちながら営業、企画に情熱を注ぎこむ55歳。

かつて、ペーパーレスは森林伐採を減少させるため、主に環境保護を目的として進められていました。しかし近年、ペーパーレスの目的は変わってきています。IT化にともなってボーダーレスな社会が進みゆく今、ペーパーレスの目的は、意思決定スピードを含む競争力強化へと変化しているのです。
この記事では、ペーパーレスの変遷について振り返るとともに、今後ますます加速するであろうペーパーレス化を企業においてどう導入すべきか、具体的にご提案します。

Index

ペーパーレスと法整備の過程

まずは、ペーパーレスを取り巻く法案について、年代の古い順に見ていきましょう。

1998年7月施行「電子帳簿保存法」

「電子帳簿保存法」は、国税関係の帳簿を磁気テープや光ディスクなどへ電子データとして保存する手段などを定めた法律です。従来、企業や個人事業者が紙で管理していた会計記録は、紙の形で7年間保存することが義務付けられていました。しかし、この法案の成立によって、真正性の確保・見読性の確保など一定の保存要件を満たせば帳簿書類を電子データで保存することを可能になりました。

2001年4月施行「電子署名法」

「電子署名法」は、電子署名が署名や押印と同等の法的効力を持つことを定めた法律です。
民事訴訟法第228条4項にある「本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する。」に対し、電子署名法第3条では、「電磁的記録に記録された情報について本人による電子署名が行われているときは、真正に成立したものと推定する。」としています。

2001年4月施行「IT書面一括法」

「IT書面一括法」は、書面に代えて電子メールなど情報通信技術を利用する方法によるサービス提供を可能した法律です。
ITが進展する中で、書面の交付または書面による手続を義務付けている各種規制が、電子商取引などの阻害要因になっていました。それを受け、契約締結に際し一定の書面の交付義務を定めた法律について送付される側の同意を条件とし、書面の交付に代えて電子的手段を利用することを認めています。

2005年4月施行「e文書法」 

「e文書法」は、民間事業者等が行う「書面の保存等における情報通信技術の利用に関する法律」と「書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」の総称です。財務・税務関係の帳票類や取締役会議事録など、商法や税法で保管が義務づけられている文書について、紙文書だけでなく電子化された文書ファイルでの保存が認められています。

リサイクル目的から紙書類にまつわる業務停滞を改善する目的へとシフト

かつては「ペーパーレス」と「リサイクル」が一対として取り扱われる時代もありました。
しかし2000年頃からインターネット環境が整備され、インフラが充実するようになると、「紙中心の業務を電子に置き換えられないか」という運動が起こるようになりました。そこで登場したのが、「紙だから起こりうる業務の停滞」を解消する手段としてITを活用する考え方でした。そのような動きを受け、ペーパーレスにまつわる法整備は進んでいったのです。

引用:「e-Japanの構想」より https://ja.wikipedia.org/wiki/E-Japan

ペーパーレス化は私達の身近なところでも進んでいる

ペーパーレスとは単に書類を電子データ化することだけでありません。気が付けば、私たちの周りでは「ペーパーレス」化が急速に進んでいます。ペーパーレスと効率化というキーワードを思い浮かべて、連想できるものはいくつあるでしょうか。

ペーパーレスの身近な事例:現金払いとキャッシュレス決済

身近なところのペーパーレス化のひとつが「ETC(Electronic Toll Collection System)」。言わずと知れた高速道路における「自動料金収受システム」です。このシステムは2001年に千葉・沖縄地区で一般利用が開始されました。導入当初2002年4月時点での利用状況はわずか2%程度でしたが、2019年4月時点では92.1%にまで拡大するに至っています。

引用:ウィキペディア「ETC」項目より https://ja.wikipedia.org/wiki/ETC

ペーパーレス化の後押しとなった、インターネットの普及とクラウドサービスの来航

災害時に再認識した、IT技術の必要性と紙資料の脆弱性

2011年、日本は思いもよらない大惨事に見舞われます。「東日本大震災」です。
未曾有の災害は単に建造物を破壊したにとどまらず、それによって引き起こされた津波は多くの人や建物を飲み込み、計り知れない数の犠牲者を出しました。また同時に役所の資料までも不明となる事態は、犠牲者の数さえ不明確にしてしまいました。

災害直後は、電気はおろか電話もつながらず、通信手段として活用できたのは思いもよらなかったSNS(Social Networking Service)でした。もともと軍事技術として誕生したインターネットでしたが、広く市民権を得られたのは、災害時のような緊急事態でも通信ができ、事業継続のための通信網の砦として見直されたからではないでしょうか。

2011年以降、海外からさまざまなクラウドサービスが来航

震災後、日本に続々とやってきたのが、米国クラウドサービスでした。
2013年、米国で一大ブームを巻き起こした「Box」社の日本法人が設立されます。
Boxは、利用のしやすさ・セキュリティにおいて基本的には『企業での利用』を前提に設計されており、アメリカ政府の導入実績を持つほどのクラウドサービスです。

その後もクラウドサービスの来航は止まらず、米国で電子契約の代名詞とされているサービス「DocuSign」が、2016年アジア市場開拓の拠点として日本法人を立ち上げます。

このほか、テレビ業界を震撼させた「NETFLIX(ネットフリックス)」・民泊サービスの先駆者「airbnb(エアービーアンドビー)」、今や日本では宅配フードサービスとして広がっている「UBER(ウーバー)」なども国境を越えて続々となだれ込んで来ています。

これらのクラウドサービスの普及は、日本社会におけるペーパーレス化の後押しとなりました。

ペーパーレスが今、支持される理由

今なぜ、急にペーパーレス社会の実現が叫ばれているのでしょう。

ボーダーレス社会を生き抜くために。「ペーパーレス社会」の必要性

その理由のひとつが、「インターネットによるボーダーレス社会の到来」です。
インターネットの普及は、それまで防波堤となっていた国境を乗り越え、それまで国の内部だけで行われていた競争を全世界へと広げました。それにともない国同士の規制についても見直しが行われ、今や企業は「守り」の姿勢だけでは生きて延びられない時代へと変化しています。

そのひとつの象徴が「キャッシュレス」です。世界的に見て、日本ほど”現金”が定着している先進国は存在しないでしょう。「『円』が信用されている」とも言えますが、例えば隣国の中国のように、あらゆる決裁をデータ(QRコード)で行う国と比べると、意思決定スピードの違いやお金の流れの透明性がもたらす体力という意味において、とても太刀打ちできません。

東京オリンピック開催にともない、ペーパーレスは加速化する見込み

そんな日本でも現在、ペーパーレスの波が一気に訪れることが予測されます。
その要因のひとつは「東京オリンピック」の開催です。2020年、日本にはたくさんの海外からの訪問者が予想されます。彼らが自国のサービスと同様、またはそれ以上のサービスを日本に求めてくること・我々が彼らの満足を満たすためにより便利なサービスを提供しなければならないシナリオが見えるからです。

ペーパーレスのメリット

①場所を移動せずに仕事環境を手に入れられる

  • 出張せずして遠隔地と会議ができる
  • 在宅しながら会社のデスクが手に入る
  • 通勤などの移動時間も活用できる

②データで管理できるので、保管スペースを省略できる

  • データ検索なので、書類の検索スピードが速い
  • データで管理するので災害・事業継続に強い
  • データ同士をつなぐことができ、業務のロスを省くことができる

ペーパーレスのデメリット

①導入したペーパーレスのシステムに、運用ルールを合わせなければならない

  • システムによっては、従来の運用ルールを大きく変えなければならない場合がある
  • 社員は新しい運用ルールを覚えるために業務時間を割く必要がある
  • たくさんのルールを一度に変えなければならない場合、反対や懸念の声が起こりやすい

②ペーパーレスのシステムを定着させるに莫大な時間とコストがかかる

  • 新システムを定着させるための勉強会や研修が必要になる
  • 定着させるために各拠点を渡り歩く必要があり、時間とコストがかかる
  • 運用が定着するまで、社員からの質問対応に追われる可能性がある

③会社にはさまざまな人がいるため、スムーズに運用が進むとは限らない

  • システムはツール(道具)であるため、使える人がいないと価値が最大発揮されない
  • システム導入によって仕事が捗ることが大前提であるが、かえって仕事が滞る可能性がある
  • 利用者全員で使えてこそ意味があるが、ITに明るくない人も少なからずいると予想される

企業における、ペーパーレス化の現状

ペーパーレスを効率的にシステム化できない理由

ペーパーレス化の動きが加速する日本社会ですが、実際に進めるうえではさまざまな課題が起こりえます。

「印鑑の使用をやめてすべて電子印鑑に切り替えたいが、なかなか進まない」
「システム化を推進しているが、すべてがワークフローには乗せられない」
「電子書類と紙書類、どちらも使っていて二重管理が必要になっている」

などが現状ではないでしょうか。

多くの企業は何らかの業務をワークフローシステムで運用しています。しかし、それらはバラバラに導入された各社のシステムで、インターフェイス(画面回り)も違えば、ルール上、パスワード等も違うというケースが起こりえます。さらに、システム化の棚卸をするとワークフローに乗せるまでもない(または乗せられない)文書が多いという現状にも気づくことが多いようです。
つまり、紙書類では融通が利いていた運用がシステム化される過程で、”ケース”をまとめることができずにシステム化を諦めるという状況が起こっているのです。

日本には印鑑文化が根強く残っている

新興企業では起業時より、「印鑑廃止」を唱える会社も多いようです。また、融通が利く規模の企業はルールの定着も早く、比較的容易に印鑑から脱却できると聞きます。
しかし、社外とのやり取りでは事情が変わります。日本のビジネス社会では、いまだ「印鑑」が一般的で、例えば印鑑がない請求書は社会的に受け入れられません。「捺印=承認文書」の概念は、日本に深く定着しているのです。

ペーパーレスを実現するには?ペーパーレス化を進めるポイント

ペーパーレスのこれまでの成功事例から、いくつかの共通点を見つけました。以下にペーパーレス化を進めるためのポイントをご提案します。

「トップダウン」でペーパーレス改革を推進する

まずは「トップダウン」で推進すること。多くの人は変化を嫌います。それまで行っていた業務を「明日から改革する!」と言われたら不安になります。仕事を奪われると思う人もいるかもしれません。
そこで、しっかりと意志を持った指導者が、すべての責任において方向性を変えることを宣言しましょう。その意志が社員に伝われば、運用への不安感は軽減されるはずです。これは、まずはアーリーアダプターが動き出し、続いてレイトマジョリティが動き出すマーケティングと同様の考え方です。

業務を妨げないよう、できるだけシンプルな仕組みにする

システム導入の一番の目的は、仕事を推進することです。
新しいシステムの導入段階では、社員ひとりひとりがルールを憶え、画面レイアウトに慣れ、それを上手く使いこなすための方法を探索し…といった工程が必要になります。しかし、社員はそのような工程を踏む間にも自分の仕事を進めたいはずです。ですから、システムはできるだけシンプルであることが大事です。またはできるだけ機能が現状のシステムと共通化していること。これらに注意を払ってください。

目標を共有し、ともに達成感を味わう

やっと進めた取り組みも、成果が出ずでは気持ちも晴れません。大変な思いをして変化に対応したのであれば、それなりに見える成果を共有したいものです。そこで、管理者は最初に目標設定をしておきましょう。ロードマップを掲げ、「いつまでにどうなる」というゴールを目指してともに前に進むのです。明確なゴールが見えていれば、不安や懸念は小さくなり、社員一丸となってペーパーレス化の実現に取り組めるのではないでしょうか。

ペーパーレス化の成功事例

芙蓉総合リース株式会社様

ペーパーレス化を進めたきっかけ

リース業界におけるパイオニア的存在である、芙蓉総合リース株式会社様。「前例のない場所へ」というコーポレートスローガンの元国内では初の航空機ファイナンスへの参加のほか、医療・福祉業界と連携した介護施設の建物リースやリースを活用した不動産ファイナンスなど、幅広い事業を展開しています。

そんな芙蓉総合リース株式会社では、紙書類を利用する業務フローの多さが課題になっていました。そこで、社内の紙書類を電子化しペーパーレス化を進めるために「パソコン決済Cloud」の導入に踏み切ったのでした。

ペーパーレス化でもたらされた成果

芙蓉総合リース株式会社様は、2018年10月より本社および国内拠点を含む全社にて「パソコン決済 Cloud」を導入しました。これにより、紙書類ゆえに生じていた煩雑なフローが減り、会社全体として業務効率がアップしたとのこと。例えば、書類の申請を受けつける部署では、これまで承認の押印をした後に書類に穴を空けてファイリングする作業にかなりの手間と時間を要していました。しかし、電子決裁の導入とペーパーレス化によって紙書類のファイリング作業が不要に。
申請承認のスピードが早くなったのも大きな成果です。これまでは「2・3日の出張から戻ると机が承認待ちの書類で山積みになっている」といった事態もめずらしくはありませんでした。しかし、電子書類の導入により外出先でも承認作業が可能に。紙書類ゆえに生じる承認フローの滞りが解消されたとのこと。
このほか、紙書類を電子書類に切り替えたことで、紙の消費量・印刷や保管にかかるコストの削減にもつながっています。

ペーパーレス化の先にある目標

芙蓉総合リース株式会社様では現在、人事や総務など管理部門での申請業務をペーパーレス化しています。将来的には、すべての申請業務の完全ペーパーレス化が目標。例えば、営業部内で上司に申請する書類や、複数部署をまたいで申請する書類なども、ペーパーレス化していく予定です。こういった取り組みにより、紙書類による制約を取り払い、さらなる業務効率化・スピードアップを目指しています。


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