Shachihata Cloud DXコラム 電子承認とそのシステムとは?ワークフロー改善など導入メリット
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電子承認とそのシステムとは?ワークフロー改善など導入メリット

WRITER
木山 貴雄
シヤチハタ株式会社 システム開発部
大手PCメーカーのサポート業務や大手自動車メーカーでの社内SEを経験後、2005年シヤチハタに入社。シヤチハタフォントの開発・Web受注システムの開発を経て現在はソフトウェア開発部門に所属する。

電子承認は、パソコン上で使用する印鑑や署名に代わる存在です。承認作業にかかる工数の削減と効率アップが期待でき、ワークフロー改善に非常に役立つ存在として多くの企業で利用されています。本記事では、電子承認未導入の企業の方向けに、電子承認の有用性をご紹介します。

電子承認とは

電子承認とは紙に印鑑やサインをするのと同じように、電子化された文書に署名や捺印ができるシステムを指します。
2004年のe文書法制定以来、法律上で保存を定められている書類の多くが、電子文書として保存できるようになりました。それ以外にも電子帳簿保存法の改正により、税務関係の一部の書類までもが電子文書として保存可能となっています。
また、企業がコスト削減に邁進する姿勢は2004年当時から見られていましたが、法律改定によりペーパーレス化がますます促進されています。
重要書類の管理や社内回覧など、従来は紙を使用していた業務も今やパソコンの中で行われる時代です。

電子文書の利用可能範囲が拡大していることやペーパーレス化に伴い、オフィスでの認知度が高まってきているのが、電子承認の存在です。これまで電子文書を使用したくても、署名時にはプリントアウトが必要で、完全なペーパーレス化に踏み出せない企業も多くありました。

電子承認を取り入れることで、完全なペーパーレス化を実現でき、 環境に配慮しているという企業ブランディングや従業員へのコスト意識の植えつけなど、有益な効果ももたらします。

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電子承認に必要な「本人性の証明」と「非改ざん性の証明」

電子承認にはメリットも多く、すぐにでも電子承認を取り入れたいという方もいらっしゃるでしょう。その前に理解しておきたいのが、紙書類と電子文書の証明の仕方の違いです。紙書類の場合、印鑑や署名を用いて「本人が同意をしたこと」「書類が改ざんされていないこと」を証明します。電子文書においても、この「本人性」と「書類の非改ざん性」を証明する必要があります。

電子承認における本人性の証明

電子承認の場合、本人性は電子文書に押印される電子印鑑や電子署名で証明されます。電子印鑑には、実際の印鑑の印影を画像化したものなどもありますが、こういった電子印鑑は容易に複製されてしまうので、本人証明に十分とはいえません。押印者や押印日時などの識別データが付与された電子印鑑を使用するようにしましょう。
また、電子印鑑より高いセキュリティを保てるのが電子署名です。電子署名では、電子認証局から発行される「電子証明書」によってその署名をしたのが本人であることを証明できます。電子証明書はいわば電子の「印鑑証明」にあたるので、その信頼性の高さをご理解いただけると思います。
この他にも、メール認証という方法もあります。書類の承認を依頼するときに、依頼元は依頼先にメールで承認用のURLを送付します。このURLは一般的に長く複雑であったり、有効期限が設定されていたりと、第三者がランダムでURLを作成して偶然アクセスしてしまわないような工夫がされています。承認用のURLにアクセスできるのは、本人のみであるという前提のもと本人性の証明とします。しかし、承認用のURLを第三者が絶対に手に入れることができない、とは言い切れないので、なりすましの危険性はあるといえるでしょう。

電子承認における書類の非改ざん性の証明

実際の印鑑では、その時々で押し加減やインクの色の違いがあり、まったく同じ印影を再現するというのは難しいでしょう。それを生かして書類に割印などをしておくことで、書類の非改ざん性を証明しています。電子文書ではそれに代わってタイムスタンプで書類の非改ざん性を証明します。タイムスタンプは、時刻認証業務認定事業者(Time Stamping Authority)に認定された事業者が提供するサービスを使用して作成されます。文書の所有者が日時を申請することで、事業者はその内容がその日時以降変更されていないことを証明できます。もし書類が改ざんされた場合は、その申請日時と書類の作成日時が一致しなくなるため、改ざんが分かるようになっています。

電子承認には専用のシステムの使用がおすすめ    

電子承認を行うためには、しっかりとした仕組みが必要なことがお分かりいただけたと思います。これらの仕組みを自社で開発するのは、莫大な時間とコストが必要になり、あまり得策とはいえません。電子承認のニーズは年々高まっており、それに対応するために電子承認専用のシステムを提供する会社も増えています。こういったシステムを使用することで、証明の仕組みなどもあらかじめ用意された状態で、スムーズに電子承認を開始できるようになります。

ワークフロー(申請・承認フロー)とは?

電子承認のシステムが、具体的に何を電子化できるかというと、ワークフローになります。ワークフローとは、業務における一連の流れのことを指します。申請→承認→決裁という流れになるのが一般的なので、申請・承認フローと言い換えると分かりやすいでしょう。具体例としては、取引先に提出する見積書を従業員が申請し、上司が承認すること、などが挙げられます。企業の利益に直結する内容であったり、機密事項に触れたりなど、企業として重要な判断になるため、責任のある者が確認した証拠として、これまで押印をしてきました。これまでのワークフローには、申請する側と承認する側の両方に課題がありました。

申請者側の課題

署名や捺印の必要な申請を紙書類で用意すると、書類を印刷して手書きで記入し、郵送か手渡しで承認者に提出するなど、多くの時間を要します。
電子文書を取り入れている企業でも、電子承認システムを導入していないと、捺印が必要な重要書類はプリントアウトで対応しなくてはならず、結局は紙書類と変わらない工数がかかってしまいます。プリントアウトや郵送、スキャニングなど、内容とは関係のない工程に時間を取られ、従業員にとっては手間でしかありません。

承認者側の課題

一方、承認者側にも課題があります。紙書類で提出された申請を承認するためには、その現物がある場所まで行って押印をしなくてはなりません。見積書など対外的な書類は特に、早急に承認を受けたい場合が多いです。承認者は外回りや出張帰りだったとしても、急ぎの承認が必要な場合は、押印をするためだけに、オフィスに戻らなければいけないかもしれません。
電子承認システムでは、この申請・承認フローを電子化することで、従来のワークフローの課題を解決することができます。

電子承認導入のメリット

紙書類から電子文書での承認に変わることで、前段で挙げた課題はどのように改善されるのでしょうか。 また、他にどのようなメリットがあるのでしょうか。

申請から承認までの時間が短縮できる

電子承認を取り入れることで、書類の印刷・押印待ち・郵送などの工程を省くことができます。
さらに電子承認のシステムであれば、いま誰の承認待ちなのか、承認の進捗状況も確認できます。承認がいつごろ完了しそうか予想ができるようになるので、それに合わせて後続の作業を用意しておくこともでき、これまでよりもスピーディーに業務を進行させることができるようになります。 また、作業の流れが可視化されることで、無駄な工程なども発見しやすくなるため、業務のさらなる改善もしやすくなります。

承認場所の制約がなくなる

電子承認はインターネットに接続できれば、基本的にどこでも承認を行うことができます。システムによってはスマホアプリも提供されているため、出先の移動中などちょっとした隙間時間に承認を完了させることができます。申請者・承認者双方の改善によって、例えば申請者が営業回りで商談の機会を得た際に「一度書類を持ち帰り、上司の承認を得てから再び出向く」といったやりとりがなくなることが考えられます。すぐに具体的な見積りを出して商談を進められるようになり、契約の機会を逃すことなく売上向上に貢献できるようになるかもしれません。

物理的スペースの確保

紙の書類の保存には、多くのスペースが必要です。大量の書類を扱う企業であれば、その規模の大きさは並大抵ではないでしょう。また、保存期限の切れた書類を処分する際も溶解コストがかかったり、シュレッダーしたりする時間がかかります。
電子承認を取り入れれば、書類は電子文書として保存するため物理的スペースや処分のコストも不要です。

承認フローで生じるコストの削減

紙書類での承認の場合、金銭的コストが生じてしまいます。
稟議に必要な紙代や印刷のトナー代、これらは大きな金額ではないものの、積み重なれば無視できない金額になります。エコ化が叫ばれる今の時代に、紙に費用をかけるのも前時代的な印象を与え、企業イメージや従業員のロイヤリティにも影響を与える可能性があるでしょう。
電子承認では、これらの費用が削減できるため、その分を従業員に還元する、その他の設備投資に回す、などが検討できるようになります。
費用削減からの労働環境整備で、従業員の自社への見方にも変化が表れるでしょう。

安全に書類を送付できる

場合によっては、完成した書類を郵送しなくてはならないシーンも少なくありません。国内であれば簡易書留か配達記録郵便で済みますが、海外であればさらに郵送費がかかり、また、到着にも時間がかかってしまいます。
電子承認を用いれば、これらすべてにかかっていた経費を無くすことができ、「書類が無事に到着するか」といった不安もなく相手の元へ届けられます。

内部統制が強化できる

内部統制とは、企業が経営目標を達成するために、全従業員が守るべきルールや仕組みを指します。この基準は金融庁の「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準」において定義されています。その基準の中に、業務の効率化は図れているか、財務関連情報に信頼性はあるか、というものがあります。
電子承認のシステムを導入することで、業務の効率化を行うことができます。また、電子署名やタイムスタンプなどで書類の信頼性を高めることができるので、内部統制の強化に繋がります。

電子承認導入の課題

企業にとってプラスの多い電子承認の導入ですが、障壁となる部分もあります。
マイナス面も見据えることで、電子承認が自社にとって本当に必要か、メリットを生み出すのかを見極められるのではないでしょうか。

すべてを電子承認化することは難しい

取引先によっては、電子承認や電子文書を使い慣れておらず、契約に使用することに消極的な場合も考えられます。地域に根付いた地元経営型の企業などは、その傾向にあるようです。
「紙の方が安心できる」という考えを相手企業が持っているのであれば、電子承認を強要することはできません。
比較的最近設立された企業でも、電子承認導入が進んでいない場合が珍しくないようです。
電子承認は100%どの企業でも受け入れられるとは限らないため、導入して最初のうちは紙と並行しての運用がトラブル回避に役立ちます。
契約締結などの書類が必要になるシーンでは電子文書の使用の可否について、あらかじめ取引先と確認するとよいでしょう。

導入コストが伴う

電子承認の導入には、それ相応のコストが伴います。電子文書、電子印鑑ソフト、電子印鑑、電子ペン、タブレットなど、必要なものは企業スタイルによって様々ですが、導入する規模によっては決して安くないでしょう。
ただし導入によってペーパーレス化や承認フローの短縮が実現するため、長い目で見れば導入費用以上の効果が期待できます。
自社の現状や、承認制度における従業員や費用の負担などを考慮し、導入の可否を検討してください。

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電子承認システムの導入でコスト削減へ

電子承認はワークフローの改善や従業員の負担削減など、多くの効果を生み出します。初期費用がかかるため導入に躊躇する企業も多いかもしれませんが、ペーパーレス化やリモートワークの推進によって、大企業を中心に多くの企業で電子承認が導入されています。

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