コロナ禍を経て世の中全体でデジタル化が加速した動きを受け、企業や自治体でもDX(デジタルトランスフォーメーション)がより強く求められています。マイナンバーカードが普及しつつある状況ですが、自治体においてはまだDXは発展途上です。
本記事では、自治体DXとは何か、そしてどのような取り組みが求められるのか、先進事例のご紹介を交えながらご説明いたします。
はじめに、自治体DXの意味や目的をお伝えいたします。DXとはデジタルトランスフォーメーションの略で、企業などがデジタル技術やデータを活用することで商品・サービスやビジネスモデルを変革し、競争優位性を確立することです。DXとデジタル化は同義に捉えられがちですが、デジタル化はITツールなどを用いた業務プロセスの効率改善を目的としており、DXの目指すところは事業やビジネスモデルそのものを抜本的に改革して生き残ること。DXは単なるデジタル化ではありません。
自治体DXはどのような役割と捉えられるでしょうか。自治体DXとは、自治体がデジタル技術やデータを活用することで、行政サービスの改善を図り、住民の生活を便利にし、ひいては国の発展・国際競争力の強化を目指す取り組みをいいます。
▼DX(デジタルトランスフォーメーション)とは何かについて詳しく知りたい方はこちら
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?意味と国内の現状を分かりやすく解説
本記事では「DX(デジタルトランスフォーメーション)」の意味を分かりやすく解説しています。国内のDX推進における現状と課題について、背景にある「2025年の崖」問題や、先進事例を交えてお伝えします。今から着手できるDX推進の取り組みも参考にしてください。
本記事を読んでいる皆様の中でも、引っ越しや結婚・出産に伴う手続き、マイナンバーカードの作成などで役所に行った際、「もっと効率的にできないものか」と思った方も多いのではないでしょうか。自治体DXが進めば、あらゆる行政手続きの簡略化・スピードアップが図れるようになります。
それだけでなく、煩雑な業務プロセスがなくなれば、自治体としては本来注力すべきサービス内容・制度の検討に時間を割けるようになり、結果的に住民の生活の質が向上していくことが期待されます。
総務省が策定した「自治体DX推進計画」によると、自治体において求められるDXは次の通りです。
自治体DXの役割
・自らが担う行政サービスについて、デジタル技術やデータを活用して、住民の利便性を向上させる ・デジタル技術や AI 等の活用により業務効率化を図り、人的資源を行政サービスの更なる向上に繋げていく ・統計データや業務データなど、客観的根拠に基づく政策立案を行う |
自治体DXは適切な政策立案に寄与するため、国民・住民一人ひとりに合ったサービスを選択できる社会に欠かせない取り組みといえます。
自治体DXで取り組むべき重点課題は、次の4つに大別されます。
引っ越しや結婚・出産といった住民のライフイベントに際する手続きについては例に挙げましたが、これらがワンストップで行えるように、UI/UX改善・システム改修が急がれており、基本的にはマイナンバーカードを用いたオンライン手続きができるよう、国としても支援を実施しています。
2020年4月時点では、手続きをオンラインで行うシステムが整備されていない団体が192団体となっており、行政手続きのオンライン化はまだまだ成果が上がり切っていないのが現状です。マイナポータルの「ぴったりサービス」を軸に電子申請ができるよう、総務省・内閣府としても取り組みを進めており、ガイドラインの整備などが行われています。
行政手続きをオンライン化する前提条件としてクリアしなければならないのが、マイナンバーカードの普及です。マイナンバーカードはオンラインで確実に本人確認ができ、デジタル社会の基盤となります。
総務省ではマイナンバーカードの交付申請者を対象にポイントを付与したり、マイナンバーカード交付に必要となる自治体の経費を補助したりすることで普及促進を図っています。
AI(Artificial Intelligence)とは人工知能、RPA(Robotic Process Automation)とは定型化された業務をロボットに担わせる技術です。2040 年頃には本格的な人口減少社会となることを見据え、貴重な人材は本来注力すべき業務に振り向け、代替可能な業務はAI・RPAを活用するよう、方針と実行計画が示されています。
2020 年2月末時点の調査 では、AI の導入割合については都道府県が68%、指定都市が50%、その他の市区町村が8%であり、RPA については都道府県が49%、指定都市が 45%、その他市区町村が9%です。人口規模の大きな団体から導入が進んでいる状況のため、先進事例を横展開する動きも求められます。
参考:https://www.soumu.go.jp/main_content/000716134.pdf
テレワークの推進は、自治体の手続きをオンライン化する過程でも必要ですが、自治体で働く従業員のワークライフバランスを整え、働き方改革を実現するためにも重要です。2019年度末時点の総務省の調査では、都道府県・政令市のテレワーク導入率は86.6%でしたが、市区町村ではわずか3.0%でした。業務見直しと同時進行で、テレワーク業務の拡大が進められています。
その他、そもそも自治体で使われている情報システムを標準化・共通化していくことや、セキュリティ対策の徹底も重点取組事項に定められています。
参考:https://www.soumu.go.jp/main_content/000726912.pdf
このように、自治体DXにおいては様々な取り組みが進められていますが、その前提条件としては、書面に押印をする場面や、対面でしかできない手続きをなくしていくことが求められます。役所まで足を運ばずともあらゆる手続きを行えるよう、業務プロセスやワークフローを見直しましょう。
ここで、自治体DXの先進事例を3つピックアップしてご紹介いたします。
東京都港区では、マイナポータルの「ぴったりサービス」及び東京都が構築した東京電子自治体共同申請システムで受け付ける電子申請手続を拡充し、積極的に行政手続のオンライン化を推進しています。区民等が自宅で必要手続を確認できるとともに、来庁時に複数の申請書を一括で作成できる窓口総合支援システムの導入に向け、構築を開始しました。
参考:https://www.soumu.go.jp/main_content/000759086.pdf
京都府では、元々紙の出勤簿が用いられていましたが、コロナ禍を機に職員のパソコンへのログイン・ログアウト情報を既存システムへ連携させて、出勤状況を一元的に管理するシステム改修を実施。所属長が所属職員の出退勤状況を正確に管理できるようになり、紙の出勤簿を廃止しました。これによりテレワーク対応ができるようになりました。
自治体ではありませんが、押印手続きの簡略化を行った先進事例として、名古屋エリア最大の地域総合経済団体・名古屋商工会議所の取り組みもご紹介いたします。名古屋商工会議所には自治体などが展開する補助金や助成金といった制度の申請窓口としての役割がありますが、あらゆる業務で紙への依存度が高く、コスト面も問題になっていました。生産性向上の必要性は増していたため、押印をデジタル化できるツール「Shachihata Cloud(シヤチハタクラウド)」を導入。自宅にいても書類への押印・決裁が可能になり、スマートフォンからでもオフィスのパソコンと変わらぬ使用感で押印・決裁でき、非常に便利だと社内からも好評を得ています。
最後に、自治体DXを推進するにあたっての注意点をご説明いたします。
自治体においては、住民のあらゆる個人情報を取り扱う業務が多く存在しています。そこで欠かせないのはセキュリティ対策です。重要データへのアクセス権限設定や持ち出しに制限をかけること、ウイルス対策ソフトのインストール、通信の暗号化などの物理的な対策はもちろんですが、パスワード管理を厳格化するといった人的なセキュリティリスクも考慮する必要があります。
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リモートワーク(テレワーク)におけるセキュリティのリスクと対策
近年、リモートワーク(テレワーク)を推進する企業が増えてきています。そのような状況においてリモートワークで最も心配されるのは情報漏洩などのセキュリティ観点といえるでしょう。この記事ではリモートワークの導入を検討している企業の方、また導入し始めたばかりの企業の方に向けて、まさに今確認しておきたい5つのセキュリティ対策のポイントをご紹介します。
電子化により業務効率をアップさせることができますが、不動産関係の書類など、一部の書類は紙の書面での取り交わしが必要なものがあります。電子化することが可能な書類かどうか、はじめに法務観点でチェックすることも忘れずに行いましょう。
その他、自治体DXの進め方をまとめた、総務省の「自治体DX推進手順書」も参考にすると良いでしょう。
参考:https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01gyosei07_02000116.html
自治体DXの推進においては、抜本的な改革を一気に進めることは難しいため、まずは業務量やプロセスを把握した上で、できることからスモールスタートで着手していくと良いでしょう。
名古屋商工会議所の先進事例でもご紹介しましたが、電子決裁・押印サービス「Shachihata Cloud」は、既存の押印業務をそのまま電子化できるツールです。使いやすく、導入を検討しやすい料金体系になっており、自治体DXはじめの一歩におすすめです。無料トライアルも用意されているため、これから電子化を進めたい自治体の方はぜひ一度お問い合わせください。