今や誰もが一度は耳にしたことがあるDX(デジタルトランスフォーメーション)。2020年に発生した新型コロナウイルス感染症の流行は、多くの企業によるDX推進を加速させました。ただし、DXを推進する上ではいくつか課題もあります。本記事では、DXが推進される背景やメリット、課題についてご説明した上、DX推進の手順についてご紹介します。
DX(デジタルトランスフォーメーション)は、直訳すると「デジタル変換」になります。
文字通り、人々の生活や企業の事業をデジタル化することで、よりよい方向に変化させることをDXと呼びます。
DX推進という意味合いでは2018年12月に経済産業省が発表した「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX推進ガイドライン)」で提示している定義を考えると分かりやすいでしょう。
企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること
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DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?意味と国内の現状を分かりやすく解説
本記事では「DX(デジタルトランスフォーメーション)」の意味を分かりやすく解説しています。国内のDX推進における現状と課題について、背景にある「2025年の崖」問題や、先進事例を交えてお伝えします。今から着手できるDX推進の取り組みも参考にしてください。
次にDXが推進される背景をご説明します。
「2025年の崖」は、経済産業省が2018年に発表した「DXレポート」が初出の言葉です。DX推進が進まないことで、世界での競争力が低下し、その結果2025年から年間で約12兆円もの経済損失が発生する可能性があることを「2025年の崖」と表現しています。
DX推進が進まない理由としては、既存のシステムの複雑化やブラックボックス化が挙げられます。
新型コロナウイルス感染症の影響で、リモートワークが一気に浸透しました。これまではリモートワークに積極的でなかった企業も、否が応でもリモートワークをせざるを得なくなり、印鑑の電子化など、DXを進める必要が出てきました。
日常生活でも、非対面や非接触のサービスが多く使われるようになり、生活の中のDXも大きく進む流れになっています。
「2025年の崖」のような経済的な要因から、DX推進のため国も法整備を進めています。法的な観点では、保管の場所とコストのかかる紙書類ではなく、電子文書での保存を認めるe-文書法や印紙の不要な電子契約書を認めるなど、企業としても電子化することでメリットのある制度を整えています。
また、ITツールを導入する事業者に対して補助金を出す「IT導入補助金」という事業もあり、積極的に企業のDX推進を後押ししています。
DX推進が必要なことは、前の章でご理解いただけたと思います。では実際にDXを推進することで、どのようなメリットが得られるのでしょうか。
DXが進むことで、生産性の向上や業務の効率化が期待できます。例えば、契約の締結を電子化すると、契約書の印刷や郵送の時間を削減することができ、業務の効率化に繋がります。削減された時間をより事業の利益になる検討に使うことができれば、生産性の向上も望めます。
BCP(事業継続計画)とは、緊急事態に遭遇しても企業の損害を最小限に抑えつつ、事業の継続または早期復旧を可能にするために、平時に立てておく計画を指します。地震などの自然災害が多い日本では、特にしっかりとBCPを立てておく必要があります。クラウドサービスの導入や業務の電子化をすることで、オフィス以外でも仕事ができるようになり、出社ができないような状況でも事業を継続することが可能になります。
新型コロナウイルス感染症など、突発的に平時とは違う働き方が求められる際に、DXを推進しておりいつもと変わらない働き方ができる企業と、DXを進めておらず慌ててDXの準備をする企業では、ビジネスチャンスを見つけられる確率が異なるでしょう。新型コロナウイルス感染症がなかったとしても、時代の流れとしてデジタル化が進んでいることは間違いありません。常に先回りして必要な準備をしておくことで、いざというときにチャンスを創出したり、チャンスを掴むことができたりします。
DX推進は働き方改革にも役立ちます。例えば、リモートワークができる環境が整えられていれば、育児や介護のため自宅を離れることが難しい従業員も辞めることなく働き続けることができます。離職率が下がることで、企業としての魅力も高まり、優秀な人材の採用にも寄与するでしょう。
メリットの多いDX推進ですが、進めるにあたっては課題も多くあります。推進を始める前に、あらかじめ課題を把握しておけば事前に準備もできるので、自社の場合はどうか考えながら読んでみてください。
まず一つ目に、そもそもDXを進められる人材が不足していることが挙げられます。日本は海外と比べ、システムの内製率が低いと言われています。なぜ内製ができないかというと、IT人材が国全体で不足しているからなのです。もちろん外注をすることにメリットもありますが、DX推進の観点からみると、自社システムへの理解が深い社内のIT人材が多い方が、DXは進めやすいといえます。
IT人材の不足に関連しますが、そもそもDXの推進の仕方が分からない、という場合もあります。ひとことでIT人材と言っても、そのスキルやできることは様々です。DX推進の方法が分かる人だけではなく、それを経営層に分かりやすく説明できる人も必要になるでしょう。DXは会社の多くの部署が関連することになることが多いため、それぞれ前提知識に差のある関係者全員がDXの目的を理解し、推進していくには多様な人材が必要になります。
DXは、ビジネスモデルや企業風土までを変革する取り組みです。そのため、事業の中のある一点の問題を解決する、というよりは、経営的な観点から目的を設定する必要があります。現場の意見を重視しすぎると、できるだけ旧来の方法を残そうとしてしまい、中途半端な改善に留まってしまうこともあります。大胆な変化も恐れず、長期的な利益を考えて高い視座から目的を定める必要があります。その分難しい取り組みになるため、現場からの反発などで頓挫してしまうこともあり得るため、課題の一つと考えられます。
実際にDXを推進していくための手順をご説明します。課題も多くありますが、DX推進の気運が高まっている今、DXを推進したいという強い意志を持って手順を丁寧にこなしていけば、実現も十分可能です。
DX推進の課題でもご説明しましたが、DXは経営視点であるべき姿を考えることが大切です。
経営層と、自社の理想の状態について共通のビジョンを持つところからDX推進は始まります。
次に予算の確保を行います。
経営層と共通のビジョンを持っておくことで、ビジョンの実現に必要な取り組みについても理解を得られやすくなり、予算の確保が容易になります。
確保できた予算を基に、DX推進に必要な体制を整えます。大型のプロジェクトになるため、他の業務との兼任ではなく、専任のメンバーを揃えることが重要です。また、会社全体を巻き込むプロジェクトになるため、システム的な素養がある人材以外にも、コミュニケーションスキルに長けた人材を各部署との連携役にアサインするなど、推進が円滑に進むための人材を集めることも忘れてはいけないポイントです。
体制が整ったら、現状の分析を進めます。分析する現状の範囲は特定の箇所に絞るのではなく、最初はできるだけ広い範囲を分析することが望ましいでしょう。全体を把握することで、改善検討をする際にDXの優先度を正しくつけたり、似たような課題を一緒に解決できたりします。
DXを進める課題が特定できたら、それを解決できるシステムやツールの選定に着手します。システムやツールは多くの企業が提供をしています。知名度や他社が使っているから、ではなく、あくまで特定できた課題に最適な打ち手となるものはどれなのか、という観点で選定を進めましょう。
本記事では、DX推進の背景や課題、また実際の進め方についてご説明してきました。
実際の進め方については、読んでいるだけだと簡単に思えてしまうかもしれませんが、実際にやってみるとかなり大変です。特に現状を分析し、改善案を立案するという手順は時間もかかる上、難易度も高いです。シヤチハタの提供する電子印鑑・電子署名サービス「Shachihata Cloud」では、BPS(ビジネスプロセスそのまんま)を提唱しており、現状の業務フローを大きく変えることなく電子化を実現できます。オンライン相談や資料請求もできるので、少しでもお悩みのことがあればお気軽にご相談ください。
また、ツールは提供している各社によって少しずつ機能に差があります。そのため、比較検討をすることがとても重要です。「Shachihata Cloud」では無料トライアルもあるので、実際に操作して導入後のイメージを掴むこともできます。
十分な検討をして、納得感を持ってDX推進を進めていきましょう。