Shachihata Cloud DXコラム 多要素認証とは?クラウド時代に適したセキュリティ技術を解説
DX COLUMN

多要素認証とは?クラウド時代に適したセキュリティ技術を解説

DX
IT
セキュリティ

クラウドの普及は、ビジネスの柔軟性と効率性を飛躍的に高めましたが、同時にサイバーセキュリティの懸念も増大しています。従来のパスワード保護だけでは不十分という現実が、セキュリティの新たな標準、「多要素認証」の必要性を高めています。多要素認証は、複数の認証要素を組み合わせることで、不正アクセスに対する保護を一層強化する仕組みです。

本記事では多要素認証の概要と重要性、そして多要素認証の活用例について解説します。

多要素認証(MFA)とは

まず、多要素認証の基本的な概念と、間違えやすい多段階認証との違い、そして多要素認証の認証要素について詳しく解説します。

多要素認証の概念

多要素認証( MFA:Multi Factor Authentication )とは、二つ以上の独立した認証要素を組み合わせることで、ユーザーの身元を確認するセキュリティ強化の手法です。多要素認証は、単一の認証方法(例:パスワードのみ)と比較してセキュリティを強化するために用いられます。例えば、ショッピングサイトや SNSなどのWebサービス等にログインする際、本人確認のためにパスワードとワンタイムパスワードやSMS認証など、 2 つ以上の認証要素を用いることで、従来のパスワード認証よりも本人確認の確実性を高めることができます。

多要素認証の認証要素とは

 多要素認証は、本人確認を確実に行うために2つ以上の認証要素を用いる方式ですが、認証要素にはどのようなものがあるのでしょうか。多要素認証に必要な認証要素は下記の通りです。

・知識情報

知識情報とは、ユーザー本人のみが知っている情報を指します。パスワードやPIN、秘密の質問など、ユーザー本人の知識に基づいて認証を行います。従来のIDとパスワードの認証は、この知識情報に該当します。

・所持情報

所持情報は、ユーザーが物理的に「持っているもの」に基づいた情報です。スマートフォン、セキュリティトークン、IDカードなど、ユーザー本人が所持する物理的なデバイス等を使用して認証を行います。例えば、スマートフォンに送信される一時的なコード(SMSで送られる認証コードなど)や、専用のアプリ(Google Authenticatorなど)が生成する一時コードを認証に使用します。

・生体情報

 生体情報は、ユーザーの身体的な特徴に基づいた情報です。指紋、静脈、顔、虹彩、声紋などを使用して認証を行います。生体認証は、偽造が非常に困難であるため、高いレベルのセキュリティを提供します。ただし、ユーザーのプライバシーに関する懸念や、技術的な問題(例えば、スキャナーが指紋を正確に読み取れないなど)があるため、他の認証要素と組み合わせてバランスを取る必要があります。

これらの要素を組み合わせることで、もしひとつの認証を突破されても、他の認証要素がアカウントを保護する追加の障壁として機能します。これにより、不正アクセスのリスクを大幅に減少させることができます。

多要素認証と多段階認証の違い

多要素認証と混同しやすいものに「多段階認証」というものがあります。呼び名が似ていますが、これらは全く別の認証方式です。いずれもセキュリティ強化のために2回以上の認証を行うという点では同じです。しかし、多要素認証が、「知識」「所持」「生体」の認証要素のうち、異なる2要素を使用することに対して、多段階認証では、異なる2要素を使用しなくても成り立つ点が大きな違いです。例えば、異なるパスワードを2回入力させたり、パスワード+秘密の質問など、知識情報のみの組み合わせでも成り立ちます。そのため、多段階認証は、多要素認証と比較してセキュリティ強度は弱いと言えます。

多要素認証のメリットと重要性

多要素認証には具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは多要素認証のメリットと重要性について見ていきます。

多要素認証のメリット

 多要素認証のメリットは下記の通りです。

セキュリティ強化

多要素認証は、単一の認証要素(例:パスワード)のみに依存するよりも、セキュリティ強度は大きく高まります。もしユーザーのパスワードが漏洩したとしても、攻撃者はユーザーのスマートフォンを物理的に所持していない、もしくは指紋や虹彩などの生体情報を偽造できない限り、アクセスすることができません。これにより、不正侵入やデータ漏洩などのセキュリティリスクを大きく低減できます。

業界規制やコンプライアンス遵守

特定の産業やデータの取り扱いに関して、多要素認証(MFA)の使用が推奨されたり、必要とされる場合があります。例えば、金融庁のガイドラインや、PCI DSS(Payment Card Industry Data Security Standard:クレジットカードの国際セキュリティ基準)などでは、多要素認証の導入が要求(※1)されています。多要素認証を導入することでこうした規制や基準に準拠することができます。

※1:参考サイト
昨今の情勢を踏まえた金融機関におけるサイバーセキュリティ対策の強化について
Securing the Future of Payments: PCI SSC Publishes PCI Data Security Standard v4.0

多要素認証の重要性

クラウドやSaaSの普及により、社内ネットワークに対して様々な場所・方法でアクセスが行われるようになりました。従来の「ファイアウォールの内側は安全」という考え方は、クラウドやリモートアクセスの普及により、もはや時代遅れとなっています。このような環境下では、「全てのアクセスを信用せず認証する」ゼロトラストセキュリティモデルの採用が不可欠となっており、その中心には確実な本人確認のプロセスが必要です。多要素認証はそのプロセスの中核を担う技術であり、クラウド時代において信頼性の高いセキュリティ環境を維持する上で重要な役割を担っています。

多要素認証の活用事例

最後に、多要素認証がどのような場面で活用されているか、多要素認証の代表的な活用事例について解説します。

オンラインバンキング

多くの金融機関では、顧客の金融資産とデータを守るために多要素認証を導入しています。例えば、オンラインでの取引時に、パスワードと一緒に携帯電話に送信される一時的なPINコードの入力を求めることで、不正アクセスや詐欺のリスクを低減しています。

クラウドサービス・SaaS

多くのクラウドサービスやSaaSベンダは、サイバー攻撃などによる顧客情報流出などのリスクを軽減するために多要素認証を活用しています。ユーザーがログインする際、パスワードに加えてSMS経由のコードなど、第二の認証要素を要求することで、アカウントのセキュリティを強化しています。

リモートワーク

新型コロナウイルスによるパンデミック以降、リモートワークが一般的になりましたが、これによってセキュリティリスクも増加しました。多要素認証は、リモートワーカーが社内ネットワークに安全に接続するための方法として導入されており、一般的に、従来のパスワードに加え、スマートフォンアプリなどを経由した多要素認証が採用されています。

多要素認証を備えた安心・安全なShachihata Cloud

以上、説明してきたように、クラウド時代のセキュリティ強化のために多要素認証は必要不可欠な技術と言えます。

Shachihata Cloudでは、セキュリティをより強化するために二要素認証を提供しています。ログインの際に、通常のID/パスワード認証に加えて、QRコード認証とメール認証のいずれかを追加することができます。二要素認証は1カ月1ユーザー当たり税込110円 で利用できます。

詳しい資料はこちら

 クラウドサービスやSaaSを選定する際は、セキュリティ面、利便性、予算などを総合的に考えて検討することが必要です。管理者とユーザーが安全・安心かつ便利に利用できるサービスを利用して、業務効率の改善につなげてみてください。

WRITER
石井 慶
シヤチハタ株式会社 デジタル認証事業部 部長
1994年入社。入社5年後電子印鑑を共同開発したアスキー・ネットワーク・テクノロジー社に出向し何も知らなかったITの基礎を学ぶ。現部署に異動後、業務改革を実行する企業に寄り添う毎日を送っている。
お問い合わせ 資料請求