業務の生産性向上を目的として、あらゆる書類を電子化する動きが加速しています。これは民間企業に限らず、行政手続きにおいても同様です。2020年12月に閣議決定された「デジタル・ガバメント実行計画」では、「自治体デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画」を策定。押印の電子化や、行政手続きのオンライン化、マイナンバーカードの普及促進策など、具体的に取り組むべき内容を具体化しています。
このような背景もあり、自治体では公印の電子化が急務とされています。本記事では自治体における電子公印の作成方法や規定、その他セキュリティに関する注意点などをご説明いたします。
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はじめに、自治体で使用される公印と職印の役割や違いについて解説いたします。
職印とは、広義に捉えると、公的機関のみならず一般企業も含め、役職名・職位を刻んだ印鑑を指します。この場合役職印とも呼ばれます。
印鑑業界用語として狭義の「職印」は、弁護士や司法書士、行政書士、税理士などの士業に関わる方が、名簿に登録するための印鑑を示します。
一方、公印とは、公文書を作成する際など、公務のために使用する印鑑を指し、国や地方公共団体、国立大学などが使用します。具体的には運転免許証や健康保険証、住民基本台帳カード、マイナンバーカード、住民票といった書類を発行する際、その書類が正式に所定の機関によって発行された証明として押印されます。
役所においては部長や課長ではなく「市長」などの役職名を持つことになるため、職印が公印とほぼ同義に捉えられており、職印と公印に厳密な呼び分けルールはないと考えられます。
電子公印とは、公印の印影を電子データとして活用できるようにした印鑑を示します。前述の通り自治体においても書類の電子化が進んでいるため、近年さまざまな自治体で電子公印が使われるようになっています。
利便性の高い電子公印ですが、使用する際の規定はあるのでしょうか。民事訴訟法228条4項においては、「私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する。」と示されています。つまり、押印が確実に押印者本人の意思に基づいて行われており(本人性)、改ざんされていない(原本性)、ことが証明できる状態とすることが求められます。
公印の印影をただ画像データに置き換えたものでは法的効力に乏しいため、自治体業務の電子化においては、認証局と呼ばれる第三者機関による電子証明書を付けるなど、セキュリティに配慮した電子公印発行サービスを活用すると良いでしょう。
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次に、地方自治体において公文書の電子化がどの程度進んでいるのかをご紹介いたします。
地方公共団体における行政手続のオンライン利用の状況について、総務省では「地方公共団体におけるオンライン利用促進指針」(2020年3月4日最終改正)に基づき、毎年オンライン利用率を調査しています。地方公共団体が優先的に推進するべき手続きは58種類と言われていますが、2018年度に45.4%だったオンライン利用率は、2020年度には52.8%と増加傾向にあります。これに伴い、電子公印の利用率も伸びていることが推察されます。
参考:https://www.soumu.go.jp/main_content/000804027.pdf
さまざまな自治体で電子公印が普及しつつありますが、ここでは2つの事例をご紹介いたします。
茨城県では、「県庁業務のデジタル化に向けた挑戦」と題し、業務別にどのような現状が課題で、今後の取り組みとして取っていくべき対策を具体的に紹介しています。県発出文書のデジタル化においては、実物の公印に代わって電子署名の導入を検討していくことや、県庁と民間企業間との契約書においては電子契約へ移行すること、県内部事務手続きは電子決裁に移行させ紙文書を廃止することなどが挙げられています。
参考:https://www.pref.ibaraki.jp/bugai/koho/hodo/press/19press/documents/201002digital.pdf
福岡市では、他の自治体に先駆けて電子化に取り組んでおり、行政手続きの負担軽減を目指して押印の義務付けを段階的に廃止していくと発表しています。市役所単独で見直しが可能であった約3,800種類もの申請書をすべてハンコレス化して話題になりました。残りの約900種類の書類は国や県での押印が義務付けられているため、電子公印の使用を推進しています。
参考:https://www.city.fukuoka.lg.jp/data/open/cnt/3/77422/1/hankoresukanryou.pdf
電子公印に移行することにより、次のようなメリットがもたらされます。
紙への押印となる場合、まずはその書類をプリントアウトして、実物の印鑑を用意し、状況によっては承認者となる上司の印鑑も併せて押印する必要がありました。承認者が不在の場合は、待ち時間が発生することも珍しくありません。書類の中身に不備があって差し戻しとなり、初めからやり直しになることもしばしばです。
しかし電子公印に移行すれば、これらのやり取りはすべてオンライン上で完結させることができます。時間や場所を選ばず押印でき、業務が円滑に進みます。業務効率が大きく向上するのが大きなメリットです。
また、電子公印の利活用が進めば書類をプリントアウトする手間がなくなるため、ペーパーレス化も促進することができます。SDGs目標を掲げて環境負荷軽減への取組みを実施する企業が増えていますが、自治体においてもペーパーレスからエコに取り組めます。印刷代・インク代だけでなく、紙を保管する場所代・保管コストもかからないのは嬉しいメリットの一つです。
さらに、紙文書として契約書などの重要書類を保管する場合だと、紛失や盗難、改ざんが仮に行われたとしても、気付きにくいという状況がありましたが、電子化によってその心配もなくなります。利用する電子公印サービスにもよりますが、基本的には有料サービスであれば改ざん防止の機能が既に備わっており、書類へのアクセス履歴や、文書の改訂履歴もデータとして残ることになります。「紙のほうが何となく安心」と思われている方もまだいるかもしれませんが、電子化されたほうがむしろセキュリティが高まると考えられます。
最後に、自治体で電子公印を利用する場合の注意点を解説いたします。
最も重要なのは、セキュリティ対策が優れた電子公印のサービスを選択することです。公印の印影をただ画像データ化するだけならば個人でも簡単に作成できますが、他の人でも同様に作成・複製できてしまうため、悪用されるリスクが高いです。自治体として利用するのであれば、改ざん防止機能、なりすまし防止機能、本人性担保の機能などが備わった、クラウド型の有料サービスが望ましいでしょう。
また、電子化対応を進める過程で、押印そのものをなくすケースも発生しますが、県や国が押印必須に定めている書類については、正しい電子公印が適切に印字されるよう十分注意しましょう。
兵庫県尼崎市の市立小学校では、卒業証書に別の小学校の公印を誤って印字していたことが発覚。卒業生の指摘で気づきましたが、デジタル化に移行させた際に使用していたサンプルの印鑑データがそのまま使われてしまい、2018年〜2021年度の卒業生553名の卒業証書が誤っていたことがわかりました。
参考:https://mainichi.jp/articles/20220329/k00/00m/040/150000c
岡山県総社市では、戸籍証明書をコンビニエンスストアで取得できるようにした際、電子公印が必要であるにもかかわらず、73件の戸籍証明書に印字されなかったというミスが発生しました。
参考:https://www.sanyonews.jp/article/1197473
電子公印に移行する際には、移行対象の書類を明確化させ、十分確認することが大切です。その他、公文書の電子化推進にあたっては、内閣府が2020年12月に策定した「地方公共団体における押印見直しマニュアル」なども参考にすると良いでしょう。
茨城県や福岡市の事例のように、電子公印は上手く活用すれば職場の生産性を大きく向上させることができます。役所の窓口対応はあらゆる書類の手続きに追われ、住民の待ち時間が発生し、互いにストレスを抱えることも多いことでしょう。電子公印の導入にあたっては、自治体での利用実績もあるクラウド型電子印鑑・電子決裁サービス「Shachihata Cloud(シヤチハタクラウド)」のご利用をおすすめいたします。
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