本記事では、電子化を検討している方に向けて、電子化のメリットや電子化に役立つサービスなどをご説明いたします。働き方の多様化により、いつでもどこでも確認できる電子書類のニーズは高まっています。また、新型コロナウイルス感染症の影響で、電子化を進めている企業も多いのではないでしょうか。
電子化については、パソコンの普及をきっかけに徐々に進められてきました。1998年7月施行の「電子帳簿保存法」や2005年4月施行の「e-文書法」などがその代表といえるでしょう。
国は法律の整備などを通して電子化を推進してきましたが、従来の働き方を変えることに後ろ向きな企業も多く、電子化はそこまで進みませんでした。そんな状況の中、新型コロナウイルス感染症によってリモートワークをせざるを得ない事態に陥りました。リモートワークによって、いつでもどこでも見られる電子データのニーズが増し、電子化は急速に進んできています。
「新しい生活様式」に合わせて働き方もコロナ前とは異なったものになることは明らかであり、書類の電子化は今後重要になっていくと考えられます。
e-文書法は2005年に施行された法律で、これまで紙書類での保存が義務付けられていた文書や書類について、電子書類での保存を認めるために制定されました。適用される対象は保存の義務があるすべての書類となっています。
電子化にあたっては経済産業省によって「見読性」「完全性」「機密性」「検索性」の4つの技術要件が定められています。
見読性:電子化されたデータが、パソコンやスマホのディスプレイで表示した際きちんと読めること
完全性:電子データが保存義務期間中に消失や改ざんされない措置が取られていること。また変更の際はその内容が分かるようになっていること
機密性:パスワードの設定やアクセスログの管理などを行い、許可されていない第三者がアクセスできない措置を取ること
検索性:文書名のネーミングやフォルダの配置について、ルールを設けて運用するなど、必要なデータをすぐ引き出せるようにすること
なお、この4つの技術要件のすべてを満たす必要があるわけではなく、「見読性」以外は書類の種類によって要否が異なります。e-文書法の対象となる文書の具体的な文書名と必要な技術要件は、内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室が公開している「e-文書法によって電磁的記録による保存が可能となった規定」から確認ができます。
参考:https://www.mhlw.go.jp/topics/2005/03/tp0328-1a.html
電子帳簿保存法は正式名称を「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法などの特例に関する法律」という国税庁の管轄の法律です。会計帳簿や国税関係書類の電子化の容認と電子化にあたっての規定が定められています。
電子化をさらに推進していくために2022年1月に改正が行われました。変更のポイントとしては電子保存が義務化されるということです。改正前までは電子データで受け取った国税関係の書類について、出力して紙で保存することが認められていましたが、今後は電子データとして保存することが求められます。ただし、これまで周知がされていなかったこともあり、改正の2022年1月1日から2023年12月31日までの2年間は紙での保存も認められています。
電子データでの保存が義務化されるため、これまで電子化を進めてこなかった企業でも今後は電子化の準備をしなくてはいけません。電子化には以下のようにたくさんのメリットがあるので、これを機に電子帳簿保存法の対象外になっている他の書類の電子化も検討してみると良いでしょう。
紙書類には、様々なコストがかかっています。
書類の作成では紙代・印刷代・プリンターの維持費、書類が締結された後ではその保管のための場所代がかかります。電子化すると、これらのコストはすべて不要になるため、大幅なコスト削減が見込めます。
電子データとして保存することで、検索性が向上するというメリットもあります。電子データで保存しておくことで、文書名が思い出せなくても、関連するワードでの検索が可能になります。また、紙書類と違ってすぐに書類の中身を確認できるので、取り寄せてみたが目当ての書類でなかったということも避けられます。
紙書類では膨大な量を保管するので、どこかにあるはずだが見つからない、ということが起こりやすいでしょう。また、落丁などの恐れがあったり、経年劣化で文字が読み取りにくくなったりする可能性もあります。電子データではそのようなリスクを軽減することができます。
火災や豪雨などで保管場所が被害を受けた場合、そこにある紙書類は中身の確認が困難になる可能性があります。電子データでもハードディスクに保存している場合は、その媒体が破損すると中身が確認できなくなってしまいます。しかし、クラウド上に保存するサービスであれば、インターネット環境さえあれば書類をすぐに確認することができます。
電子化はあくまで手段であり、電子化によって何を達成したいのかという目的は別にあります。セキュリティを強化したいのか、働き方を多様化したいのか、など目的を確認することで、従業員も電子化を前向きにとらえてくれるようになります。
目的に沿って、電子化したい書類の優先度を決めます。もちろんすべての書類を電子化したい、ということもあるかもしれませんが、一気に電子化すると業務フローの変更などの負荷が大きくなります。まずは優先的に電子化したい書類を取り扱っている部署やチームなど、小さな単位で電子化を始めることで、課題の洗い出しなども行えて、その後の導入をスムーズに進めることができるようになります。
電子化にはいくつか方法があります。具体的には自社で電子化の仕組みを整える、専門の企業にアウトソーシングする、専用のシステムを導入する、などの方法です。電子化の範囲やかかる費用など、複数の観点から比較検討して自社に合った方法を決めましょう。
電子化によって捺印の方法など、業務フローが変更になる場合があります。電子化の方法によって変更されるフローは様々なので、決定した方法に合わせて業務フローの変更とその事前周知を行いましょう。
電子化にあたり、いくつか注意点があります。事前に分かっていればどれも対処できることばかりなので、電子化を始める前に確認しておきましょう。
電子化には多くの場合、導入時にコストがかかります。これによって上層部からの承認を渋られる可能性もあるかもしれません。しかし、前述の通り、印刷代や場所代など現状かかっているコストを削減できるので、目先のコストだけにとらわれず、長期的に見たらどれぐらいのコスト削減になるのかをきちんと理解して説明できるようにしましょう。
電子化すると捺印方法や保存場所が変わるため、業務フローも変更になります。最初は慣れないフローでかえって時間がかかることもあるかもしれませんが、事前に説明会を開くなどして現場の負荷が少しでも減るように対処をしましょう。
電子化をすると、そのデータはハードディスクやクラウドに保存されます。システムにトラブルが発生すると、クラウドに一時的にアクセスできなくなることも考えられます。トラブル時の対応策が万全なサービスを使用したり、定期的にバックアップをとるなど、電子化の方法や導入後の業務フローでトラブルに対応できる体制を整えておきましょう。
改正電子帳簿保存法によって、これまで電子化を一切行っていなかった企業でも電子化を検討せざるを得ない状況になっています。また、この法律以外にも時代の流れを考えると、電子化は避けられない状況が続くことは明らかです。シヤチハタの提供する電子決裁サービス「Shachihata Cloud(シヤチハタクラウド)」では導入時の初期費用は無料で、サービスを始めることができます。現在無料トライアルも実施中なので、これを機に社内の電子化を進めてみてはいかがでしょうか。