今や多くの企業が検討を始めているDX(デジタルトランスフォーメーション)化はよく耳にする言葉ですが、IT化と同義に捉えている方も多いのではないでしょうか。本記事では、DX化とIT化の違いをご説明した上で、DX化を進めるメリットやDX推進に役立つツールをご紹介します。
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、企業がデジタル技術やデータを活用することで、商品・サービスやビジネスモデルを変革し、競合優位性を確立することをいいます。
多くの企業の基幹システムが限界を迎える「2025年の崖」が迫る日本において、DX化を推進することは、企業経営上の重要課題です。2018年には経済産業省より「DX推進ガイドライン」が公表されました。DX化の実現やIT システムの基盤構築を行っていく上で、経営者が押さえるべき事項を明確にすることを目的としたガイドラインです。
参考:経済産業省 DX推進ガイドライン
https://www.meti.go.jp/press/2018/12/20181212004/20181212004-1.pdf
DX化の過程においてはデジタル技術を活用するため、DX化とIT化は同じ意味に捉えられがちですが、明確に異なります。大きな違いとしては、目的、手段、推進体制の3つです。
DX化の目的は、デジタル技術の活用によってビジネスモデルや組織を改革し、市場で勝ち残っていける競合優位性を確立することです。DX化によって、提供する商品・サービスにはこれまでにない新たな、揺るぎない価値がもたらされます。
これに対しIT化の目的は、デジタル技術を用いて、業務効率化や生産性を向上させることなどが中心となります。IT化によって顧客への価値提供に繋がるケースも中にはありますが、影響範囲はより限定的です。
DX化を実現するための手段は、会社の根幹を支えるITシステム基盤の構築により、データに基づいた活動を行うこととなります。
一方IT化の手段は、ネットワークを利用する・特定のITツールを導入すること・運用することです。
DX化をする過程ではIT化が求められるため、IT化はDX化の手段の一つとも捉えられます。
DX化を推進する部署は、全社横断的にプロジェクトを推進する専門組織であることが一般的です。組織の設立、目標設計、進捗管理には経営幹部もコミットします。
IT化については、基本的には企業内における一部門など限定的なケースが多くなります。
DX化 | IT化 | |
(1)目的 | 競合優位性を確立するためのビジネスモデル・組織改革 | 業務効率化、生産性向上 など |
(2)手段 | 基盤となるITシステムの再構築とデータ活用 | ITシステム導入とその運用 |
(3)推進体制 | DX推進の専門組織が全社横断的に実行し、経営幹部がコミット | 社内の限定的な部署が実行 |
DX化はこの他、IoTやICT、CX、UXなどとも混同されやすいキーワードです。それぞれの違いをご説明します。
IoTとはInternet of Thingsの略で、「モノのインターネット」と訳されます。家電製品や電子機器、自動車などといったモノをインターネットに接続し、利用者データを集めながら有効活用できるようにした仕組みです。
産業機械大手の小松製作所が採用する「KOMTRAX(コムトラックス)」というシステムでは、世界中にある建設機械をネットワークで連携し、常時監視・遠隔制御ができるようになっています。省エネにも役立ち、万が一機械トラブルや盗難、暴走などが起きても安心です。
このようにビジネスインパクトの大きいIoTの活用事例もあり、DX化の過程においてIoTが活用されるケースも存在します。
参考:コマツ産機 KOMTRAX
https://sanki.komatsu/komtrax/
ICTとはInformation and Communication Technologyの略で、IT(Information Technology)に「Communication」が加わった言葉ですが、ITとさほど大きな違いはありません。ITについては技術そのものを指し、ICTは技術を活用した情報伝達に重きが置かれています。しかし実際にはほとんど同義と捉えられており、DX化とICTの違いについてはIT化の段落で述べた通りとなります。
CX(Customer Experience)とは、顧客が商品・サービスを購入する前〜購入後のサポートまでを含めた一連の体験を示します。
これに対し、UX(User Experience)とは、商品・サービスをまさに利用するユーザーの体験です。前述のCXの体験のほうが広範囲に及び、UXはCXに含有される形となります。
(図)CX・UXの関係性
自社商品・サービスのCXを向上させることはブランド価値の向上に繋がり、競合優位性となり得ます。そのためCXやUXも、DX化を推進するために重要な要素です。
次に、DX化の実現により企業にもたらされるメリットをご説明します。
DX化するメリットとしては、社内の生産向上が挙げられます。
DX推進のためには、まずは既存業務の棚卸し・見直しをして、システム導入によって排除可能な無駄なプロセスを洗い出していきます。本当に人手を必要とする業務が何か明確になり、売上への貢献度の高い業務を選択し集中できるようになるため、職場の生産性が向上します。
生産年齢人口が年々減少する日本において、生産性の向上は急務となっています。2018年には政府より「働き方改革関連法」が公布され、各企業には労働環境の整備が求められています。特に2019年より施行された「時間外労働の上限規制」に伴っては、各社残業時間抑制への取り組みを余儀なくされている状況です。
DX化が進めば大幅に業務効率化ができ、働き方改革の実現にも繋がります。職場環境が改善されれば、従業員や求職者から「働きたい」と選ばれる企業になれるため、離職率の低下や人材不足の解消にも繋がることが期待されます。
多くの企業で用いられている基幹システムは、属人的な管理体制となっており、複雑化・ブラックボックス化しています。しかし、そのようなレガシーシステムを支えているIT人材は、2025年までに定年退職を迎えるといわれているのです。経済産業省のレポートによると、この2025年までにシステムを刷新しなければ、事業機会を失う可能性が高いと指摘されています。DX化を推進することで、このレガシーシステムからの脱却を図り、セキュリティ事故や災害、システムトラブル、データ滅失などのリスクを回避するメリットも大きいといえます。
参考:https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/digital_transformation/20180907_report.html
また、DX化によって、企業は市場変化に柔軟に対応できるようになります。
例えば、社内で新しい取り組みを開始する際には、決裁書の申請〜承認や稟議書の提出、予算取りのための見積、社内確認といった様々な業務フローが発生するかと思います。このやり取りが紙の書類で行われていた場合、上司や関係各所から印鑑をもらうだけでも一苦労なはずです。全工程がオンライン上で実施できれば、スムーズに決裁承認が下り、プロジェクトを推進するスピード感がアップするはずです。
意思決定スピードが早まることで、企業の競合優位性を確立することにも繋がります。
繰り返しになりますが、DX化はデジタル技術を活用してビジネスモデルを変革し、競合優位性のある商品・サービスを生み出すことを目的としていました。これまでの前提や常識を疑い、基幹システムや組織を再構築するDX化により、顧客のため、ひいては社会のためになるような、新たなビジネスを創出することができるのです。DX化に取り組むことで、利益を生む「営業活動」「商品開発」などに人員を割けるようになり、企業の競争優位性は高まると考えられます。
2019年末からの新型コロナウイルス感染症の拡大により、日本含め世界中で大きな変化が起きており、このコロナ禍を経てDX化はますます加速しています。続いて、コロナ禍を境に起きたDX化の動向をご紹介します。
「日本における企業のデジタルトランスフォーメーション調査」によると、DXに着手している企業は2020年度には74%に及び、その割合は2018年度比で11%増加しています。このうち、新型コロナウイルス感染症によるDX推進の取り組みへの影響は、50%が「加速」したと回答しました。コロナ禍がDX化を後押ししている状況が示唆されています。
参考:電通デジタル 日本企業のDXはコロナ禍で加速するも推進の障壁はDX人材の育成
https://www.dentsudigital.co.jp/release/2020/1218-000737/
続いて、DX化を推進された企業事例を2つご紹介します。
株式会社キャッチネットワークは、愛知県の西三河エリアで18万世帯と繋がる地域密着のケーブルテレビ局です。1991年に設立され、地域住民の方々からは「キャッチさん」と呼ばれ親しまれています。
そんな同社では、年間約8,000枚の見積書や請求書を紙ベースで取り扱っており、押印作業に手間がかかっていました。書類への押印には数日かかるのが当たり前で、対応工数(人件費)の増大と、手続きのスピード感に欠けることが課題とされていました。
社内の基幹システム開発も検討していたタイミングであったことから、この動きに合わせて、請求書システムの一部として「Shachihata Cloud」(シヤチハタクラウド)の導入も決定しました。まずは請求書の電子移行から着手し、徐々に従業員に操作に慣れてもらいながら、見積書、契約書へと適応範囲を拡大させていったことから、社内の反発もなくスムーズに浸透していったといいます。
結果として、管理職が出社しないとできなかった書類への押印が、場所を問わずどこでも対応可能になり、リードタイムは最短120分までに短縮され、意思決定が迅速になりました。
セキュリティ面に関しても、接続IP制限とSAML認証で安心してクラウド保存できるようになり、書類紛失リスクが減ったメリットもありました。
新渡戸文化学園は、教育者の新渡戸稲造が初代校長を務めた女子経済専門学校を起源とし、子ども園(幼稚園)から小学校、中学校、高等学校、短期大学までを運営する学校法人です。
法人事務局内の起案業務には、紙ベースの申請書が用いられていましたが、新型コロナウイルス感染症の拡大により在宅勤務の必要性に迫られたことで、電子化移行への対応が急務となりました。
複数のシステムを検討した中から、Shachihata Cloudの導入を決定します。決め手となったのは、現状の業務フローをまったく変更しなくていいことでした。Word形式などの申請書類をそのままドラッグ・アンド・ドロップでコピー・ペーストするだけで、クラウド上へ登録でき、予め登録した承認フローに則り簡単に申請できます。
Shachihata Cloud導入により決裁申請に必要な時間は半分以下に短縮され、速い場合の決裁承認は1日で完結することもありました。承認フローに入っている全員が、承認状況の進捗をクラウド上で簡単に確認できるようになった点も大きなメリットだといいます。今後は休暇申請などその他の申請書類などへも導入対象を拡張していく予定とされています。
各社で検討が進むDX化ですが、まだ目に見えた成果を出せていない企業も多いのが現状です。そこで、DX化の推進に役立ち、比較的導入が容易なおすすめツールをご紹介します。
コロナ禍でテレワークを導入した企業が増加しましたが、まだ稟議書や見積書といった書類の作成・承認・回覧を紙ベースで実施している企業も多いのではないでしょうか。クラウド型のワークフローシステムを活用すれば、すべてのフローが電子化され、自宅や外出中でもスマートフォンからアクセスでき、場所や時間を問わず業務を進められます。
boxやGoogle Drive、OneDriveなどに代表されるクラウド型のストレージサービスは、今や企業の必須アイテムともいえます。大容量のやり取りができ、ネットワーク環境さえあれば、どこからでもデータにアクセス・共有できます。必要に応じてアクセス制限をかけることもでき、セキュリティも向上しています。
DX化は単なるIT化とは異なりますが、まずは大規模な投資をする前に、成果が見えやすく比較的簡単に実現できるシステム構築から着手すると良いのではないでしょうか。
DX化の第一歩としては、シヤチハタの提供する「Shachihata Cloud(シヤチハタクラウド)」の導入がおすすめです。Shachihata Cloudはクラウド型の電子印鑑サービスで、これまで紙で実施していたワークフローをそのまま電子化できます。無料トライアルも実施中です。ぜひこの機会にお試しください。