契約書を発行する際、収入印紙や印鑑の取り扱いに迷ったことはありませんか?契約書には決められたルールがあり、印鑑の押し方にも様々な種類があります。本記事では課税文書を作成する際に必要とされている収入印紙・消印の基礎知識と、割印など印鑑の押し方の種類についてわかりやすくご説明します。
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まずは印紙税法によって定められている、収入印紙の仕組みについて簡単にご説明します。
日常業務において、会社間の取引に伴って作成する契約書や領収書の中には、発行にあたり「印紙税」を納付する必要のある文書が含まれています。それが「課税文書」と呼ばれる文書で、20種類の文書が課税対象として指定されています。
収入印紙とは、国に印紙税を納付する手段となります。収入印紙を課税文書に貼付し、消印を押すことで納税が成立する仕組みです。
消印とは、その収入印紙が使用済みであることを証明する役割を持ち、収入印紙への消印は必須となっています。収入印紙と文書にまたがるように、押印または署名(サイン)します。消印は契約当事者の両者が行っても、片方が行っても問題ありません。
(図1)消印の押し方
いくらの印紙税を納付する必要があるかというと、契約書の種類と契約の金額によってそれぞれ定められています。たとえば領収書であれば、以下のような印紙税額が定められています。
(表1)売上代金にかかる金銭または有価証券の受取書
記載された受け取り金額 | 印紙税額(1通または1冊につき) |
5万円未満 | 非課税 |
5万円以上100万円以下 | 200円 |
100万円を超え200万円以下 | 400円 |
200万円を超え300万円以下 | 600円 |
300万円を超え500万円以下 | 1,000円 |
500万円を超え1,000万円以下 | 2,000円 |
1,000万円を超え2,000万円以下 | 4,000円 |
2,000万円を超え3,000万円以下 | 6,000円 |
3,000万円を超え5,000万円以下 | 1万円 |
5,000万円を超え1億円以下 | 2万円 |
1億円を超え2億円以下 | 4万円 |
2億円を超え3億円以下 | 6万円 |
3億円を超え5億円以下 | 10万円 |
5億円を超え10億円以下 | 15万円 |
10億円を超えるもの | 20万円 |
受け取り金額の記載のないもの | 200円 |
注1 売上代金とは、資産を譲渡することによる対価、資産を使用させること(当該資産に係る権利を設定することを含む)による対価及び役務を提供することによる対価をいい、手付けを含みます。
注2 株券等の譲渡代金、保険料、公社債及び預貯金の利子などは売上代金から除かれます。
例) 商品販売代金の受取書、不動産の賃貸料の受取書、請負代金の受取書、広告料の受取書など
注3 非課税文書:1営業に関しないもの、2有価証券・預貯金証書など特定の文書に追記したもの
参考: https://www.nta.go.jp/publication/pamph/inshi/pdf/zeigaku_ichiran_r0204.pdf より作表
具体的にどの文書が課税の対象に該当するのか、また税額の詳細については、国税庁のウェブサイトをご参照ください。
参考:国税庁 印紙税の手引
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/inshi/tebiki/01.htm
印紙税は、課税文書を作成した者が負担することと定められています。会社同士の契約であれば、作成者は2社になります。厳密にどちらが負担するかまでは規定されておらず、どちらが負担しても問題はありませんが、双方で折半とすることが一般的です。領収書に貼付する収入印紙については、領収書を発行した側が負担する場合が多いです。
収入印紙は、一般的には契約書の左上に貼付します。ただし特に規定されているわけではありません。契約の相手方と合意が取れていれば、左上でなくても問題はありません。
領収書に貼付する場合には、収入印紙の貼付欄が設けられていることがあり、その位置に貼付します。貼付欄が設けられていない場合には、空いたスペースに貼りましょう。
収入印紙はコンビニや郵便局で購入することができます。コンビニでは200円までの少額しか取り扱っていないことが多いため、それ以上の金額が必要であれば郵便局の窓口で購入すると良いでしょう。
前述の通り、印紙税は収入印紙を課税文書に貼付し、消印を押すことで納税が成立します。収入印紙の貼付忘れも、消印の押し忘れも、いずれも納税として認められません。罰金として「過怠税(かたいぜい)」が徴収されるため、注意しなければなりません。 過怠税は収入印紙の金額の3倍で、自主的に納付漏れを申告すれば1.1倍に軽減されます。
消印の方法が間違っていた場合にも過怠税が発生する可能性があるため、注意が必要です。
参考:国税庁 印紙を貼り付けなかった場合の過怠税
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/inshi/06/21.htm
押印に失敗してしまい、印影が欠けたり、不鮮明になったりすることもあるかもしれません。そのような場合には、失敗してしまった印影に重ならない位置にずらして、改めて消印を押します。誰が消印したのかが明確に分かるように調整しましょう。くれぐれも同じ箇所に印影を重ねないようにしてください。
それでは、収入印紙に消印する際の注意点をまとめてお伝えします。
収入印紙を貼り付けただけでは、印紙税を納付したとはみなされません。消印忘れがないか確実にチェックするようにしましょう。
消印の一部が欠けている場合や、不鮮明になっている場合も、正しい方法で消印していなかったとみなされ、過怠税が発生してしまう可能性があります。きれいに消印が押せているかどうか、必ず確認しましょう。もしも失敗してしまったときは重ねて押印せず、位置をずらして押し直します。
印鑑ではなく署名(サイン)でも、消印として扱うことができます。ただし、消せるペンや鉛筆は、消すことで改ざんができてしまうため不可とされています。また斜線を引くだけなどの方法は認められません。
ここからは、契約に用いられる印鑑の押し方の種類をご説明します。まずは「割印」についてです。
割印とは、同一の契約書が同時に2部以上発行されたことを証明する押し方で、どちらか片方の契約書の改ざんや不正利用を防ぐ役割を持ちます。たとえば同じ契約書を2社で1部ずつ保管する場合や、原本と写しの関連性を示したい場合、基本契約書と覚書の関連性を示したい場合などに用いられます。
(表2)割印を押す場面の例
・契約書の原本と写しの関係性を示したい場合
・基本契約書とその細則を定めた覚書との関係性を示したい場合
・領収書の原本と控えの関係性を示したい場合 など
前述の消印も「2つにまたがって押す」という意味では割印と同じため、混同されるかもしれませんが、両者は異なります。消印は収入印紙の再利用を防止する目的で押されるものであり、「印紙と文書」にまたがって押します。割印の押し方は次の通りです。
割印は2通以上の契約書をずらして重ね、全ての契約書に印影がかかるように押します。2通の契約書を離すと印鑑が2つに割れるために割印と呼ばれています。3通になる場合は、少しずつ契約書をずらし、3通全てに3分の1ずつ印影がかかるように押します。
なお、割印は代理人やその他の従業員が実施しても良いとされており、必ずしも自ら行う必要はありません。また、契約書の署名・押印に使った印鑑と同一である必要性もありません。
(図2)割印の押し方
割印の際の注意点としては、書類の種類により押印する位置が変わる点が挙げられます。ただし実際に法律で位置まで定められているわけではなく、あくまでビジネス上の慣習としての対応です。
契約書の場合、一般的には契約書の上部に押します。複数枚重なった書類の上にきれいに押印するのは難しいので、きれいに印影を残せるようバランスに配慮して押印しましょう。
割印専用の縦長の印鑑も販売されているため、3社以上の契約締結など複数の書類にまたがって押印する場合は、必要に応じてそのような印鑑を用意しておくと良いでしょう。
領収書の場合、領収書の形式にもよりますが、控えが付いているタイプの領収書については、領収書本体と控えを切り取る位置の間に割印をします。印影が切り取り線にバランス良くまたがるようにします。
控えが付いていないタイプの領収書については、契約書の上部に領収書を重ねて押印するのが一般的な方法です。
割印以外にも、印鑑の押し方には様々な方法と呼び方があります。主な押し方をまとめてご紹介します。
契印とは、2ページ以上にわたる契約書面の綴目に印す押し方です。両ページの繋がりが正当なものであり、両方合わせて1通の契約書であることを証明するために用いられます。後から書面を追加されたり、差し替えられたりすることを防止する役割があります。
契約書が複数枚になり、背表紙が閉じられて冊子になっている場合には、背表紙の帯と契約書本体の境目に押印します。
(図3)契印の押し方
訂正印とは、契約書の内容の一部を訂正するために押す方法です。訂正印を押すことにより、本人の意思により訂正しており、改ざんによるものではないことを証明する意味を持ちます。
訂正したい箇所を二重線で消し、その上もしくは近くに押印します。訂正前の内容も読めるようにしておきましょう。また、削除した文字数を「◯文字削除」と、加えた文字数を「◯◯文字追加」と記載します。
(図4)訂正印の押し方
契約書の文章に改訂が必要になった場合には、前述の訂正印を押す方法が基本的な流れですが、たとえば契約相手が遠方の顧客であるなど、場合によってはそのやり取りを速やかに行うことが難しいこともあります。将来的に契約書に修正が必要になった場合を想定して、予め訂正することを認めるために契約書の余白に押しておくのが、捨印と呼ばれる方法です。
捨印によって、その後修正の必要が生じた際に相手方へ訂正を委ねることができるため、スムーズにやり取りできるようになりますが、意図しない箇所を勝手に書き換えられるリスクも伴うため注意が必要です。
(図5)捨印の押し方
止印とは、契約書の最後に余白が大きく生じた場合に、文章の末尾に押印する方法です。契約の内容がその位置で終了したことを証明する役割があり、勝手に契約が継ぎ足されることを防ぎます。
(図6)止印の押し方
消印とは、契約書や領収書に貼り付けられた収入印紙や、郵便物に貼り付けられた切手が使用済みであることを示すために押す方法です。収入印紙と切手は見た目が似ていますが、前者は印紙税の支払いを証明する役割、後者は郵便料金の前払いが完了したことを証明する役割を持ちます。
収入印紙を使う際には、消印が必須となります。冒頭でもお伝えした通り、課税文書に対しては、収入印紙の貼り付けと消印によって、印紙税を納付したものとみなす仕組みとなっています。
消印の押し方については、使用済みか否かが証明できればよいため、角印やボールペンなどによる署名、いわゆるシヤチハタと呼ばれるスタンプを押す方法でも問題ありません。印紙と文書にまたがるようにして印を付けます。ただし、鉛筆のように簡単に消せるものによる署名や、ただ線を引いたり丸印を描いたりするだけでは無効となります。
(図7)消印の押し方(再掲)
契約書に関連する収入印紙の基礎知識についてご紹介してまいりましたが、紙文書によるやり取りを2社間で行うことには、効率の悪さや不便を感じる場面もあるかもしれません。契約書の製本や郵送、押印の一連の作業を考えると、時間がかかるだけでなく、契約相手が在宅勤務の場合に個別対応が必要になるなど、どうしてもやり取りが滞りがちになります。
しかし、シヤチハタの提供する「ドキュサイン」を活用すれば、契約締結のやり取りを電子化することができます。課税文書でも電子契約の場合には印紙税がかからないとされているため、印紙税の節税ができ、社内のペーパーレス化も促進されてコスト削減・生産性の向上が実現できます。
詳しくは製品詳細ページをご参照ください。
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