リモートワークをはじめとする働き方改革の推進にあたり、電子決裁システムの活用が注目を集めています。電子決裁システムを活用することで、あらゆる承認業務のフローを効率化させることが期待されています。電子決裁システムには、シヤチハタの提供するShachihata Cloud(シヤチハタクラウド)などいくつか種類がありますが、それぞれどのような違いがあるのでしょうか。
本記事ではワークフローシステム・電子決裁システムを導入することのメリットや注意点をお伝えすると共に、主要なサービスを比較しながらそれぞれの特徴をご紹介します。
ワークフローとは、ある一定の業務に関連する、複数の人員によって行われる一連のやり取りの流れのことをいいます。例えば会社で使う備品を発注する場合、一般的には従業員が事務用品の購入を上司に申請し、その上司から総務に発注し、総務に承諾されたら購入し、従業員の手元に届く…といった工程を辿ることになりますが、このすべての流れをワークフローと呼んでいます。この例では、登場人物としては申請者、上司、総務部門の担当者ですが、金額の規模感によってはさらに上位階層の上司が入り、ワークフローは複雑化します。
備品の購入は一例ですが、会社で何か新しい取り組みを始める場合には、予算を確保したり、稟議にかけたりする必要があるかと思います。これら一連のワークフローを紙ベースで行うとなると、時間と労力がかかります。そこで、ワークフローを電子化し、オンラインで書類のやりとりをしたり、承認をもらったりできるようにした仕組みが、ワークフローシステムです。ワークフローシステムを導入して活用することで、従来の紙を用いたワークフローに比べ大きく効率化でき、さらには工程が可視化されるようになります。
今では多くの企業でワークフローシステムが導入され、ビジネスパーソンにとって身近なツールとなりました。
次に、ワークフローシステムを導入することにより生まれるメリットについて、もう少し詳しくご紹介します。効率化が図れるとお伝えしましたが、具体的には次のようなメリットがあります。
ワークフローシステムを導入することで、書類の申請・承認を手早く進めることができるようになります。ワークフローシステムでは、社内で稟議が必要な書類の申請から承認まで、すべてオンライン上で実施することができます。申請者は書類を印刷したり、承認者が席にいるか確認したり、承認者の不在時に待ったりする必要がありません。承認がどこまで進んでいるのか瞬時に把握できます。また未承認案件のリマインド機能もあり、確認の手間も省けます。仮に書類に不備があって差し戻しになった場合も、すべてやり直す必要がなく、不備のあった箇所のみ修正してまた申請を上げることができます。
紙で書類を管理する場合には、印刷物を製本して捺印し、契約相手から捺印後の契約書を返送してもらい、その書類を鍵付きキャビネットなどで保管しておくことになります。一方、ワークフローシステムを活用すれば、書類を印刷して管理する必要がなくなり、すべてオンライン上で保管できるようになります。後から過去の契約書の内容を確認したければキーワードや作成日で検索して簡単に見つけ出すことができるため、書類管理の負担が大きく軽減できます。
また、記入漏れや計算ミスが起きた場合、自動的にエラーを返す仕組みも備わっており、ミスの軽減、修正対応の効率化にも繋がります。
近年企業においてはコンプライアンス強化の重要性が増しています。ワークフローシステムでは、文書へアクセスする際に制限をかけたり、パスワードを設定したり、セキュリティを担保することが可能となっています。閲覧者・承認者を明確にすることで改ざん・悪用・不正を防止し、内部統制機能の強化にも役立ちます。
稟議に関わるすべての工程をオンライン上で完結できるようになれば、ペーパーレス化を実現できます。文書を印刷する場合は紙代やインク代、印刷代、製本テープなどの代金、そして郵送料や印紙代がかかりますが、これらが一切不要となります。コスト削減に繋がるメリットも大きいといえるでしょう。
また、紙を用いたやり取りの存在は、リモートワークを阻む要因となります。ペーパーレス化が叶えば、多様な働き方の選択肢を広げることができるようになります。コロナ禍でなかなか在宅勤務を推進できない企業の助けになるでしょう。
ワークフローシステム導入の効果について詳しく知りたい方はこちら
ただし、ワークフローシステムを導入するにあたっては、次のような注意が必要です。
前述の通り、ワークフローシステムは便利な仕組みですが、自社のワークフローの中でどの部分をシステム化したいのか、事前に検討しておくことが大切です。ワークフローシステムには様々な種類があります。よく検討せずにあらゆるシステムと連携させられる多機能なタイプを導入した場合、使わない機能のために高いコストを割くような結果を招きかねません。
まずは自社の課題を洗い出した上で、どの部分を自動化したいのかを整理しましょう。自社にとってどのような製品が適しているのか、機能の必要性を十分検討し、適したシステムを選択しましょう。
ワークフローにおける文書管理の課題と解決法について詳しく知りたい方はこちら
それでは、実際にワークフローシステムの導入を検討する場合、どのような観点でシステムを選べばよいでしょうか。ここではワークフローシステムで特に注目して比較したい項目をピックアップしてご紹介します。
システム導入で最も重要な点は、そのシステムが自社の課題解決に繋がるかということです。まずは外出先からタスク実行できるようになれば十分なのか、それとも自社のCRMシステムなどとも連携させたいのか。提供してもらえる範囲で実際の導入事例などを確認し、自社にも応用できるかどうか相談しましょう。
また、仕組みが素晴らしくても使い方が理解できなければ、残念ながら職場に定着することはないでしょう。実際に仕組みを利用する方々が使いやすく、操作が簡単であるかどうかも重要なポイントです。可能であれば試験導入期間を設けてみることをおすすめします。その間に当初の目的が達成できそうな仕組みになっているかを振り返り、本格的な導入に踏み切るか否かを検討するとよいでしょう。
ワークフローシステムはそれ単体でも活用できますが、既存の人事システムや組織図などと連携ができれば、より使いやすくなります。現行のシステムから大幅に変化することには抵抗があるものです。社内の反発も予測されるため、可能であれば既存システムを維持しつつ、連携によってさらに便利になるような仕組みを選択しましょう。
ただし、高度なシステム連携にはITの専門知識が必要となる点には留意しましょう。
システムの分類としては、大まかにはクラウド型かオンプレミス型かの違いがあります。クラウド型は外部サーバーを使用するタイプ、オンプレミス型は自社内に物理サーバーを置いて開発・保守・運用をするタイプです。
自社内に開発を指揮できる人材が十分かつ長期的に確保できる状況であれば、オンプレミス型のほうがカスタマイズの自由度が高いため、ビジネスの状況に合わせてシステム構築できます。クラウド型登場以前までは、システム導入といえばオンプレミス型が主流でした。
しかし近年は全国的にIT人材不足といわれている状況のため、クラウド型サービスのほうが主流になっています。クラウド型サービスであればWebブラウザから利用できるため、ハードウェアの調達やサーバーの増強、ソフトウェアのインストールをする必要がなく、導入及び維持コスト共に安価に押さえられます。
自社で確保できる人材や利用者のリテラシー、使える予算に応じた適切な仕組みを選択しましょう。
契約書や稟議書の内容は、自社の方針・決定が記された重要書類です。それらを取り扱うワークフローシステムのセキュリティは高水準でなければなりません。社外からの不正アクセス、社内での改ざん・悪用など、あらゆるリスクに対して対策が施されているかどうかを確認しましょう。閲覧履歴やダウンロード履歴が残る機能、承認時にタイムスタンプが付く機能、高セキュリティの電子署名が使える機能など、システムそれぞれに特色があります。
ここまでワークフローシステムについてご説明してきました。このように便利なワークフローシステムですが、実は、外部取引先との契約書をはじめとする文書を本格的に管理しようとするには難しい面もあります。契約書は電子帳簿保存法やe-文書法など、様々な法律に基づいて作成され、書類の種類によって保管が必要な期間や更新時期、用いられる印鑑の種類なども異なるためです。
そこで新たに注目されているのが、電子決裁システムです。電子決裁とは、決裁処理に特化した業務フローを電子化したサービスで、電子文書を用いて処理を行います。決裁を完了させるために重要とされる工程の一つに、社内回覧が挙げられるかと思います。電子決裁システムでは社内関係者の捺印をスムーズに行えるように設計されています。
なお、読みが同じ「電子決済」とは、商品・サービスの支払いを現金以外のクレジットカードや電子マネーなどで行う手段のことで、電子決裁とは別物です。
続いて、電子決裁を導入するメリットを3つご紹介します。
電子決裁システムを導入すれば、紙書類の印刷が不要となり、紙代やインク代などのコストを大きく削減できます。過去の承認状況も簡単に検索できるようになるため、時間的コストの削減にも繋がるといえます。
電子決裁システムを利用すると、インターネット環境さえあればいつでも承認業務を行うことができるようになります。承認者は出張先や外出先でも承認を行えるため、業務が社内に貯まることがなくなり、申請者は承認者を待つ時間が不要になるため、決裁がスムーズに手早く進められるようになります。また承認の進捗状況が可視化され、業務が停滞するのも防止できます。
電子決裁システムでは、操作ログが残され、いつ誰が書類を閲覧・編集したのか、その内容が何であったかが参照できます。証跡が残ることで不正使用の抑止力となり、また本人であることの証明もデジタル的に行えます。
また、入力漏れなど書面に明らかな不備があった場合にはエラーチェックが走るため、差し戻しになる前に修正を行うことができます。
一方、電子決裁ステム導入にも次のようなデメリットが存在します。予めデメリットも確認した上で、自社にとって適した方法を検討しましょう。
電子決裁システムを新しく導入するとなると、当然ではありますが導入のためのコストがかかります。いくらかかるのかはサービスによって異なりますが、初期費用と使用量に応じた運用コストがかかることが一般的です。導入によってもたらされる効果とコストを照らし合わせながら検討を行いましょう。
電子決裁システムに限ったことではありませんが、新しい仕組みの導入には操作方法を覚えることが必須になります。システムを構築するのはIT部門の役割かもしれませんが、実際に日々利用するのはそれ以外の方々かと思います。利用する側が使いやすい仕組みを選択することや、不明点が発生した場合に質問できる体制を構築しておくことが、システムの定着にとって大切です。
それでは、最後に主要な電子決裁システムについて、サービスの特徴や機能、料金体系を比較しながらお伝えします。自社の課題解決に繋がるサービスがどれに当てはまるか検討してみてください。
Shachihata Cloudとは、スタンプ(はんこ)で知られるシヤチハタが提供する、クラウド型の電子印鑑・電子署名サービスです。今まさに多くの企業が直面しているリモートワーク時代に合わせた機能強化を行い、2020年11月にリリースされました。
Shachihata Cloudの基本機能は、大きく分けると電子印鑑、捺印、文書回覧の3種類です。
現在業務で利用している印鑑をベースに、認印はすぐに作成、電子化し、利用できます。角印もサインも電子印鑑に変換できます。
捺印についてはいつ誰が行ったのか、履歴を管理しており、セキュリティの面でも安心感があります。
紙書類の対応で時間を取られがちな文書回覧ですが、Shachihata Cloudを使えば、宛先を指定してメールで回覧が可能になります。社外のユーザーも利用可能です。
Shachihata Cloud は「BPS(ビジネスプロセスそのまんま)」をコンセプトに開発された製品で、今までの業務の流れを違和感なくデジタルに移行できるのが大きな特徴です。新しいシステムを導入するとなると、一般的には業務の進め方をシステムに合わせて変えなければならなかったり、システムの使い方を覚えたり、様々な負荷がかかります。しかし、Shachihata Cloudは作成した書類を電子印鑑で捺印し、社内回覧〜承認を含めた契約締結に関わる一連の業務をオンラインでスムーズに行えます。
また、導入費用は不要で、わかりやすい画面設計のため操作は簡単。もちろんスマートフォンやタブレットにも対応しており、外出先からも対応可能で業務が滞ることを防止します。
Shachihata Cloudには一般的な電子決裁の機能が一通り備わっており、お客様のビジネス、事業規模、組織体制によってオプションを自由にご選択いただき、最適なボリュームでカスタマイズが可能です。
基本ライセンスと有償オプションについて詳しく知りたい方はこちら
Shachihata Cloudを導入するための初期構築費用はかかりません。
利用料については1ユーザーに対し、Shachihata Cloudは月額110円(税込)と試しやすい価格です。
使用頻度に関わらず、料金が固定というのもShachihata Cloudの特徴です。
導入しても使いこなせなければコストが無駄になってしまうので、できれば本格導入する前に、自社にとって使いやすいシステムなのかは確認したいかと思います。Shachihata Cloudでは無料トライアルを実施中のため、お気軽にお問い合わせください。
次はG社の提供するクラウド型の電子決裁システムをご紹介します。
G社の電子決裁システムの主な機能は、電子署名、捺印、書類の送信及び管理となっています。契約書をクラウド上にアップロードし、署名者情報などを設定して署名依頼メールを送信。受信者側にて確認のうえ署名し、電子署名が完了する流れで、契約の当事者同士で効率的な捺印業務ができます。手書きのサイン、3社間以上の契約締結にも対応しています。
その他様々な機能がオプションとして用意されています。
G社の電子決裁は、用途によって「電子署名」と「身元確認済み高度電子署名」のいずれかを選択できるようになっています。「電子署名」はメール認証によるシステムログで本人であることを担保し、契約締結までのスピードを重視しつつ、認定タイムスタンプ機能で改ざんを防止します。「身元確認済み高度電子署名」はいわゆる実印のような仕組みで、第三者機関である電子認証局を通じて厳格に本人性を担保するものです。厳格な管理が必要な契約締結に向いています。
また、サービス全体としてはオプション次第で多機能にできるのが特徴です。例えば対面でタブレットを用いた契約を結ぶ仕組みや、契約と同時に相手先に請求を上げる機能、紙の書類をスキャンしたり、PDFにしたりする機能・サービスはオプションで付けることもできます。さらなるセキュリティ対策もオプションで強化でき、IPアドレス制限やワンタイムパスワード、クライアント証明書による認証などが用意されています。API経由で外部の基幹システムやワークフロー・CRMシステムなどとも連携でき、SalesforceやKintoneなどと連携するパッケージもあります。
G社の電子決裁システムのプランは大きく2種類で、「契約印と実印が使えるプラン」と、より高度な機能をカスタマイズできる「エンタープライズプラン」があります。前者のほうが基本となるプランです。
(表2)G社の電子決裁システムの主な機能
「契約印と実印が使えるプラン」については、月額8,800円の基本料金に加えて、文書の送信料と電子証明書発行料が利用回数に応じてかかります。電子署名タイプの送信料は1文書あたり100円、身元確認済み高度電子署名の送信料は1文書あたり300円です。電子証明書については、年間1枚目までは無料で提供され、2枚目以降は1枚あたり8,000円がかかります。年間どの程度の契約締結をすることになるのか、事前に想定しておくとよいでしょう。
「エンタープライズプラン」については内容次第で価格が大きく変わるため、セキュリティ対策やシステム連携など、実現したい具体的な希望を伝えてからお見積りとなります。
G社の電子決裁システムは前述のプラン以外に無料プランが用意されており、お試し利用ができます。ただし利用できるユーザー数は1名までで、署名可能な文書の上限は10となっています。相手方への送信料はかかりません。身元確認済み高度電子署名は無料プランでは対応していません。
続いてC社の電子決裁システムをご紹介します。
C社のサービス内容としても他の2社と大きくは変わらず、契約の締結から契約書の管理、検索など、紙と印鑑をクラウドに置き換えて、契約に関わる作業をオンラインで完結させるものです。契約書を準備し、取引先へ確認依頼を出して捺印をもらう契約業務をスピーディーに実施できます。
C社の電子決裁システムはシリーズ展開されており、他のサービスとの組み合わせでできることの幅が広がるのが特徴です。具体的には、元々が紙の契約書をデータ化して一元管理できるサービス、営業プロセスと一緒に管理できるサービス、対面でサインをもらうサービス、AIによる解析機能付きサービスなどのシリーズが展開されています。
C社の電子決裁システムのプランは「Standard」、「Standard plus」、「Business」の3種類があり、それぞれ機能の充実度やセキュリティの強度が異なります。
(表3)C社の電子決裁システムの主な機能
Standardプラン | Standard plusプラン | Businessプラン |
基本的な機能を網羅 ・書類作成と送信 ・電子署名 ・タイムスタンプ ・認証リクエスト ・テンプレート作成・管理 ・ユーザーグループ管理 ・Web API |
Standardプランに加え ・紙書類のインポート |
Standardプランに加え ・アカウント登録制限 ・IPアドレス制限 ・承認権限設定 ・高度な管理機能 ・SSO(シングルサインオン)機能 ・電話サポート |
Standardプランについては、月額1万円の固定費用に加えて、送信料が1件あたり200円発生します。
Standard plusプランについては、月額2万円の固定費用に加えて、送信料が1件あたり200円発生します。
Businessプランについては、月額10万円の固定費用がかかり、送信料は別途1件あたり200円かかります。
いずれのプランも利用可能なユーザー数に制限はなく、送信件数の上限もありません。
C社の電子決裁システムにも無料プランが用意されており、お試しで電子署名を利用することができます。期限はありませんが、送信可能な書類の件数は月5件まで、利用可能なユーザー数は1名までです。
最後に、今回ご紹介した3サービスのビジネス用プランの違いを一覧表にまとめてご紹介します。どのサービスについても基本的な機能は備わっており、便利な仕組みとなっています。大きな違いとしては、料金形態が固定式かトランザクション式か、そして機能の充実度が挙げられます。
(表4)電子決裁システム比較表
前段でお伝えした通り、電子決裁システムのような新しいシステムを導入する際には、事前に自社の課題を明らかにし、予算の範囲内で課題解決に適した仕組みを選択することが大切です。
例えば電子決裁システムに加えて、書類の管理にも重きを置きたいという場合には、シヤチハタの提供する「Shachihata Cloud with box」をおすすめします。「Shachihata Cloud with box」は書類の回覧や捺印を電子化する「Shachihata Cloud」に、ファイル共有・管理サービスである「box」を組み合わせたサービスです。box内にあるドキュメントに対して捺印・回覧ができます。高度な文書管理や、iPadアプリで手書きメモを残すこともできるようになるので、よりスムーズな承認・決裁業務とその共有が可能となります。気になる方は製品詳細ページをご参照ください。
▶︎「Shachihata Cloud with box」の詳細はこちら
Shachihata Cloud(前:パソコン決裁Cloud)とは?サービス名に込めた想いと機能について