改正電子帳簿保存法(電帳法)が2022年1月に施行され、法人・個人に限らず、オンラインでやり取りした証憑書類は、紙ではなく電子データとしての保存が義務付けられることとなりました。本記事では、個人事業主が電子帳簿保存法に対応する際に注意すべきポイントをわかりやすくご紹介いたします。
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はじめに、電子帳簿保存法とはどのような法律かをご説明いたします。
電子帳簿保存法とは、国税関連帳簿書類を電子データで保存する方法について定めた法律です。帳簿・決算書・請求書といった書類は、原則として7~10年の保存が義務付けられていますが、一定の条件を満たすことで、以下の3つの電子保存が認められています。
① 自社で作成した国税関係帳簿書類を電子データとして保存できる(電子帳簿等保存)
② 紙の国税関係書類をスキャナで電子化して保存できる(スキャナ保存)
③ 取引先との電子取引をデータとして保存できる(電子取引)
この電子帳簿保存法は2022年1月に改正され、③の電子取引で行われる書類の保存では電子保存が「義務化」されました。つまり、要件に沿って電子データとして保存できていない場合は、罰則の可能性もあるということです。元々電子データで作成された書類を紙にプリントアウトして保管できなくなるため、かなり大きな動きだといえます。
これらの取り決めの周知が事業者へ進まなかったために、完全移行までは2年間の猶予期間が与えられていましたが、2023年12月末で猶予期間が終了しています。現在は電子帳簿保存法の要件通りに運用する必要があります。
電子帳簿保存法は2023年3月にも改正が行われています。2023年の改正では、以下の3つの変更が盛り込まれています。
②については、これまでスキャナで読み取った際のサイズや解像度、入力者等情報の確認などの要件がありましたが、これらの要件が廃止されています。また、③については、前々年度の売上高が5,000万円以下の事業者に対して、税務調査の求めに応じられる限り、帳票の検索機能の確保が免除されます。こうした要件の緩和により、より制度の利活用を促進する流れとなっています。
電子帳簿保存法の改正は法人だけでなく、個人事業主も対象であり、ペーパーレス化を考えていない事業者でも必ず対応しなければなりません。次に、個人事業主の方が特に注意すべき点をまとめてお伝えいたします。
個人事業主の方に大きな影響があると想定されるのは、受発注や請求に関するやり取りに用いられる電子取引関連書類ではないでしょうか。電子メールやクラウドサービスなどの電子取引で授受した見積書、注文書、納品書、請求書、領収書などは、電子データとして保存しておく必要があります。紙にプリントアウトして保管することはできません。
電子取引をデータとして保存するための要件(※1)がいくつか定められています。具体的には以下の通りです。
自社開発のシステムを使用する場合、設計書や運用手順書など、システムの概要を記載した関連書類を備え付ける必要があります。
データ保存場所には、システムを操作する端末、ディスプレイ、プリンタおよび、操作説明書を備え付け、必要に応じて速やかに出力可能な状態としておく必要があります。
取引データは速やかに検索できるようにしておく必要があります。検索の条件は「日付・金額・取引先」の3項目で、複数の記録項目の組み合わせで検索できる必要があります。
取引データの真実性・信頼性を確保するために、下記いずれかの措置が必要です。
・タイムスタンプの付与
・データの授受後、速やかにタイムスタンプを付与する
・データの訂正・削除の履歴管理が可能、もしくは訂正・削除ができないシステムの導入
・訂正・削除の防止に関する事務処理規定を定め、それに従って運用する
タイムスタンプとは、その時点に書類が確かに存在していて、改ざんされていないことを証明する仕組みです。タイムスタンプはスキャンデータの保存時に付与しますが、最長約2か月と概ね7営業日以内に付与することと決められています。確定申告の直前などに、まとめて対応することはできません。
タイムスタンプを付与するサービスは高額なものが多いため、個人事業主の方にとっては負担に感じられるかもしれません。タイムスタンプの代わりに、電子データへの訂正・削除といった履歴が残るようなクラウドドライブを活用するのであれば、タイムスタンプは付与しなくても良いとされています。
※1参考:国税庁 電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】Ⅱ 適用要件【基本的事項】
混乱されるかもしれませんが、元々「電子データ」としてもらった領収書は必ず電子データとして管理しなければなりませんが、元々「紙」でもらった領収書などは、紙で保管しておくことも可能です。ここで、領収書類の正しい保存方法を整理しましょう。
ECサイトをはじめオンラインによる取引で、元々「電子データ」として届いた領収書は、紙ではなくそのまま電子データとして保管しておく必要があります。印刷して保管することはできません。
紙で受け取った書類をスキャナで電子化する場合には、タイムスタンプの付与が必要となります。難しい場合は、修正や削除の履歴が残るクラウドドライブで保存するようにしましょう。
元々「紙」でもらった領収書については、紙で保存しておくことが認められています。スキャナ保存でタイムスタンプを付与する期日が過ぎてしまった場合なども、紙としてそのまま保存しておきましょう。
なお、青色申告控除65万円を引き続き受けられるようにする条件としては、これまでの条件に加えて、「仕訳帳と総勘定元帳について、電子帳簿保存を行っていること」または「所得税の確定申告書、貸借対照表と損益計算書などの提出を、確定申告書の提出期限までにe-Taxを使用して行うこと」が必要ですので、覚えておきましょう。
前述したとおり、電子帳簿保存法に基づく書類の保存方法は、書類の受け渡し形式によって異なる要件があります。ここでは、取引に関連するさまざまなケースごとの保存方法を紹介します。
取引先に電子データとして送付した書類(請求書控え等)は、送信した元の電子ファイルをそのまま、システム上で保存します。紙に印刷して保存することはできません。
電子メールやWebサイトからのダウンロードなど、受領方法はさまざまですが、取引先から電子データで受領した請求書は、送付した書類と同様、そのままシステム上で、電子データで保存します。
取引先から紙で受領した書類については、紙のまま保存することが可能です。また、スキャナ等で読み取って、電子データとして保存することもできます。
紙のまま保存する際は、従来の方法でファイリングして保管します。電子データの場合は、電子データで受領した場合と同様に、システムで保存します。
EDI(Electronic Data Interchange)とは、電子取引の方法のひとつで、取引の中で発生する証憑などを、専用回線などを使って電子化して授受する方法です。EDIデータで受領した書類も、電子帳簿保存法により電子データのまま保存することが義務付けられています。他の電子データと同様、そのままの形式で、システム上で保存する必要があります。
電子帳簿保存法と合わせて、個人事業主の方が気にしておきたい制度に、2023年10月から導入されるインボイス制度(適格請求書等保存方式)があります。一言でお伝えすると、記載義務とされる条件を満たした請求書により、消費税を計算し納付する制度です。消費税は現在10%のものと8%のものがありますが、売り手が買い手に対し、商品に課税されている消費税率・税額を請求書に明記します。所轄の税務署長に対して登録申請書を提出し、適格請求書発行事業者になるプロセスが必要となりますので、頭に入れておきましょう。
最後に、個人事業主の方が今から2年間の猶予期間のうちに見直しておくべきことをお伝えいたします。
ドキュメントの検索機能を確保しておくために、「取引年月日」「取引先」「取引金額」の3項目で検索できるようなファイルの命名ルールを設ける必要があります。例えば「yyyymmdd_取引先名_取引金額」のようにルールを決めて運用を行いましょう。索引簿を作成することも有効です。
データの保管場所や、何かパソコンやシステムに不具合が起きた場合のバックアップ方法は取り決めてあるでしょうか。修正履歴の残るクラウドドライブの導入など含め、この期間のうちに見直しを進めましょう。
注文書を受け取ってから納品・請求に至るまでの業務フローは固定化されているでしょうか。納品までのプロセスごとに必要とされる書類は異なりますので、これを機に見直しを行い、抜け漏れないよう対応しましょう。
電子帳簿保存法の改正に伴う対応は、個人事業主の方も例外ではなく、現在の管理システムや業務フローの見直しを踏まえた上での対応が迫られていることがわかります。書類は元々電子帳簿保存法に対応しているシステムを活用し、電子データとして一元管理できるほうが効率的です。
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