Shachihata Cloud DXコラム 労働条件通知書 2019年4月より電子交付が可能に
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労働条件通知書 2019年4月より電子交付が可能に

新規で従業員を雇い入れる際に、交付が必須となる労働条件通知書。2019年3月31日までは、紙面で労働者に交付する必要がありましたが、2019年4月1日より労働基準法施行規則が改正され、FAXやメールなどでの電子交付も可能になりました。電子化による変更点と電子交付に満たすべき要件について解説します。


参考:厚生労働省(労働契約|契約の締結、労働条件の変更、解雇等)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/keiyaku/meiji/index.html

労働条件通知書とは

労働基準法では、従業員を雇用する際の労働条件の明示を企業に義務付けています。この義務を果たすために企業が従業員へ提示する書類が、労働条件通知書です。労働条件通知書では、下記6項目の書面での明示が必須となっています。

(1)労働契約の期間
(2)有期労働契約の更新の基準
(3)就業の場所・従事する業務の内容
(4)始業・終業時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇、交代制勤務をさせる場合は就業時転換に関する事項
(5)賃金の決定・計算・支払いの方法、 賃金の締め切り・支払いの時期に関する事項
(6)退職に関する事項(解雇の事由を含む)

このほかに、下記9項目については口頭での明示でもよいとされています。

(1)昇給に関する事項
(2)退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算・支払いの方法、支払いの時期に関する事項
(3)臨時に支払われる賃金・賞与などに関する事項
(4)労働者に負担させる食費・作業用品その他に関する事項
(5)安全衛生に関する事項
(6)職業訓練に関する事項
(7)災害補償、業務外の傷病扶助に関する事項
(8)表彰、制裁に関する事項
(9)休職に関する事項

労働条件通知書は、正社員だけでなくパートやアルバイトなども含んだ全従業員に対して交付する必要があります。法律で定められている企業への義務のため、交付を怠ったり内容に不備があったりすると、法律で罰せられる可能性もあります。


参考 :厚生労働省(事業主の皆様へ「労働基準法施行規則」改正のお知らせ)
https://www.mhlw.go.jp/content/000481172.pdf


参考 :厚生労働省(労働基準法施行規則第5条第1項, 2019/4/10交付)
https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=322M40000100023

労働条件通知書の電子化による変更点

まずは労働基準法改正の背景を確認しましょう。労働基準法 第15条1項では、雇用主(企業)は従業員に対して、労働条件を明示することが必要であると定めています。

第十五条 使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。

上記条文の「厚生労働省令」とは、労働基準法施行規則 第5条のことで、この条文内で書面の交付が明示されています。

3 法第十五条第一項後段の厚生労働省令で定める方法は、労働者に対する前項に規定する事項が明らかとなる書面の交付とする。

この条文が制定されたのは昭和22年で、その後長らく改正をされていませんでした。そのため、法律で規制されていない雇用契約書などは電子書面の発行ができる一方で、労働条件通知書は書面で交付しなくてはいけない、という状況が続いていました。働き方改革推進の一環で、書類の取り扱い業務を電子化し効率を上げるため、この不便さを解消したのが今回の改正です。

今回の改正では、交付手段にFAXやメールなど電子書面の交付が追加されました。明示するべき条件については改正前後で変更はありません。

労働契約締結時の労働条件の明示に関する労働基準法改正内容の前後比較


参考:厚生労働省(省令第百十二号)
https://www.mhlw.go.jp/content/000350655.pdf をもとに作表

電子化に必要な3つの要件

しかし、労働条件通知書を電子化移行するにあたっては、満たす必要のある要件が大きく3つ定められています。
管理のしやすさの観点などから、企業側では電子化のメリットが大きいかもしれませんが、労働者側にも、インターネット環境などそれぞれの都合があります。各々の状況に合わせて、従来の紙運用と並行して利用していくのが望ましいでしょう。クリアすべき3つの要件をこれから解説していきます。

要件1 従業員本人が電子交付を希望していること

労働条件通知書の電子化には、従業員が電子交付を希望していることが条件となります。さらに、本人が希望したかどうかを「個別にかつ明示的に確認する」としています。そのため新たに労働者を雇用する際は、従業員に紙面と電子書面のどちらでの交付を希望するか確認が必要です。

確認のタイミングは、入社前に労働条件の確認を双方行うためにも、内定後から入社前までが望ましいでしょう。労働者に未確認、または希望に反して電子書面(電子メール等)で労働条件通知書を送信してしまうと、労働基準関係法違反にあたり、最高で30万円以下の罰金となることもあります。

要件2 従業員本人のみが確認できる状態で交付すること

労働条件通知書を労働者に交付する際は、FAX・メール・SNS等、受信者を特定して情報の伝達ができる手段での交付が求められています。労働者本人のみが、閲覧・確認できる形式で、交付を行いましょう。
不特定多数がアクセスできる環境での交付は認められていません。

要件3 紙面にプリントアウトできる形式であること

電子交付した労働条件通知書は、労働者が紙面にプリントアウトできる形式で交付しなければいけません。プリントアウトできる形式は、一般的に出力可能とみなされる形式であれば問題なく、労働者それぞれの状態に合わせる必要はありません。
SNSなどはデータの保存期間が限られている場合がありますので留意する必要があります。できるだけ、プリントアウトすることが想定されている形式で交付するようにするとよいでしょう。


参考:(要件1〜3) 厚生労働省(事業主の皆様へ「労働基準法施行規則」改正のお知らせ)
https://www.mhlw.go.jp/content/000481172.pdf

労働条件の電子交付に関する注意点

電子交付の3つの要件を満たすほかにも注意すべきことがあります。
例えば、労働条件通知書の電子交付にSMS(ショート・メッセージ・サービス)を使用することは要件違反にはなりません。しかし、SMSには文字数制限があり一度で交付内容を送信できなかったり、PDFなど出力可能なデータが添付できなかったりと、後々の確認がしづらい手段です。添付ファイルなどで交付をすると、一目で交付内容が確認でき、印刷や保存、後からの確認が容易になるでしょう。

また、こちらも義務ではありませんが、明示した日付や送信した企業担当者の氏名・労働者の氏名、法人名などを記入しておくと、企業と労働者の間での認識齟齬の防止に役立ちます。
電子交付の手段に迷ったら、後から確認がしやすい状態になっているかどうか、を考えてみるとよいでしょう。

重要書類は時代にあった方法で適切に管理を

時代に合わせて、法律も改正がされていきます。改正に柔軟に対応しながらも、継続してしっかりとした管理ができる体制を整えることが、企業の安全を守ります。
今回の改正で労働条件通知書の電子交付が可能となったことで、交付履歴の管理が今までよりも容易にできるようになったと考えられます。これを機に人事・総務関連などの重要書類の管理方法・管理体制を見直してみてはいかがでしょうか。

書類の保管期間について詳しく知りたい方はこちら

電子交付に必要なものとは

電子交付にあたっては、専門のクラウドサービスを利用することがおすすめです。
シヤチハタの「Shachihata Cloud(シヤチハタクラウド)」では、書面の用意から押印まで、すべてインターネット上で完結できるようになっており、紙を使わずに契約締結や書面の交付を行うことが可能です。郵送代や紙代を節約することもでき、企業にとってはメリットも大きい改正なので、この改正に合わせて、電子署名サービス導入の検討をしてみるのもよいでしょう。

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