この記事でわかること
電子契約を導入する際、多くの担当者が疑問に感じるのが「押印は必要なのか」という点です。従来の紙契約では署名や押印が当たり前でしたが、電子契約では必ずしも同じ対応が求められるわけではありません。実際、法的には押印がなくても契約の効力は認められています。
ただし、すべてのケースで押印が不要というわけではなく、契約の種類や運用方法によって注意点があります。本記事では、電子契約で押印が不要とされる根拠や、必要となる場合の例、さらに安心して活用するためのポイントについて解説します。
なお、Shachihata Cloudでは、BtoB企業様向けに「電子契約導入のメリット」を提供しています。 無料でダウンロードできますので、ぜひ電子契約の導入にお役立てください。


電子契約の締結方法には、電子印鑑(電子データ化されたハンコ)を押印するタイプと、電子署名または電子サインをするタイプの大きく2種類があります。
電子印鑑とは、契約締結書類へ電子データとして押印できる印鑑のことです。ただし、単純な画像データとしてハンコを用意するだけでは効力がありません。なりすましや改ざんが起こる可能性があるためです。
誰が押印したのかを識別する情報を組み、本人識別情報が組み込まれたタイプの電子印鑑サービスも提供されています。導入にあたってはそのようなセキュリティ対策の施されたサービスを採用しましょう。
なお、印影は目に見える形で提供されるため、スキャン・複製されるリスクはゼロではない点には注意しましょう。
電子署名または電子サインを用いて電子契約を締結する方法もあります。
電子署名は改ざんを防止するための暗号技術が予め備わっており、認証局という第三者機関を通じて審査を経て発行されます。信頼性の高い電子署名を用いることで、契約を結ぶ双方の合意を立証できます。
電子サインについては、例えば携帯電話購入時の契約やスポーツジムへの入会の際に、タブレット端末で申込書にサインをする、といった場面で用いられる電子データです。本人が確かにサインしたという情報を持たせない仕組みの場合は確実な本人証明になりませんが、利用のしやすさがメリットです。
▼電子署名の認証の仕組みについて知りたい方はこちら
最近よく聞く「電子署名」とは?認証の仕組み・導入方法・メリットなどの基礎知識
近年、インターネットを通じて契約書や請求書などのやり取りをする電子契約が増えています。そこで注目されているのが「電子署名」です。特に高い法的証明力を求められる重要な電子文書には欠かせません。そこで今回は電子署名とはどのようなものなのか、導入方法やセキュリティ・仕組み・法的な効力・メリット・デメリットについてご説明します。

紙の契約書では、契約内容に合意したことを明確に示すために押印を行うのが一般的です。実際には、印影そのものに特別な法的効力があるわけではなく、契約の成立は当事者間の合意によって決まります。
そのため、押印がなくても合意が確認できれば契約は有効とされます。ただし、現実には契約の正当性を示す慣習として押印が利用されてきたため、書面契約において押印は信頼性を補強する重要な役割を果たしています。
押印とは、印章を紙に押し当てて印影を残す行為を指します。一方、印影とは実際に紙面に付着した跡のことであり、その形自体に法的な効力があるわけではありません。重要なのは「当事者本人が意思を持って押印した」という事実です。
つまり、契約において印影が効力を持つのではなく、押印を通じて合意の意思を示したことが証明される点が本質といえます。そのため、契約の有効性を支えるのは印影の有無ではなく、当事者間の意思確認なのです。
契約書に押印があると、裁判などで証拠能力が高まるとされています。これは「二段の推定」と呼ばれる仕組みによるものです。まず、本人の印鑑が使用されている場合、経験則から「本人の意思により押印された」と推定されます(第一段目の推定)。さらに、本人の押印が確認されれば、その私文書は真正に成立したものと認められるのです(民事訴訟法第228条、第二段目の推定)。
【参照:民事訴訟法第228条】
この二重の推定が働くことで、契約書は強い証拠力を持つとされ、争いが生じた際にも有効な根拠として利用されます。押印は単なる慣習ではなく、長年にわたり法的安定性を担保する重要な仕組みとして機能してきたのです。

電子契約では、従来の紙契約のように押印を行わなくても契約の効力が認められています。その理由は、電子署名や関連する制度によって、当事者の意思確認や契約内容の真正性を担保できる仕組みが整っているためです。
特に、経済産業省が公表している「押印に関するQ&A」でも、契約成立に押印は必須ではないと明示されています。つまり、電子契約においては押印の有無よりも、適切な技術や仕組みを用いて本人性や改ざん防止を担保することが重要といえます。ここでは、以下の2点について詳しく解説します。
電子契約では、印影の代わりに電子署名を用いることで契約の真正性を担保できます。電子署名法第3条では「適法に行われた電子署名が付された電子文書は、署名者本人が作成したものと推定される」と規定されています。
【参照:電子署名法第3条】
この規定により、電子署名は従来の押印と同様に本人確認や合意の証明として機能します。また、改ざん防止や信頼性を高めるためには、電子署名に加えてタイムスタンプを併用することが推奨されています。これらの技術を組み合わせることで、紙の契約書に押印をするのと同等以上に、高い証拠力を備えた契約締結が可能となります。
経済産業省が内閣府・法務省と連名で公表した「押印に関するQ&A(Q1)」では、以下のように明示されています:
・私法上、契約は当事者の意思の合致により、成立するものであり、書面の作成及びその書面への押印は、特段の定めがある場合を除き、必要な要件とはされていない。
・特段の定めがある場合を除き、契約に当たり、押印をしなくても、契約の効力に影響は生じない。経産省「押印に関するQ&A」

電子契約は紙の契約に比べて業務効率を大きく改善できる手段として注目されています。印刷や郵送、押印といった従来の手間を削減できる一方で、導入や運用にあたってはセキュリティ対策や社内ルールの整備が欠かせません。メリットとデメリットを正しく理解することで、自社に適した電子契約の活用方法を見極めることができます。
電子契約を導入する最大の利点は、業務効率の向上です。従来の紙契約では、印刷・製本・郵送・押印・返送といった多くの手間と時間がかかっていましたが、電子契約であればオンライン上で契約を完結できるため、数日かかっていたやり取りを短時間で済ませることができます。
また、郵送費や印紙代、紙の保管にかかるコストも不要となり、経費削減につながります。さらに、電子契約ではアクセス権限の管理や操作ログの記録、改ざん防止の仕組みが整っており、コンプライアンスの強化にも効果的です。
契約手続きを効率化しつつコストを抑え、法令遵守体制を高められる点は、電子契約を導入する大きな魅力といえるでしょう。加えて、契約書の検索や共有も容易になり、テレワーク環境下でもスムーズに利用できる点も、現代の働き方に合致した大きなメリットです。
一方のデメリットとしては、現在の契約書に関連する社内の既存業務フローを変更しなければならないこと、取引先へ説明の必要があること、またサイバー攻撃のリスクがゼロではないことが挙げられます。
新しいシステムを導入する際は、どうしても運用負荷がかかってしまうもので、社内の反対があるかもしれません。また電子契約の締結は契約の相手先の了承がなければ利用することができません。セキュリティ対策が不十分な仕組みでは攻撃されるリスクがあります。
前述の電子帳簿保存法においても、契約書を電子データとして取り扱う条件として、タイムスタンプの付与や、データ修正と削除の履歴が残ることを定めています。そのため電子契約システムの導入にあたっては、セキュリティ対策が整っていて電子帳簿保存法に対応していることを前提として、導入・操作が簡単に行えるようなシステムを選択することが望ましいといえます。
▼電子契約のメリット・デメリットについて詳しく知りたい方はこちら
電子契約のメリット・デメリットは?導入時の注意点と対処法
電子契約を導入するにあたってはメリットばかりではないため、デメリットも考慮した上で、導入を決めることが大切です。本記事では、電子契約を利用するメリット・デメリット、導入時の注意点やその対処法についてご説明します。

電子契約は業務効率化やコスト削減に大きく貢献しますが、導入すれば自動的に安全で便利に運用できるわけではありません。紙の契約と異なり、電子契約はシステムや電子署名といった技術に依存するため、セキュリティ対策や法令遵守を前提とした運用ルールが不可欠です。
特に、契約の真正性を示すための電子署名やタイムスタンプの活用、利用者の権限管理、システム障害への備えなどを事前に検討しておくことが重要です。また、電子契約が法的に有効であることを社内外で正しく理解しておくことで、安心して導入・活用できる環境が整います。
電子契約を行う場合の主な注意点をまとめると以下の通りとなります。
1つずつ詳しく解説いたします。
電子契約を導入すると、社内の決裁フローや手続き方法が紙の契約とは異なるため、業務の流れを見直す必要が生じる場合があります。たとえば、契約締結に必要な承認の取り方や、関係部署への確認手順などを電子契約に合わせて整理し直さなければなりません。
また、取引先が電子契約に対応していない場合は契約自体を進められないため、事前に電子契約の仕組みや法的有効性を丁寧に説明することが重要です。スムーズな運用には、自社のワークフロー整備とともに、取引先への理解促進が欠かせません。
電子契約には捺印は必須ではありませんが、締結の分かりやすさの意味で電子印鑑は利便性が高いとも言えます。しかし、社印など重要な役割を持つ印鑑の印面をスキャンして、画像ファイルとして契約書に埋め込む場合などには注意が必要です。
近年スキャナの性能向上に伴い、ハンコをスキャンして3Dプリンタなどで同じものを作れるようになってきています。勝手に使用されるリスクを伴うため、電子契約でハンコを用いる場合には、セキュリティが強化されたシステムを利用することが不可欠です。
電子契約は幅広い契約に利用できますが、すべての契約に適用できるわけではありません。2025年現在、法律上の要件から電子契約が認められていない契約として、事業用定期借地契約、企業担保権の設定や変更を目的とする契約、任意後見契約書があります。
これらは公正証書の作成や特別な手続きが義務付けられているため、電子的な方法だけでは有効に成立しません。電子契約を導入する際には、自社が取り扱う契約が電子化可能かどうかを事前に確認することが欠かせません。誤って電子契約で締結しようとすると無効になるリスクがあるため、十分な注意が必要です。

業務を効率化させようという機運が、日本国内で高まりを見せています。社外との文書のやり取りにあたっては、権限者双方が意思を持って締結した内容であるかどうか、また改ざんが成されていないかどうかを証明するセキュリティ対策が必須となります。
シヤチハタの提供する「Shachihata Cloud(シヤチハタクラウド)」は、そのようなセキュリティに配慮したクラウド型の電子契約サービスです。文書の社内回覧から取引先への送付、その後のやり取りまですべて本サービス内で完結させることができます。オプションとしてセキュリティ強化セットに含まれる電子署名にタイムスタンプの機能も付けられるようになり、本人認証の精度がさらにアップしました。この機会にぜひ導入をご検討ください。

