Shachihata Cloud DXコラム 働き方改革に伴う、時間外労働に関する罰則付き上限規制とは?今、企業が残業について確認すべきこと
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働き方改革に伴う、時間外労働に関する罰則付き上限規制とは?今、企業が残業について確認すべきこと

「働き方改革関連法」の成立に伴って労働基準法が改正され、労働環境がこれまでとは大きく変わることになりました。特に、働き方改革の目玉ともいわれる時間外労働の罰則付き上限規制については、多くの企業が注目しているのはないでしょうか。

本記事ではこれまでの時間外労働に対する規定が、制度改正によってどう変わったのか、またその動きを受けて企業が今確認し対応すべきことは何かについてご説明します。なお本記事は2019年8月に発表された厚生労働省の「時間外労働時の上限規制 わかりやすい解説」を参考に作成しています。

参考:https://www.mhlw.go.jp/hatarakikata/pdf/000463185.pdf

働き方改革とは?背景と目的

2018年7月に成立した働き方改革関連法とは、正式名称を「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」といいます。この動きを受けて労働基準法が改正され、時間外労働の上限規制や年次有給休暇のルール、同一労働同一賃金の導入など、働き方のルールが大きく変わることになりました。大企業においては2019年4月1日から、中小企業においては2020年4月1日より適用されています。

日本では少子高齢化が深刻な問題となっており、労働人口が今後大幅に減少していくことが危惧されています。一方、働きたい意思のある女性については、出産や育児があり働くことができない方が少なくありません。当然のように長時間労働が行われ、男性社員中心の職場がまだ多く存在しているのが現状です。このような働き方は過労死など人命や健康への影響が心配されるだけでなく、少子化の原因を作り、また女性のキャリア形成を阻む要因、男性の家庭参加を阻む要因にもなります。

そこで、長時間労働を改め、より短い時間で成果を出せる、生産性の高い働き方に変えていくことによって、働く意欲のある方が個々の事情に応じた働き方を選択できるようになることを目指し、働き方改革が推進されています。

これまでの残業(時間外労働)に対する規則

働き方改革に伴って企業がとるべき対応はいくつかありますが、本記事では時間外労働の上限規制に焦点を絞ってご説明します。制度の変更点を理解するにあたり、まずはこれまでの時間外労働への規制から確認していきましょう。

1. 時間外労働には36協定の締結が必須

大半の方は時間外労働をした経験があるかと思いますが、企業が従業員に時間外労働をさせる場合には、前提として労使協定(いわゆる36協定)を締結する義務があることをご存知でしょうか。これに違反すると労働基準法違反で罰せられるため、ほとんどの企業は36協定を締結しています。

労働基準法では、法定労働時間は1日8時間、週に40時間以内とされています。また、休日は原則として毎週少なくとも1回与えることと定められています。法廷労働時間を超えて労働する場合、また休日に労働をする場合には、労働基準法第36条に基づき36協定を締結し、所轄の労働基準監督署に届け出なければなりません。36協定では、時間外労働をさせる必要のある具体的理由や、業務の種類、延長できる時間数などを定めます。

なお、医師や自動車運転の業務など、36協定の上限規制の適用を猶予または除外されている事業・業務もあります。

2. 時間外労働の上限は原則月45時間、年360時間まで

36協定を結んでいたとしても、際限なく時間外労働をさせてよいわけではありません。1か月の時間外労働は原則として45時間、年間の時間外労働は360時間が上限として設定されています。

これを超えて時間外労働をさせた場合、労働基準監督署から行政指導を受けることとされていました。しかし、これまではあくまで「指導」であって、罰則は設けられていませんでした。

3. 特別条項を設ける場合は臨時的時間外労働を許容(年6回まで)

しかし、止むを得ない事情により、上限を超えて働く繁忙期が発生する場合もあるため、「特別条件付き協定」という例外的なルールも存在しています。たとえば突発的な仕様変更、自動車などの機械トラブルへの対応、大規模なクレーム対応などです。

このような臨時的で特別な事情がある場合は、年6回までという規定はありますが、労使で合意の上、時間外労働を行うことができます。36協定締結時にこのルールも一緒に締結します。

実はこの「特別条件付き協定」の条件の縛りがこれまで曖昧で上限規制がなく、特に罰則も設けられていなかったため、36協定のすり抜けルールとなっていた実情がありました。

働き方改革後の残業(時間外労働)に対する規制

では、働き方改革前後の時間外労働規制には、具体的にどのような変更が生じたのでしょうか。

36協定に違反した場合は「罰則」に

36協定に違反し時間外労働の上限を超過した場合でも、これまでは労働基準監督署による「指導」に止まっていました。しかし、働き方改革を境に、「罰則」が設けられることになり、1か月の時間外労働45時間、年間360時間の上限を厳守しなければならないルールに変わりました。

特別条項があっても時間外労働は単月100時間未満、年720時間までに

前述の通り、臨時的時間外労働を年6回まで許容する「特別条件付き協定」があり、事情がある場合は時間外労働を行うことができ、その時間の制限も罰則もこれまで設けられていませんでした。しかし、働き方改革によって条件が明確に定められ、違反した場合の罰則が規定されました。36協定を超えて時間外労働を行う場合には、以下4つのルールをすべて守る必要があります。

1. 時間外労働は年間720時間以内

2. 時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満

3. 時間外労働と休日労働の合計について、「2か月平均」「3か月平均」「4か月平均」「5か月平均」「6か月平均」がすべて1か月あたり80時間以内

4. 時間外労働が月45時間を超えることができるのは年6回まで

違反した場合の罰則と科されるライン

36協定に違反した場合、また特別条項の上限規制に違反した場合には、罰則として「6か月以下の懲役または30万円以下の罰金」が科されます。労働基準法改正前後の違いを図に示しました。

(図)労働基準法改正前後における上限規制のイメージ図

注意点として、改正後は特別条項の有無にかかわらず、1年間を通じて常に、時間外労働と休日労働の合計を月100時間未満、2〜6か月平均80時間以内にしなければなりません。たとえば時間外労働が45時間以内に収まり、特別条項にはならない場合であっても、「時間外労働が44時間、休日労働が56時間、合計100時間以上」となった場合には法律違反となります。

ただし、新技術・新商品などの研究開発業務については、上限規制の適用が除外されています。また、建設事業や自動車の運転業務、医師など一部の事業・業務については、上限規制の適用に5年間の猶予があります。

企業が確認しておくべき事項と対策

制度改正に対応できているかどうか、確認すべきポイントをまとめてご紹介します。

36協定が正しく締結されているか

繰り返しになりますが、これまで36協定に違反した場合は行政指導に留まっていましたが、改正後からは罰則が設けられています。法律違反に該当しないよう、まずは36協定が正しく締結できているかどうかを確認しましょう。

改正後の時間外労働基準を満たせるか

年間の時間外労働時間が720時間以下になっているか、月の時間外労働時間が45時間を超える月が6回に収まっているか、繁忙期でも1か月あたり80時間以内程度に収まっているか、全従業員について確認しましょう。満たせそうにない場合には、時間外労働を減らし、基準を満たせるよう環境を整備しなければなりません。

業務効率化にクラウドサービスの活用を

時間外労働規制がいよいよ罰則を伴うこととなり、企業は対応を迫られています。時間外労働時間を減らすためには、日々の業務効率化を図りながら生産性を向上させていくことが求められます。そこで検討したいのが、便利なクラウドサービスの導入です。シヤチハタの提供する「Shachihata Cloud(シヤチハタクラウド)」は書類の捺印・回覧がクラウド上で簡単に行えるサービスで、スマホやタブレット端末からも書類の承認・回覧をすることができます。紙書類で回覧を行っている場合には、業務時間を大きく削減することができるため、まずはトライアルで導入を検討されてみてはいかがでしょうか。

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