DXを進めるとき、まずはクラウド化が必要と考える方も多いと思います。本記事では、クラウド化を検討する方に向けて、基本的な知識をご説明いたします。クラウド化が求められる理由やメリット、導入時に気を付けたいポイントについて考えていきましょう。
「DX」とは、「デジタルトランスフォーメーション」の略です。直訳すると「デジタルによる変容」になるので、AIなどのデジタル技術を活用することだけではなく、それによってビジネスや生活そのものを変容させていくことまでが意味に含まれています。また、経済産業省の「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン」では以下のようにDXを定義しています。
「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」
DXが求められる背景としては、「2025年の崖」や「VUCAの時代」への対応のため、といわれています。
まず、「2025年の崖」というのは経済産業省のDXレポートの中で指摘された問題です。既存システムがブラックボックス化したり老朽化したりしている状態を改善できなかった場合に、2025年以降に経済の停滞やデジタル競争での敗北を招くことを指します。
次に、「VUCAの時代」とはVolatility(変動性)・Uncertainty(不確実性)・Complexity(複雑性)・Ambiguity(曖昧性)の頭文字を取った造語で、予測不可能な時代、という意味になります。予測不可能な時代を生き抜くためには、常に状況に対応するためのスキルを持った人材が、十分な数必要になります。高齢化が進み、人材量の確保が難しくなっていく日本においては、DXによる業務効率化は必要不可欠といえるでしょう。
DXが求められる理由をご理解いただけたところで、次はクラウド化がDX推進の方法として、よく挙げられる理由を考えていきます。
まず、「クラウド」とは、インターネット上にあるサーバーやソフトウェアのことを指します。通常、新しいサービスを利用する際は、そのサービスの導入対応から始まりますが、クラウドサービスの場合はインターネット環境さえあれば、サービス導入ができます。
この導入の手軽さは、クラウド化が選ばれる理由の一つといえるでしょう。
クラウドサービスが一般的になってきた近年では、「クラウドネイティブ」という言葉も登場しました。「クラウドネイティブ」とは、クラウドサービスを使うことを前提に、そのサービスが最大限生かせるように設定を行うことを指します。これまでは、既存のシステムからクラウド上のサービスに乗り換え、という流れが多かったですが、クラウド化が進む中で、既存ではなく新規の段階からクラウドサービスを利用するという考え方が生まれました。
類語に「クラウドファースト」や「クラウド・バイ・デフォルト」という言葉があります。「クラウドファースト」は、クラウドの利用を優先することを、「クラウド・バイ・デフォルト」はクラウド利用を第一候補とすることを指します。どちらもクラウドネイティブ以前からある言葉で、クラウドサービス以外も併用することが前提となっていますが、クラウド化が進む中では、クラウドネイティブの考え方がより一般的になっていくと考えられます。
クラウドには大きく分けて3種類あります。それぞれのメリットを理解し、自社にあった種類を選定しましょう。
「パブリッククラウド」とは、クラウドサービスを提供するベンダーが管理するサーバーを、各企業が利用できるクラウドサービスです。導入スピードの速さやコストの低さにメリットがあります。
「プライベートクラウド」は、ベンダーのサーバーやデータセンター上に、その企業だけが使用できる専用のクラウド領域を構築して使用するサービスです。プライベートクラウドは自社内のサーバーで運用する「オンプレミス型」と、パブリッククラウド内の専用環境で運用する「ホスティング型」の2種類に分けられます。
企業専用になるので、パブリッククラウドと比べると導入スピードやコストがかかりますが、よりセキュリティの高い環境を用意できることがメリットです。
「ハイブリッドクラウド」は、プライベートクラウドとパブリッククラウドの両方を利用できるクラウドサービスです。目的に応じて使い分けることで、パブリッククラウドとプライベートクラウドの良いとこ取りができます。例えば、セキュアな環境で管理したい機密情報はプライベートクラウド、それ以外のものはパブリッククラウドで運用するなどが考えられます。
メリットが大きい一方で、どう使い分けるべきか、社内で判断できる人材がいないと、いたずらにサービスが二分されるだけになってしまうので、注意が必要です。
クラウド化には多くのメリットがあります。メリットを理解することで、社内でクラウド化に後ろ向きな部署への説明などに役立てることができます。
クラウドを活用するメリットとして、まず挙げられるのはコストを安く抑えられる点です。環境構築にかかるイニシャルコストとランニングコストが安く抑えられることが多いです。前の章でご説明しましたが、クラウドの種類によってコストの差があるので、その点は留意しておきましょう。
クラウドは導入までのリードタイムが短い点もメリットです。インターネット環境と端末さえあれば、すぐに利用を開始することができます。
また、利用をやめる時も契約を終了するだけなので、システムの除却作業なども不要です。
クラウドサービスは、幅広い機能の中から使用したい機能や容量を選択できる柔軟性の高さも魅力です。例えば、サービスの利用が急増する期間のみ容量を増やしたり、機能を追加するなどの対応ができます。
クラウドで何を行いたいのか、現状をどんな状態に変えたいのかを考えます。この目的を明確にしておかないと、オプション機能をつけすぎて、かえって使いづらくなってしまった、などの失敗が起きてしまいます。この機能は目的の実現に必要なのか、基準となる目的をはっきりとさせておくことで優先度をつけることができます。
クラウドは導入して終わりではなく、使い続けられてこそ成功といえます。そのためには、社内のルール整備やサポート体制を構築し、実際に使う社員が不便を感じることなく、いつでも疑問を解消できる状態を用意する必要があります。
DX推進におけるクラウド導入自体は簡単でも、使い続けてもらうためのルール整備などに時間がかかるもこともあります。シヤチハタ社のクラウドサービス「Shachihata Cloud(シヤチハタクラウド)」では「ビジネスプロセスそのまんま」を提唱しており、従来の紙運用のプロセスを大きく変えることなく、電子化することができます。無料トライアルも実施しているので、まずはお試しいただきDXのイメージを掴んでみてはいかがでしょうか。