契約書の電子化対応に伴い、電子署名やタイムスタンプを業務で扱う機会が増えた方も多いのではないでしょうか。電子署名とタイムスタンプはそれぞれ仕組みも役割も異なります。本記事では電子署名とタイムスタンプの違いについて解説した上で、電子契約の仕組みとその導入方法をご紹介いたします。
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はじめに、電子署名とタイムスタンプの違いをご説明いたします。
電子署名とは、電子契約書等に付与される署名で、確かにその本人が署名したこと、契約書の内容が改ざんされていないことを証明する技術です。電子署名の技術的な仕組みについては後述しますが、電子署名には認証局(CA)が発行する電子証明書と呼ばれる本人確認データが付与されており、信頼性の高い署名です。
▼電子署名の仕組みについて詳しく知りたい方はこちら
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近年、インターネットを通じて契約書や請求書などのやり取りをする電子契約が増えています。そこで注目されているのが「電子署名」です。特に高い法的証明力を求められる重要な電子文書には欠かせません。そこで今回は電子署名とはどのようなものなのか、導入方法やセキュリティ・仕組み・法的な効力・メリット・デメリットについてご説明します。
タイムスタンプとは、時刻認証局の発行する時刻情報とハッシュ値を掛け合わせ、PDF等の電子データ化された書類が存在していた日時を証明する技術をいいます。
タイムスタンプの主な役割は、電子データの記録時点の「存在証明」と「非改ざん性証明」です。記録時点において、改ざんが行われていない原本性の証明になり、文書の信頼性を高められます。タイムスタンプは第三者である決められた事業者にしか発行できず、改ざんの難易度が非常に高い仕組みです。
一般的には、タイムスタンプ機能のある有料の電子決裁・電子契約サービスを用いて、次のような流れでタイムスタンプをPDF等の電子データに付与します。
(表1)タイムスタンプ発行の流れ
1. 領収書をスキャン(またはスマートフォンで撮影) 2. 電子決裁などのシステムへアップロード 3. 時刻認証局から正確な時刻を呼び出す 4. 時刻認証局にてタイムスタンプトークンを生成 5. タイムスタンプが付与される |
紙で契約書を扱う場合には、契約主体者同士が契約を取りまとめ、製本し、押印や署名を行い、印紙を貼って保存することで、法的効力のある契約書として成立をさせていました。これは契約の内容が両者合意の元に成立しており、改ざんされていないことが重要でした。
電子契約においても同じような考え方で、その電子契約書が確実に両者の合意の元に成立し、改ざんされていないことを証明する必要があります。この「本人性」「非改ざん性」を証明する仕組みが電子署名です。
前述の通り、電子署名には電子証明書と呼ばれる本人確認データが、第三者機関である認証局により発行され、付与されています。これは紙の契約書でいえば、印鑑証明書に該当する役割を持ちます。つまり電子契約書を作成した人が、確かに本人であり(=「本人性」)、文書の内容も改ざんされていないこと(=「非改ざん性」)を証明します。
電子証明書は、公開鍵暗号方式という仕組みで、安全性を担保しています。公開鍵暗号方式では、誰もが簡単に作成できる「公開鍵」と、1つしかない「秘密鍵」を使って内容を暗号化したり、復号したりします。公開鍵と秘密鍵はペアになっており、ペア同士でなければ復号できません。
公開鍵暗号方式を用いて電子証明書を発行する流れは一般的に次の通りです。
(表2)電子証明書発行の流れ
電子契約書の送信者 1. 公開鍵と秘密鍵のペアを生成・電子証明書の発行 2. 公開鍵を受信者に渡す 3. ハッシュ値を生成し、自分の署名を秘密鍵で暗号化する 4. 電子証明書を用いて電子署名をする 5. 電子署名付きの暗号化した電子契約書を受信者へ送付する 電子契約書の受信者 |
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電子契約では電子署名とタイムスタンプの両方が用いられますが、中には電子署名だけで十分ではないかと思われる方もいるかもしれません。しかし、電子署名とタイムスタンプは両方あることが重要です。次に、タイムスタンプの重要性をご説明いたします。
電子署名が証明するのはあくまでその電子契約書が「本人による署名であること」と、その署名が成された時点では「改ざんされていないこと」の大きく2点です。これにタイムスタンプが加わることにより、タイムスタンプが「付与された時点で、確かにその内容で書類が存在していたこと」を証明できるようになります。
同様に、タイムスタンプがあれば、そのタイムスタンプが「付与された時点において」改ざんされていないことが証明できるようになります。逆にいうとタイムスタンプがなければ、電子契約がいつ時点で有効であったのかを証明できないのです。
まとめると、電子署名には電子契約書の「本人性」、「非改ざん性」を証明する役割があり、タイムスタンプにはそれが「いつ時点で」確かに存在していたかを証明する役割があります。電子署名とタイムスタンプの技術の掛け合わせによって、電子契約の「完全性」が確保できます。これが電子署名とタイムスタンプの役割の違いです。
また、国税関係書類等を電子データとして保存するための要件を取り決めた電子帳簿保存法への対応の観点からも、タイムスタンプは重要です。電子帳簿保存法は2022年1月に改正され要件緩和が進み、訂正・削除履歴の残るクラウドサービスを活用する場合であれば、タイムスタンプの付与は不要になりました。しかしそうでない場合は2ヶ月以内にタイムスタンプを付与する必要があります。
(表3)スキャナ保存制度の要件緩和
改正後の要件 | |
タイムスタンプ | ・付与までの期間は最長約2ヶ月以内に統一(電子取引も同様) ・訂正・削除履歴の残るクラウドに最長約2ヶ月以内に格納する場合は不要 |
領収書への自署 | 廃止 |
紙の原本とスキャナーの同一性チェック | 不要 |
参考:https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/pdf/0022001-105.pdf
電子署名やタイムスタンプを付与できる電子決裁・電子契約サービスを活用すれば、業務効率を大きく改善させることができます。最後に、電子契約を会社に導入する方法をご説明いたします。
まずは、社内の帳簿書類や契約書の管理体制やワークフローを可視化しましょう。誰がどの時点でどのような対応をしており、どこに手間と時間がかかっているのか、ワークフローの推進においてネックになっている部分がどこかを明確にします。そうすることで、電子契約導入後の効果が分かりやすくなり、承認者・申請者が予めはっきりしていれば要件定義もスムーズに実施できます。
次に、業務要件及びシステム要件定義を行います。電子決裁・電子契約サービスには様々な種類があるので、自社に合ったサービスを選択するよう、コストや導入のしやすさ、操作性も加味します。1で可視化したワークフローを極力変更せずに導入できる簡単なサービスが良いでしょう。
そして、クラウド型の電子契約サービスを導入します。電子帳簿保存法への対応も欠かせないため、JIIMA認証を取得したサービスの利用をおすすめします。JIIMA認証とは、市販のサービスが電子帳簿保存法の要件を満たしているかをチェックし、法的要件を満たしていると判断し認定するものです。
クラウド型のサービスであれば、基本的にはインターネット環境とメールアドレスがあれば利用することができるため、導入は比較的容易です。自社に本当に合うツールかどうか、お試し利用できると安心できます。
参考:https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/11.htm
▼電子契約の導入方法とは?手順や選定ポイントなどを分かりやすく解説
電子契約システムの導入方法とは?手順や選定ポイントなどを分かりやすく解説
本記事では、電子契約システムの導入方法や手順、選定ポイントを分かりやすくご説明いたします。在宅勤務の拡大により、対面で行う必要のない「電子契約」に注目が集まっています。電子契約には、紙書類の使用削減や、契約締結のスピードアップなど、多くのメリットがあります。
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