デジタル改革関連法案の制定により、不動産の売買に関係する契約やマンションなどの賃貸借契約を電子契約で取り交わせるようになりました。
本記事では、不動産業界で電子契約がいつから認可されたのか気になる方に向けて、解禁の流れと電子化が認可された内容を解説いたします。不動産取引における電子契約のプロセスや導入のメリット・デメリットのほか、導入時の注意点もまとめました。電子契約を不動産取引に活用できるよう、正しい知識を身につけておきましょう。
電子契約の概要と不動産取引で電子契約が解禁された法改正について解説していきます。
電子契約とは、電子文書に対して電子署名を施すことで契約を締結する手段です。契約締結から契約書の管理までが、すべて電子上で完結できます。2021年の調査では、大企業の6割が電子契約を導入または検討していると回答しており、すでに多くの組織における活用事例が報告されている契約方法です。
電子契約についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
2022年5月から、不動産関連の取引で電子契約が利用できるようになりました。
デジタル改革関連法で宅地建物取引業法と借地借家法が改正されたことを受け、不動産取引における多くの手続きで押印が不要になり、紙書類ではなく電子文書での契約書交付が認められています。
次に、不動産取引において電子契約が認められている書類と、契約書を電子文書にする方法を解説いたします。
借地借家法の改正により、下記3つの書類で電子契約が認められました。
電子契約システムやメールを利用したオンライン契約が可能になったことで、遠隔地からでも契約できるようになり、利便性の向上や業務負担の軽減につながります。
宅建業法の改正で、次の4つの書類で電子契約が認められています。
上記の改正により、不動産の売買・賃貸契約の一連の手続きをオンライン上で完結できるようになりました。電子契約を利用すれば、来店して内見や賃貸などの書類を手続きする必要がないため、部屋探しから契約完了までがスピーディーです。
ご参考として「Shachihata Cloud(シヤチハタクラウド)」の電子契約サービスを利用し、実際に売買契約書を電子文書にする方法をご紹介いたします。
契約先の相手方がShachihata Cloudを契約していなければ、 ゲストユーザーとして登録してもらうことで、相手方も代表印や角印など全3種類の電子印鑑を付与できます。
続いて、不動産取引において電子契約を締結するまでの流れを3ステップで解説いたします。
まず、IT重説を行います。IT重説とは、重要事項説明書の内容を、Web会議システムなどを使ってオンラインで説明することです。IT重説を行うときは、次の事項の確認を要します。
● 買主や借主の承諾を得た旨を残しておくこと
● 買主や借主は承諾後であっても書面の内容を変更できることを説明すること
● 電子署名を施した重要事項説明書をIT重説の前に買主や借主に送付しておくこと
● 買主や借主が書面について改変されていないことが確認できること
● 宅地建物取引士証はカメラに映すこと
IT重説は、双方の承諾のうえ、説明内容を記録に残さなければなりません。また、有資格者がIT重説を行っている証拠として、宅地建物取引証をカメラにきちんと映すことも忘れないようにしましょう。
IT重説を終えたら、重要事項説明書の電子交付を行います。
契約の当事者同士で内容を確認し、問題がなければ次のステップへ進みましょう。
最後に、電子契約を締結します。不動産契約では、紙書類と同様、電子契約でも買主・売主の記名押印が必要です。なりすましなどのトラブルを防止するため、本人性を担保した電子署名を行いましょう。
不動産取引に電子契約を導入することで、以下8つのメリットが得られます。
1.契約書の管理が容易になる
2.契約にかかる時間が短縮できる
3.コスト削減につながる
4.顧客のニーズに対応できる
5.幅広い働き方が実現する
6.セキュリティの向上
7.エコロジーの推進
8.監査対応が容易になる
電子契約を導入することで、電子文書を電子契約システム内やフォルダ内にデータのまま保存できます。契約書を保存する社内スペースが不要になり、ファイル名や保存日付で簡単にデータを検索できるようにしておけば、容易に管理することが可能です。
紙書類で契約書を締結する場合、郵送でやり取りする時間が発生します。電子契約であれば電子文書を即時に相手方に送付できるため、契約にかかる時間を大幅に短縮できるでしょう。
電子契約では、紙への出力や郵送が不要なため、用紙やインクトナー、封筒・切手などのコストカットが可能です。また、電子文書は印紙税が非課税であり、節税にも効果があります。
ICT機器が普及した現代では、不動産取引においても、ペーパーレスで手軽な電子契約を求める顧客が増加しています。また、契約の段階がリアルタイムで可視化されるため、契約の承認依頼を催促する手間も最小限です。
クラウド型の電子契約サービス導入により、在宅ワーク・テレワークなど、多様な働き方改革に対応できます。働きやすい環境が実現できるため、従業員の満足度(ES)も向上するでしょう。
電子契約は、契約書に電子署名やタイムスタンプを付与することで、契約内容の改ざんや不正利用を防ぐことができます。また、アクセス制限や暗号化などのセキュリティ対策が施されたシステム上でデータを管理するため、従来の紙契約書よりも高いレベルのセキュリティを確保できます。
電子契約導入で紙の使用を減らすことにより、環境保護にも貢献できます。紙資源の消費を削減し、印刷や郵送によるエネルギー消費やCO2排出も抑制でき、企業としてエコロジー活動を推進する姿勢を示すことができます。
電子契約では契約の履歴がシステム上で自動的に記録されるため、監査対応がスムーズに行えます。いつ、誰が、どの契約書に署名したかといった情報が簡単に確認でき、監査の効率化にもつながります。
他方で、不動産取引に電子契約を導入するデメリットは以下の5つです。
電子契約は事前に相手方の承諾が必要であり、一方的に導入することはできません。取引先が電子文書などに慣れていない場合、電子契約を導入するハードルが高い可能性もあります。
電子契約システムを導入すると、イニシャルコストがかかるほか、ランニングコストも発生し続けます。費用は利用するシステムによって異なるため、目的や予算に適したプランを選びましょう。
電子契約は、国や地域によって法的な規制や対応が異なる場合があります。不動産取引においても、電子契約が法的に有効であるかどうかを確認する必要があります。特に不動産業界では、地域によっては紙の契約書がまだ主流であり、電子契約が受け入れられていないケースもあるため、法的リスクに対応する必要があります。
電子契約はインターネットを介して行われるため、システム障害やデータの消失、サイバー攻撃などのリスクも伴います。信頼性の高いシステムを選ぶことや、定期的なバックアップ、セキュリティ対策を講じることが不可欠です。
不動産取引の対象者が高齢者やテクノロジーに不慣れな方の場合、電子契約への移行は難しいことがあります。紙の契約書に慣れた層に対しては、導入に伴う説明やサポートが必要となり、業務負担が増える可能性もあります。
不動産取引で電子契約を導入するときには、以下4点に注意してください。
● 電子契約できない書面・契約がある
● 業務フローの再構築を要する
● 電子契約の要件への対応が必要になる
● セキュリティ対策を行う
2023年12月時点では、書面の電子化がまだ認められていない契約があります。
例えば、事業用定期借地契約では、借地借家法23条3項において公正証書による契約のみが認められているため、電子契約の利用はできません。
法改正により、多くの不動産契約を電子化できるようになりましたが、できない契約の存在も把握しておきましょう。
電子契約は、書面契約とは異なる手順を踏むため、従前の業務フローを見直して再構築する必要があります。
全従業員が滞りなく対応できるよう、教育の場を設ける必要があることも押さえておきましょう。
電子署名法により、電子契約の法的効力を確保するためには、暗号化技術を用いた電子署名を施さなければなりません。また、e-文書法および電子帳簿保存法では、電子文書の適切な保存方法が明示されています。義務違反には罰則が課されるおそれがあるため、電子契約を導入する場合は、法的要件へすみやかに対応しましょう。
▶️電子契約の要件について詳しく知りたい方はこちら
紙の契約書と同様に、電子契約によって作成した契約書も、セキュリティを厳重にしなければなりません。オンラインはやり取りがしやすくなる反面、サイバー攻撃による情報漏洩や災害によるシステム停止などのリスクがあります。電子契約を取り入れる際は、より一層セキュリティ対策に力を入れましょう。
法改正に伴い、電子契約が利用可能になったことで、今後の不動産業界における契約のデジタル化が進むことが期待されています。不動産取引における電子契約の導入は、業務効率化やコスト削減、利便性の向上、ペーパーレス化の推進といった多くのメリットをもたらします。しかし、取引先の理解や法的対応、セキュリティリスクなどのデメリットや課題もあるため、導入には慎重な検討が必要です。
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