DX化を進めていくにあたって、電子契約の導入は欠かせません。電子契約には、紙で行う契約よりもコストを抑えられるうえ、場所を選ばずスムーズに進められるメリットがあります。電子契約を正しく行うためには、関連法律を理解することが重要です。法的な有効性を把握することで、契約相手にも自信をもって提案できるでしょう。
本記事では、電子契約に関係する10の法律を「有効性」「税務」「利用者保護」の3つに分けて解説いたします。
まず、電子契約の有効性にかかわる法律を3つ解説いたします。
民法では、「第二章 契約」において企業同士もしくは企業と個人などにおける契約の決まりごとが定められています。
(契約の成立と方式) 第五百二十二条 契約は、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示(以下「申込み」という。)に対して相手方が承諾をしたときに成立する。 2 契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない。 |
第522条1項では、契約する当事者間で合意できたときに契約が成立すると規定されています。また、2項では、契約の成立において方式が決まっていないことが示されています。よって、法令で特別な定めのない契約に関しては電子契約が認められていると解釈できます。
第2条では電子署名の定義が、第3条では電子署名の真正性が書かれています。
(定義) 第二条 この法律において「電子署名」とは、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)に記録することができる情報について行われる措置であって、次の要件のいずれにも該当するものをいう。 一 当該情報が当該措置を行った者の作成に係るものであることを示すためのものであること。 二 当該情報について改変が行われていないかどうかを確認することができるものであること。 第二章 電磁的記録の真正な成立の推定 第三条 電磁的記録であって情報を表すために作成されたもの(公務員が職務上作成したものを除く。)は、当該電磁的記録に記録された情報について本人による電子署名(これを行うために必要な符号及び物件を適正に管理することにより、本人だけが行うことができることとなるものに限る。)が行われているときは、真正に成立したものと推定する。 |
電子署名の真正性については議論が進められてきましたが、政府は「Shachihata Cloud(シヤチハタクラウド)」などのクラウド型の電子契約サービスも、上記の要件を満たすとの見解を述べました。よって、電子署名は法的な根拠のもとで利用できる署名方式であるといえます。
参考:利用者の指示に基づきサービス提供事業者自身の署名鍵により暗号化等を行う電子契約サービスに関するQ&A|総務省・法務省・経済産業省
民事訴訟法は、民事訴訟に関する手続きについて定めた法律です。電子的記録で作成した契約書が法的に認められる証拠となりうるのかについて書かれています。
第247条に定められた自由心証主義により、裁判では電子契約書を含むすべての証拠に基づいて事実についての主張の真正性を判断します。つまり、電子契約書も法的に証拠として認められる書類なのです。
(自由心証主義) 第二百四十七条 裁判所は、判決をするに当たり、口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果をしん酌して、自由な心証により、事実についての主張を真実と認めるべきか否かを判断する。 |
次に、電子契約の税務にかかわる法律を4つ解説いたします。
電子帳簿保存法は、各税法で保管が義務付けられている帳簿や書類を電子データで保存する際の決まりごとを定めた法律です。
第7条では、電子取引にかかわる電磁的記録の保存義務について書かれています。従来、紙で行った契約は7年間保存義務がありましたが、電子契約においても電子契約書等は電子データとして保存しなければなりません。
(電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存) 第七条 所得税(源泉徴収に係る所得税を除く。)及び法人税に係る保存義務者は、電子取引を行った場合には、財務省令で定めるところにより、当該電子取引の取引情報に係る電磁的記録を保存しなければならない。 |
注意点としては、法令に基づく要件を満たす形で保存しなければ罰則が設けられている点です。詳しくはこちらの記事で解説していますので、ご参照ください。
e-文書法は、商法や税法で保存が義務化されている文書の電子データ保存について書かれている法律です。
電子帳簿保存法と似ているように思われますが、電子帳簿保存法は国税関係の書類に関する保存規定を定めたもので、e-文書法は文書全般の電磁的記録を対象としています。
IT書面一括法は、電子契約書面の交付について電子メールなどの電子的手段を認める法律です。契約相手が承諾していることが条件となる点を押さえておきましょう。
印紙税法は、印紙税について定めている法律です。課税文書は収入印紙を貼って納税する義務がある旨が第2条と第3条に書かれています。
では、電子契約書は印紙税がかかるのかというと、結論かかりません。電子契約書を電子メールやFAXで送信することは課税文書を作成したことにはならないため、国税庁は印税の課税原因は発生しないものと考えています。よって、電子契約書は印紙税が削減できるため、コストカットになると言われているのです。
参考:請負契約に係る注文請書を電磁的記録に変換して電子メールで送信した場合の印紙税の課税関係について(別紙1-3)
最後に電子契約の利用者を守る法律を3つ解説いたします。
特定商取引法には、契約内容を書面化して消費者に交付する義務が定められています。従来は電子契約であっても書面で交付しなければならないとされていましたが、改定により消費者の承諾があれば電磁的記録による通知も認められるようになりました。
(通信販売における承諾等の通知) 第十三条 2 販売業者又は役務提供事業者は、前項の規定による書面による通知に代えて、政令で定めるところにより、当該申込みをした者の承諾を得て、当該書面に記載すべき事項を電磁的方法により提供することができる。この場合において、当該販売業者又は当該役務提供事業者は、当該書面による通知をしたものとみなす。 |
電子契約法は、電子取引において消費者を守る法律です。第3条では、消費者の操作ミスで意図しない申し込みをしてしまった場合に救済される場合がある旨が記されています。サービスを提供する側は、消費者の操作ミスを引き起こさないような設計をすることが求められます。
(電子消費者契約に関する民法の特例) 第三条 民法第九十五条第三項の規定は、消費者が行う電子消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示について、その意思表示が同条第一項第一号に掲げる錯誤に基づくものであって、その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであり、かつ、次のいずれかに該当するときは、適用しない。ただし、当該電子消費者契約の相手方である事業者(その委託を受けた者を含む。以下同じ。)が、当該申込み又はその承諾の意思表示に際して、電磁的方法によりその映像面を介して、その消費者の申込み若しくはその承諾の意思表示を行う意思の有無について確認を求める措置を講じた場合又はその消費者から当該事業者に対して当該措置を講ずる必要がない旨の意思の表明があった場合は、この限りでない。 一 消費者がその使用する電子計算機を用いて送信した時に当該事業者との間で電子消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示を行う意思がなかったとき。 二 消費者がその使用する電子計算機を用いて送信した時に当該電子消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示と異なる内容の意思表示を行う意思があったとき。 |
下請法は、下請事業者を守る法律です。 第3条1項、2項で下請事業者の承諾があれば、電磁的記録での交付も可能である旨が記されています
(書面の交付等) 第三条 親事業者は、下請事業者に対し製造委託等をした場合は、直ちに、公正取引委員会規則で定めるところにより下請事業者の給付の内容、下請代金の額、支払期日及び支払方法その他の事項を記載した書面を下請事業者に交付しなければならない。ただし、これらの事項のうちその内容が定められないことにつき正当な理由があるものについては、その記載を要しないものとし、この場合には、親事業者は、当該事項の内容が定められた後直ちに、当該事項を記載した書面を下請事業者に交付しなければならない。 2 親事業者は、前項の規定による書面の交付に代えて、政令で定めるところにより、当該下請事業者の承諾を得て、当該書面に記載すべき事項を電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であつて公正取引委員会規則で定めるものにより提供することができる。この場合において、当該親事業者は、当該書面を交付したものとみなす。 |
電子契約の法的有効性や定めについてはさまざまな法律がかかわっています。本記事では重要なポイントを抜粋してまとめましたので、電子契約を導入する前に確認し、正しく理解しましょう。
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