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電子契約で収入印紙が不要になる?法律に基づいた根拠・理由を徹底解説

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この記事でわかること

  • 印紙税の仕組みと課税対象となる文書の種類
  • 電子契約では収入印紙が不要とされる法律上の根拠
  • 印紙税法における「用紙等」の定義と電子契約が課税対象外とされる理由
  • 国税庁による文書回答や印紙税基本通達に基づく見解
  • PDFでの契約書作成やメール送信と印紙税の関係
  • 国会で示された電子契約への印紙税非課税の答弁内容
  • 紙の契約書には印紙税が課される理由と課税根拠
  • 電子契約によって印紙税や事務コストを削減した企業の具体的事例
  • 電子契約と併用すべき電子署名の重要性とそのメリット

紙の契約書を作成すると発生する「印紙税」。しかし、電子契約に切り替えることで、この印紙税が不要になることをご存じでしょうか。本記事では、電子契約が印紙税の課税対象外とされる法律上の根拠や、国税庁・政府の見解をもとにした明確な理由をわかりやすく解説します。さらに、電子契約の導入によって実現できるコスト削減の事例や、導入時に気をつけたいポイントについても紹介します。

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そもそも印紙税とは

印紙税とは、契約書や領収書などの文書に対して課される税金のことです。これは国税に分類され、国に納める義務があります。具体的には、契約金額が記載された売買契約書や請負契約書、領収書などを紙で作成した場合に、一定の金額の収入印紙を貼る必要があります。これにより、その文書が法的に有効であることが確認され、税務上も適正に処理されたと見なされます。

この印紙税の対象となる文書は課税文書と呼ばれており、どのような文書が対象になるのかは印紙税法とそれに基づく別表第一という表で定められています。課税文書に該当するにもかかわらず、収入印紙を貼らなかった場合や、貼付金額が不足していた場合は、不納付加算税や過怠税が課されることもあります。

つまり、紙の契約書や領収書を発行する際には、内容に応じて印紙税の有無を確認し、必要があれば適切な収入印紙を貼ることが求められます。

電子契約書では収入印紙が不要?

電子契約書では収入印紙が不要になる

電子契約を利用すると、紙の契約書で必要な収入印紙が不要となり、印紙税を支払う義務が発生しません。これは、印紙税法により、電子契約は課税対象外と解釈されているからです。電子契約はコスト削減に繋がり、手続きも効率化されます。本記事では、収入印紙が不要となる根拠や具体的なコスト削減事例を次章以降で詳しく解説していきます。

収入印紙による印紙税の納税義務が電子契約では発生しない理由

収入印紙による印紙税の納税義務が電子契約では発生しない理由

電子契約が印紙税の納税義務を負わない理由を理解するためには、印紙税法の規定を確認する必要があります。印紙税法第2条と第3条には、課税文書として定められた「別表第1」のリストに含まれる文書には収入印紙を貼付し、税金を納める義務が生じると明記されています。

2号文書 請負に関する契約書
7号文書 継続的取引の基本となる契約書(売買取引基本契約書、業務委託契約書、代理店契約書など)
17号文書 売上代金に係る金銭又は有価証券の受取書(領収書など)
※参考: 国税庁 印紙税額一覧表 令和4年5月現在

このリストでは、請負契約書や売買取引基本契約書、領収書などが含まれており、日常的な業務で取り扱う文書が印紙税の対象となっていることがわかります。

しかし、印紙税法では「課税文書」は「用紙等」に記載されたものに限るとされており、紙ではなく電子データによる電子契約はこの「用紙等」に該当しないため、印紙税の課税対象外となります。電子契約により、この税負担が不要となり、手続きの簡素化とコスト削減が可能になるのです。

電子契約に印紙税が課されない根拠とは

電子契約に印紙税が課されない根拠とは

 「用紙等」の「等」という表現が曖昧であり、本当に不要なのかどうか不安を抱かれるかもしれません。しかし電子文書に印紙が不要となる根拠は、国税庁や政府の見解としても示されています。

印紙税法基本通達

印紙税基本通達第44条では、下記の通り、課税文書の「作成」とは、「課税文書となるべき用紙等に課税事項を記載し、これを当該文書の目的に従って行使すること」と定義されています。

第44条 法に規定する課税文書の「作成」とは、単なる課税文書の調製行為をいうのでなく、課税文書となるべき用紙等に課税事項を記載し、これを当該文書の目的に従って行使することをいう。

2 課税文書の「作成の時」とは、次の区分に応じ、それぞれ次に掲げるところによる。(平13課消3-12、平18課消3-36改正)

(1) 相手方に交付する目的で作成される課税文書 当該交付の時

(2) 契約当事者の意思の合致を証明する目的で作成される課税文書 当該証明の時

(3) 一定事項の付け込み証明をすることを目的として作成される課税文書 当該最初の付け込みの時

(4) 認証を受けることにより効力が生ずることとなる課税文書 当該認証の時

(5) 第5号文書のうち新設分割計画書 本店に備え置く時

国税庁 法令解釈通達 第7節 作成者等

つまり、課税の対象となる「作成」は、紙の書類に課税事項を記載し、その文書を相手に交付する行為を指しています。電子契約は電子データとして作成され、紙の文書に該当しないため、印紙税の課税対象外となります。これは、電子契約が課税文書の「作成」に該当しない行為とされているためです。

国税庁の文書回答事例

 国税庁は2008年10月24日の文書回答で、電子契約が課税文書の「作成」に該当しないと明確に示しています。

印紙税法に規定する課税文書の「作成」とは、印紙税法基本通達第44条により「単なる課税文書の調製行為をいうのでなく、課税文書となるべき用紙等に課税事項を記載し、これを当該文書の目的に従って行使することをいう」ものとされ、課税文書の「作成の時」とは、相手方に交付する目的で作成される課税文書については、当該交付の時であるとされている。

 上記規定に鑑みれば、本注文請書は、申込みに対する応諾文書であり、契約の成立を証するために作成されるものである。しかしながら、注文請書の調製行為を行ったとしても、注文請書の現物の交付がなされない以上、たとえ注文請書を電磁的記録に変換した媒体を電子メールで送信したとしても、ファクシミリ通信により送信したものと同様に、課税文書を作成したことにはならないから、印紙税の課税原因は発生しないものと考える。

出展:国税庁 請負契約に係る注文請書を電磁的記録に変換して電子メールで送信した場合の印紙税の課税関係について(別紙1-3)

 このように、注文請書を電子メールで送信する場合、電子データは紙文書の交付にあたらず、印紙税の課税原因は発生しないと解釈されています。

また、同様に2006年7月19日の見解でも、ファクシミリや電子メールで請求書や領収書を提出した場合、紙の交付に該当しないため、課税対象外とされています。

請求書や領収書をファクシミリや電子メールにより貸付人に対して提出する場合には、実際に文書が交付されませんから、課税物件は存在しないこととなり、印紙税の課税原因は発生しません。

また、ファクシミリや電子メールを受信した貸付人がプリントアウトした文書は、コピーした文書と同様のものと認められることから、課税文書としては取り扱われません。

出展:国税庁 コミットメントライン契約に関して作成する文書に対する印紙税の取扱い(問2)(答)

国会答弁

 2005年の国会において、電子記録による契約書は印紙税の課税対象にならないことが明言されました。

事務処理の機械化や電子商取引の進展等により、これまで専ら文書により作成されてきたものが電磁的記録により作成されるいわゆるペーパーレス化が進展しつつあるが、文書課税である印紙税においては、電磁的記録により作成されたものについて課税されないこととなるのは御指摘のとおりである。

出展:参議院 参議院議員櫻井充君提出印紙税に関する質問に対する答弁書(五について)

この政府答弁により、ペーパーレス化が進む中で、電子文書が課税文書に含まれないことが確認されました。電子契約は法律上も実務上も課税対象外であると広く認識されるようになり、企業の電子契約導入を後押しする根拠となっています。

紙の契約書のみ印紙税が課税され、電子契約は不課税になるのはなぜか

 

紙の契約書には印紙税が課される一方で、電子契約には課税されません。これは、印紙税が経済取引の文書化を対象とした税であり、流通の場で直接経済的利益が得られると判断される「紙の文書」に担税力があるとみなされているためです。次に、この税の根拠や、電子契約が今後、課税対象となる可能性はないのかについて詳しく説明します。

紙の契約書に対する課税根拠

 紙の契約書に対する印紙税の課税根拠は、文書によって取引内容が明確化し、当事者間での法的関係が安定することにあります。過去の税制調査会の報告では、紙の契約書に対する課税根拠として下記の記述があります。

(1) 印紙税の意義と仕組み
1) 印紙税は、契約書や領収書など、経済取引に伴い作成される広範な文書に対して軽度の負担を求める税であり、現在、契約書や領収書などの文書を作成した場合には、これに収入印紙を貼付するということが、取引上の慣習として定着してきています。
契約書や領収書などの文書が作成される場合、その背後には、取引に伴って生じる何らかの経済的利益があるものと考えられます。また、経済取引について文書を作成するということは、取引の当事者間において取引事実が明確となり法律関係が安定化されるという面もあります。
印紙税は、このような点に着目し、文書の作成行為の背後に担税力を見出して課税している税と言うことができます。

出展:内閣府 わが国税制の現状と課題 -21世紀に向けた国民の参加と選択-(9.印紙税)

契約書などの文書作成行為が経済的利益を生む可能性が高いため、課税対象とすることで一定の負担力を求めるとされています。このように、紙の文書には経済的利益の証明という役割があり、その作成行為自体に担税力が認められ、課税対象とされています。

電子契約には課税根拠はないのか

 電子契約も経済取引の一部として作成されるものですが、紙の文書とは異なる特性があるため、課税根拠が異なります。前述した国会答弁では、下記の答弁が記録されています。

電磁的記録については、一般にその改ざん及びその改ざんの痕跡の消去が文書に比べ容易なことが多いという特性を有しており、現時点においては、電磁的記録が一律に文書と同等程度に法律関係の安定化に寄与し得る状況にあるとは考えていない。
電子商取引の進展等によるペーパーレス化と印紙税の問題については、印紙税の基本にかかわる問題であることから、今後ともペーパーレス化の普及状況やその技術の進展状況等を注視するとともに、課税の適正化及び公平化を図る観点等から何らかの対応が必要かどうか、文書課税たる印紙税の性格を踏まえつつ、必要に応じて検討してまいりたい。

出展:参議院 参議院議員櫻井充君提出印紙税に関する質問に対する答弁書(五について)

当局としては電子契約に課税できていないことを「問題」として認識していますが、電子文書は改ざんや痕跡の消去が容易で、現時点では紙文書ほどの法律的安定性が認められていないとされています。また、電子契約の技術は進展しているものの、税の公平性や適正な課税の観点からは、現状での課税は難しいとされています。

さらに、電子契約に課税を課すかどうかは国際的な課題でもあります。アメリカなど多くの国では印紙税が存在しません。したがって、日本が独自で電子契約に課税することは現実的には考えにくいでしょう。

電子契約による印紙税コスト削減事例

電子契約による印紙税コスト削減事例

電子契約を導入することで、印紙税コストを大幅に削減する企業が増えています。ここでは、企業の具体的な事例を通じて、電子契約のコスト削減効果や導入のメリットを詳しく解説します。

事例1:ハウスメーカー

 とあるハウスメーカーでは、工事請負契約の電子化を進めることで、印紙代と管理コストの大幅な削減を実現しています。同社では年間8,000~9,000件の住宅建築契約を締結し、1件あたり2万円の印紙代がかかる紙の契約書から、電子契約に移行することで印紙代が不要になり、年間1億円以上のコストを削減できました。電子契約の導入により、手間を減らし、書類の一元管理や契約フローの効率化を図り、顧客満足度向上にも繋がっています。

参考:お客様の手間や印紙代の負担を省き、契約書類の管理を簡単、確実に。

事例2:金融業

 とある金融業では、電子契約を導入することで、契約締結のスピードを1〜2時間に短縮し、印紙代や郵送費などのコストを削減しました。同社は「加盟店ビジネスファンディング」サービスで電子契約を活用し、従来の紙契約の手間や印刷・押印作業を効率化。電子契約の導入により、年間多額のコスト削減に成功し、顧客にとっても迅速なサービス提供を可能にしています。

参考:電子契約化による時間とコストの削減が決め手

事例3:百貨店

とある百貨店では、店舗改装の契約業務に電子契約を導入し、年間2,000件以上の契約書類をペーパーレス化しました。このシステムで印紙税や管理コストを削減し、進捗管理を効率化。取引先にもメリットがあり、紙書類が不要となり双方の手続きが簡素化されています。また、自動化されタイムリーな契約管理により、業務負担の軽減とコンプライアンスの強化も実現しています。

参考:店舗改装工事の請負発注に電子契約を導入し、契約の進捗管理と印紙削減を実現

よくある質問

以下、電子契約と印紙税に関してよくある質問についてまとめましたのでご参考にしてください。

契約書をPDF化したら印紙は必要ですか?

契約書を紙で作成した後にPDFとして保存しても、印紙税の納税義務は免れません。国税庁の見解によれば、「課税文書」は紙に記載されたものが対象であり、PDF化しただけでは紙で作成されたという事実が消えるわけではありません。つまり、印紙が不要になるのは、最初から電子契約として締結し、紙での作成や交付が行われていない場合に限られます。

電子契約にも将来的に印紙税が課される可能性はありますか?

現時点では電子契約は印紙税の課税対象外とされており、「収入印紙を貼る必要がない」契約方法として認識されています。ただし、国会答弁や税制調査会の報告書では、ペーパーレス化の進展や電子契約の信頼性向上に伴い、今後の制度見直しの可能性にも言及されています。今後の技術や制度の動向を注視することが重要です。

PDFで締結した契約書をメール送信した場合も印紙は不要ですか?

契約書をPDF形式で作成し、メールで相手方に送信した場合、それが紙で出力・交付されない限りは、印紙税の課税対象にはなりません。国税庁の文書回答でも、PDFデータのやり取りは「用紙等」への記載とみなされず、印紙税の課税原因は発生しないと明記されています。つまり、紙を介さない完全な電子契約であれば印紙は不要です。

契約金額が大きい企業は電子契約の導入を優先して検討を

契約を電子化することにより、印紙税や経費などのコスト削減になることがわかりました。改ざんやなりすましに対しては、電子署名の導入が有効です。特に1件あたりの契約金額が大きい企業の場合、収入印紙にコストがかかっている可能性があります。多額の印紙税を納税している企業は、コスト削減の優先項目として電子契約の導入を検討してみてはいかがでしょうか。電子契約と合わせて電子署名を導入すると、セキュリティが強化されるでしょう。

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▼電子契約システムについて詳しく知りたい方はこちら

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WRITER
宮沢 明香里
デジタル認証事業部カスタマーサクセスマネージャー
住設メーカーの営業・企画業務を経験後、2021年シヤチハタ株式会社へ入社。 デジタル商材の営業を経て、現在はShachihata Cloudをさらに活用してもらうため、 クライアント向けセミナーや新機能リリースの企画業務を行う。
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