近年、企業間での契約手続きにおいて、デジタル化の波が高まっています。従来の紙ベースの契約から、電子契約やクラウド契約への移行が加速しているのです。この背景には、業務効率化、リモートワークの普及、セキュリティやコンプライアンスの強化など、多岐にわたる課題があります。こうした新しい契約方法には、どのような特徴やメリットがあるのでしょうか?そして、実際に導入する際に必要な機能とは何でしょうか?本記事では、クラウド契約とは何か、そしてそのメリット・デメリットと必要な機能について解説していきます。
現代のビジネスシーンは、ITの導入によるデジタル化が進んでおり、従来の紙ベースの契約に代わり、電子による契約を採用する企業が増えています。ここではまず、電子契約とクラウド契約の概要と違いについて解説します。
「電子契約」とは、電子委任状法2条2項(※1)で定義されており、企業が関わる契約で、コンピューターやその他の通信技術を使って契約内容をデジタル形式で記録するものを指します。これは従来の紙の契約書に代わるもので、電子的に作成された記録が契約の証となります。
一方、「クラウド契約」は電子契約の概念をさらに一歩進めたもので、契約書の作成、締結、保存、管理を全てクラウド上で行うことを可能にしたサービスです。つまり、クラウド契約は、単に契約書をデジタル化するだけでなく、契約に関わる一連のプロセスをクラウド上で完結させることができる、より包括的なデジタルでの「契約管理システム全体」を指します。電子契約は厳密には契約締結のデジタル化を指しているのに対し、クラウド契約は契約のライフサイクル全体をクラウド上で実施・管理すること意味しています。
※1参考:平成二十九年法律第六十四号 電子委任状の普及の促進に関する法律
クラウド契約サービスは、企業がクラウド契約を行うために提供されたクラウドサービスです。企業が契約プロセスをより効率的に管理できるように設計されており、クラウド契約サービスを利用することで、契約書の作成、締結、承認、保管、検索、更新など、契約に関するあらゆるプロセスをインターネット上で一元管理することが可能になります。
クラウド契約の導入は、企業が抱えている課題を解決する有効な手段となっています。しかし、その利点を享受するためには、いくつかのデメリットも考慮する必要があります。ここでは、クラウド契約の主なメリットとデメリットについて詳しく解説します。
クラウド契約を導入するメリットは下記の通りです。
クラウド契約の大きなメリットは、業務効率化の実現です。クラウド契約を利用することで、契約書の作成、確認、署名、保管といった一連の契約プロセスがデジタル化されます。紙の契約書を物理的にやり取りする手間や時間、印刷や輸送等にかかるコストが削減されます。また、契約関連の書類をクラウド上で一元管理できるため、検索が容易になり、業務の効率化につながります。
クラウド契約は、インターネットさえ利用できれば、地理的な制約を超えて契約業務が可能です。これにより、リモートワークが容易になり、従業員や契約相手との柔軟なコミュニケーションが実現します。特に、新型コロナウイルス感染症の流行に伴う働き方の変化を背景に、このメリットはより一層重要なものとなっています。
クラウド契約サービスは、通信の暗号化など、様々なセキュリティ対策が施されているため、契約に関する機微な情報の漏洩リスクを最小限に抑えることができます。また、電子署名法などの関連法令に準拠しているため、法的効力も確保されます。そして、改正電子帳簿保存法といった、企業側での対応が必要となる法律にも対応が可能です。
クラウド契約にも勘案するべきデメリットはあります。クラウド契約を導入するデメリットは下記の通りです。
クラウド契約の導入には、従来の紙ベースの契約プロセスからデジタル化への移行が必要となります。この変更には、社内の業務フローの見直しや従業員への教育が伴い、一時的な混乱や抵抗感が生じる可能性があります。
クラウド契約サービスの導入には初期費用や月額利用料が発生します。また、従業員に対する新しいシステムの使い方の教育も必要となり、短期的にはコストが増加する可能性があります。しかし、長期的に見れば、業務の効率化によるコスト削減効果が期待できます。
契約書によっては、電子での契約が認められていないものがあります。事業用定期借地契約や農地の賃貸借契約書といった、一部の不動産取引では公正証書で作成する必要のある契約書があります。このようなケースでは紙の契約書が必要となるため、クラウド契約が全てのビジネスシーンに適用可能というわけではありません。
クラウド契約を行うためには、契約書の作成から署名、保管に至るまでの契約プロセスをデジタル化するための機能が必要です。ここでは、クラウド契約に必要な機能について解説します。
電子印鑑は、紙の契約書における物理的な印鑑(印影)をデジタル形式で置き換えたものです。電子印鑑は、印影を画像化しただけの簡易的なものから、利用者の身元を証明するための機能が備わっているものもあり、偽造や改ざんを防ぐ役割も果たします。クラウド契約では、この電子印鑑を用いて、遠隔地にいる契約相手に対して簡単に署名することが可能です。
電子署名は、電子印鑑と同様にデジタル形式での契約を可能にする重要な機能です。電子署名技術を用いることで、文書の作成者の身元を確認し、文書が送信後に改ざんされていないことを保証します。これは、契約書の真正性と信頼性を確保する上で必要な機能です。
電子署名には、「当事者型」と「立会人型」があり、当事者型は契約をしたい本人が電子署名を付与する方法で、立会人型は、契約の当事者ではない第三者が電子署名を付与する方式です。当事者型は手間とコストがかかるため、クラウドでは立会人型の電子署名が採用されるケースが多いです。
クラウド契約におけるワークフロー機能は、契約書の作成、承認、署名、保管といった一連のプロセスを管理し、自動化するための機能です。ワークフローにより、契約関連のタスクが正しい順序で、迅速かつ効率的に実行されます。契約プロセス全体の流れが可視化され、フローがどこまで進んでいるのかを簡単に知ることができます。
クラウドストレージは、契約書を含む重要な文書を安全に保存し、必要な時にいつでもアクセスできるようにするための機能です。クラウドベースのストレージを使用することで、物理的なスペースを節約し、紛失や破損のリスクから文書を保護することができます。また、適切な権限管理により、文書へのアクセスを厳密にコントロールし、情報のセキュリティを確保します。
迅速かつスムーズな契約締結を行うには、オンラインでいつでも、どこからでも効率的に契約プロセスを進められるクラウド契約サービスを活用することが非常に効果的です。クラウド契約サービスは、効率性だけなく、ペーパーレスによるコスト削減や、セキュリティ強化も狙うことができるため、非常に有効な対策のひとつと言えます。
Shachihata Cloudは、電子契約の仕組みを提供しています。電子署名及び認証業務に関する法律(通称:電子署名法)に準拠した立会人型電子署名を行うことが可能です。難しい操作を覚えることなく、今まで通りの「捺印」を行うことで電子契約の業務をインターネット上で完結することができます。二要素認証や電子署名による高いセキュリティを実現していることも強みです。
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クラウド契約サービスの採用を検討する際は、自社の契約プロセス、セキュリティポリシー、予算などを総合的に考えて検討することが必要です。業務効率の最大化が可能なサービスを選定し、ビジネスの加速を狙ってみてください。