近年、自治体における電子契約の導入が加速度的に進められており、バックオフィスシステムの見直しが急務です。ただ、機密性の高いサービスを提供する自治体で電子契約を導入する際には、システム上のリスクを考慮したうえでサービスを選定しなければなりません。
記事では、自治体で電子契約が導入しやすくなった理由を解説いたします。導入事例や有用性、課題解決に適したシステムの選定基準も紹介していますので、安全にDXを進めたい自治体の担当者の方はぜひご一読ください。
DX COLUMN 電子契約とは?仕組みやメリット・デメリットをわかりやすく解説
働き方改革やリモートワークの普及によって、電子契約という言葉を耳にする機会が増えました。しかし、そもそも「電子契約って何なの?」と疑問を感じる人もいるかもしれません。昨今では電子契約を導入する企業も増えているため、その仕組みや導入するメリット・デメリットは把握しておく必要があるでしょう。本記事では、電子契約の仕組みや導入するメリット、書面契約との違いについてご説明いたします。
まず、自治体が電子契約を活用しやすくなった以下2つの経緯をみていきましょう。
地方自治法における電子契約の導入要件の緩和
グレーゾーン解消制度による適法性の認定
以前、自治体において電子契約の導入が進みにくかったのは、法制度にグレーゾーンが存在したことが要因の一つです。これまでの地方自治法における電子契約の導入要件では、第234条第5項および第12条の4の2により、契約者の双方が下記3つをシステムに付与する必要がありました。
上記要件をすべて満たすのは非常に厳しく、法制度の適用範囲も不明確だといえます。そのため、自治体では実質的に電子契約が利用できなかったのです。
しかし、2021年1月29日付けで電子証明書の付与を義務付ける地方自治法施行規則第12条の4の2第2項が削除され、電子契約導入のハードルが緩和されました。電子署名法に基づき、一定の要件を満たす電子署名を施せば電子契約が可能になったのです。
また、従前の規則では当事者型の電子契約しか締結できませんでした。しかし、上記法改正により立会人型のシステムでも要件を満たせるようになり、現行制度で利用できる電子契約ツールの種類が増えています。
当事者型の電子契約においても、マイナンバーカードに付与された電子証明書が利用可能となったため、さらに使いやすいシステムになりました。
法改正に加え、グレーゾーン解消制度も自治体における電子契約の導入を加速させた要因となりました。グレーゾーン解消制度とは、法的規制範囲のあいまいさを解消するため、事前に適法性を確認できるという産業競争力強化法に基づく制度です。さまざまな電子契約サービス・システムの法的効力が認められ、脱ハンコの動きはさらなる進展が期待されています。
次に、自治体ではどれくらい電子契約が活用されているのか、以下2つの観点から確認していきましょう。
自治体での電子契約の導入数
自治体・地方公共団体での電子契約の導入事例
弁護士ドットコム株式会社の調べによると、2023年6月1日現在、電子契約を導入している自治体は126市区町村です。前年と比べ、7倍も増加しています。新型コロナ感染症への対策をきっかけに、電子契約を利用し始めたケースが多いようです。その後、電子契約の有用性に注目が集まり、活用する自治体が徐々に広がっていきました。普及率はまだ全自治体の7%にとどまっているものの、今後さらなる普及の拡大が期待されています。
続いて、シヤチハタ株式会社の製品「Shachihata Cloud(シヤチハタクラウド)」をご活用いただいている自治体・地方公共団体の事例を紹介いたします。
意思決定のためのプロセスが非常に複雑かつ厳格な傾向にある公の機関において、業務効率化やコスト削減に役立てられています。また、電子印鑑を利用できて抵抗感が少ないことや、従来の業務フローにそのまま組み込める点も弊社が選ばれている理由です。
自治体が電子契約を導入すれば、主に以下5つのメリットを得られます。
電子契約を導入すれば、不要な決裁フローが省略できるようになります。非来庁・非対面でのスピーディーな手続きが実現可能です。書類の郵送時間も短縮できるうえ、契約の進行状況が可視化されることにより進捗確認も容易になるでしょう。
電子契約を導入すれば、不要な決裁フローが省略できるようになり、スピーディーな手続きが実現します。書類の郵送時間も短縮できるうえ、契約の進行状況の確認も容易です。
また、紙書類への一連の押印作業が不要になるため、業務が効率的に遂行できるようになります。書類のチェックもしやすく、押印ミスによる押し直しもほとんどありません。
スペースを圧迫しがちな紙の書類とは異なり、電子文書なら物理的な保存スペースが必要ありません。迅速に検索・閲覧できるため、情報管理がしやすくなる点もメリットです。
電子契約の導入後は、消耗品等にかかるさまざまな経費を削減できます。紙書類の印刷にかかっていた用紙代やインク代、取引先等への送料など、書面契約に必要なコストが大幅にカットできるでしょう。
電子契約では、特定の人物へのアクセス権限付与や承認者指定が可能です。業務上のセキュリティリスクを軽減でき、コンプライアンス強化による経営体制の確立につながります。
電子契約には、以下のような点に注意して導入を進める必要があります。
あらかじめ上記リスクを把握し、対策を講じれば、電子契約の利点を最大限に活かせるでしょう。
電子契約では、従来の紙の契約書でのやり取りとは異なる契約プロセスとなります。不慣れなうちは、不備やミスが発生しかねません。電子契約がスムーズに履行できるよう、業務フローの見直しに加え、職員への教育を徹底することが必要です。
クラウド上で情報を取り扱う電子契約では、不正アクセスやサイバー攻撃の危険性がないとは言い切れません。システム導入の際は、厳格なセキュリティ体制の構築が必要です。
電子契約は対面でのやり取りではないため、意図的ななりすましが可能です。もし決裁権限を持たない者が代表者や担当者になりすまして契約を締結した場合、広範囲にトラブルが波及するおそれがあります。電子契約を締結するときは、事前に本人確認を徹底してください。もしくは、重要性の高い書類には、電子証明書の付与を検討することをおすすめします。
電子契約の利用には、相手方の理解が不可欠です。合意なく一方的には利用できません。また、相手方が電子契約に関してきちんと理解できていないまま取り入れると、トラブルが発生するおそれがあります。よって、電子契約の利用は事前に説明会の開催やマニュアル配布、相談窓口を設置するなどして丁寧に説明し、相手方の合意を得てから開始しましょう。また、初期のうちは書面契約と電子契約の併用もおすすめです。
自治体のシステムに導入する電子契約サービスは、次の3点を基準に選定しましょう。
機密性の高い情報を取り扱う自治体の契約業務には、当事者型の電子契約システムが向いているといわれることも少なくありません。しかし、当事者型の電子契約システムは導入費用が高い傾向にあり、予算面が厳しい自治体もあるでしょう。また、契約の手続きも煩雑で手数料もかかることから、相手方に拒否される可能性があり、汎用性が高いとは言い難い面があります。
対して、立会人型の電子契約サービスはインターネット環境さえあれば手軽に利用可能です。公開鍵暗号方式による電子署名と認定タイムスタンプが付与できるシステムを採用すれば、電子署名法の要件を満たせるため、自治体でも幅広い取引に活用できます。
電子契約サービスの中には、現行システムを大きく刷新する必要があるタイプもめずらしくありません。しかし、規程の大幅な改変は、手間と時間がかかりすぎてしまいます。
一方、従来の書面契約における業務フローにそのまま組み込めるサービスなら、最小限の負担でスムーズに導入・運用できるでしょう。
多くの住民の個人情報を取り扱う自治体では、セキュアな環境で契約できるかが最も重要なポイントであるといっても過言ではありません。そのため、高いセキュリティレベルを維持できる行政専用のLGWAN(総合行政ネットワーク)環境で利用できる電子契約システムが推奨されます。通常のインターネット環境とLGWANの両方でアクセス可能なら、幅広いシーンで活用できるでしょう。
現在、多くの自治体が運用を開始している電子契約は、今後の取引において主流の手続きになっていく可能性も高いといえます。ただし、電子契約のリスクに対応するためには、セキュアな環境を徹底できる信頼性の高いサービスを選びたいところです。また、限られた予算と厳格な規定の中で、システムを大幅に作り変えるのは難しい自治体も少なくないでしょう。
立会人型の「Shachihata Cloud(シヤチハタクラウド)」は、法的基準に適合した電子契約サービスです。現行システムと併用可能であり、電子印鑑により押印システムを継続できます。電子署名・タイムスタンプによる徹底したセキュリティ対策で安心してご利用いただけますので、ぜひご一考ください。