リモートワークやDX推進の影響から、電子契約サービスを導入する企業が増えてきました。JIPDEC(一般財団法人日本情報経済社会推進協会)の調査によると、2020年では日本全体の43.4%の企業が電子契約を利用しており、27.5%の企業が利用を検討しているようです。実際、電子契約を導入することで、業務効率化やコスト削減などさまざまな恩恵を受けられます。
しかし「導入を検討しているが、電子ファイルの契約書にはどれくらいの効力があるのだろうか?」と疑問を感じている人もなかにはいるでしょう。本記事では電子契約の効力について、関連する法律の紹介も含めて解説いたします。
そもそもなぜ契約書は必要なのでしょうか。
民法522条では「契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない」と記載されており、特段書類がなくても契約は成立すると定められています。しかし、実際のビジネスの場では契約書を交わさずに取引をするケースは少ないのが実情。なぜなら、契約書は「リスクヘッジ」という大きな役割を果たすため、多くの企業にとっては必須といえるものだからです。
具体的な電子契約のメリットは下記の通りです。
・合意内容が明確になることで、当事者間での誤解によるトラブルを防げる
・契約に関して何かトラブルが発生した際にも、有力な証拠になりうる
契約書を交わさなかった場合、いざトラブルが起きて「あのとき、口頭でこういった契約をしていました!」と叫んでも、裏付ける証拠がなく説得力に欠けてしまいます。
そのため、将来発生する可能性があるリスクを想定したうえで、実際にトラブルが生じた際の解決方法まで含めた契約書を作成することは、リスクヘッジの観点で非常に重要な役割を果たすのです。
書面契約は、押印もしくは署名によって法的効力を持つことになります。一方で電子契約は、電子ファイルに電子署名とタイムスタンプを付与することによって法的効力を持つとされています。
電子署名とは「誰が何を契約したのか」を記録できる技術のこと。タイムスタンプは「いつ契約したのか」を証明できる技術のこと。つまり、この2つの技術によって「いつ・誰が・何を契約したのか」を技術的に証明することが可能となります。
また、電子署名が付与された契約書は第三者によって改ざんはされず、たとえ改ざんが検知された場合でも警告が表示されるため、セキュリティ上も非常に安全なシステムといえます。そのため現代では、電子契約も書面契約と同等の法的効力を持つ存在となっているのです。
次に、電子契約にまつわる法律についてご紹介いたします。
2000年に成立した電子署名法によって、電子契約は書面契約と同様に法的効力が認められるようになりました。具体的には、下記要件を満たした場合のみ効力が認められています。
・電子文書に電子署名が付与されていること
・電子署名が本人(電子文書の作成名義人)の意思に基づき行われたものであること
さらに先述したタイムスタンプも付与されている場合は、改ざんの可能性も低いと判断され法的に大きな効果が期待できます。
参考:利用者の指示に基づきサービス提供事業者自身の署名鍵により暗号化等を行う電子契約サービスに関するQ&A
税法によって契約書は原則書面で保存することが義務付けられていますが、電子帳簿保存法によって一部の書類では電子保存が可能とされています。
また、この法律は2022年1月に改正が予定されており、具体的な変更点は下記の通りです。
①承認制度の廃止
これまでは、電子契約を導入する3か月前までに税務署に申請をして許可を待つ必要がありました。しかし法改正後はそれが不要となり、申請手続きの簡略化や導入時間の短縮化に繋がります。
②タイムスタンプ要件の緩和
これまでは、スキャナした際に受領者が自署して3営業日以内にタイムスタンプを付与する必要がありました。しかし、法改正後は受領者の署名が不要になることに加え、タイムスタンプの付与期間が最長2か月以内に変更となります。これによって、担当者の対応に時間的な余裕が生まれるでしょう。
③検索要件の緩和
これまでは、電子データを保存する際にさまざまな検索機能を確保する必要がありました。しかし、法改正後は検索要件が年月日・金額・取引先のみとなります。これによって検索要件の登録や管理に必要な工数や時間の削減が見込めるでしょう。
④適正事務処理要件の廃止
これまでは、内部統制として定期検査と相互けん制の適正事務処理要件の対応が必要でした。しかし、法改正後は対応が不要となります。これによって、電子データの処理に必要以上のチェック体制が不要となるため、工数や人的リソースの削減に繋がるでしょう。
電子契約は業務効率化やコスト削減の観点から、導入のメリットは明らかです。しかしそれでも多くの企業が躊躇していたのは、何らかのボトルネックがあったため。今回の改正で諸条件が緩和されたことによって、電子契約を導入するハードルが大きく下がり、これから導入社数もきっと増えていくことでしょう。
また、電子化要件の緩和がされる一方で、データ保存の義務化も施行されます。これまでは電子契約であっても書面で保存することが認められていましたが、法改正後には電子データの保存が義務化されますので、ご注意ください。
参考:国税庁資料
続いて、書面契約と電子契約のワークフローの違いについて解説します。
そもそもワークフローとは、契約書の承認を得るまでのルートのことです。担当者が決裁者へ承認依頼をし、実際に承認を経たうえで、相手方に署名依頼を送信するといったルートが一般的です。
書面契約と電子契約では、この工程にどのような違いがあるのでしょうか。
書面契約では、商習慣として押印作業が必要になります。そのため「書類を印刷して、担当者に渡して……」など、承認を得て回収するまでに一連の工程が発生してしまうのです。さらに社外契約の場合は郵送工程も必要となるため、その分の手間もかかってしまいます。
一方で、全社的に電子契約を導入した場合は印刷や手渡しなどといった工程が不要となります。また、電子契約サービスでは基本的にワークフロー機能が搭載されているため、ワークフローは変えずとも電子契約に移行することが可能です。その代わり、導入時には利用マニュアルやルール整備は必要となるでしょう。
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