電子契約とは?仕組みやメリット・デメリットをわかりやすく解説


働き方改革やリモートワークの普及によって、電子契約という言葉を耳にする機会が増えました。しかし、そもそも「電子契約って何なの?」と疑問を感じる人もいるかもしれません。昨今では電子契約を導入する企業も増えているため、その仕組みや導入するメリット・デメリットは把握しておく必要があるでしょう。本記事では、電子契約の仕組みや導入するメリット、書面契約との違いについてご説明いたします。
電子契約とは

電子契約とはインターネットを介して契約する方法のことです。書面契約と異なり契約までに時間がかからず、またインターネット上で完結するため、IT化の進む近年では注目を集めています。
まずは、電子契約の具体的な種類や書面契約との違いについてご説明いたします。
電子契約には2種類のタイプがある
電子契約には「当事者署名型」と「事業者署名型(立会人型)」の2種類があります。当事者署名型とは契約する当事者が電子署名を行うこと、一方で事業者署名型は電子契約サービス事業者が電子署名を行うことです。
そもそも電子署名とは、契約書などをデータ化した電子文書に対して付与される署名を指し、内容が改ざんされていないことを証明する役割があります。
当事者署名型では、認証サービスの会社から電子証明書のファイルを発行してもらう必要があるのに対して、事業者署名型(立会人型)ではメール認証で本人確認さえすれば利用できます。そのため、手軽に導入できるというメリットから、近年では事業者署名型(立会人型)の電子契約が普及してきています。
書面契約との違い
電子契約と書面契約の違いは下記の通りです。
書面契約 | 電子契約 | |
押印 | 印鑑・印影 | |
本人証明 | 印鑑登録証明書 | 電子署名 |
改ざん防止方法 | 契印・割印 | タイムスタンプ |
管理 | デスクや書棚等 | サーバー |
印紙 | あり | なし |
書面契約とは異なり、電子契約はインターネット上で行われるため実本がないことが大きな特徴です。印刷コストがかからない一方でセキュリティ面での懸念があるなど、その性質上さまざまなメリット・デメリットがあります。具体的な詳細は後述しますので、そちらをご参照ください。
電子契約の普及率
近年ますます普及している電子契約ですが、実際に国内でどれぐらい普及しているかご存知でしょうか。2022年にJIPDEC(一般財団法人日本情報経済社会推進協会)が行った調査によると、日本全体の69.7%の企業が電子契約を利用しており、14.7%の企業が利用を検討しているようです。合わせると84.4%にも上ることから、電子契約を利用している企業が増加していることが分かります。
電子契約が注目される背景
電子契約が注目される背景として、日本全体でDXが推進されていることが挙げられます。DXとはデジタルトランスフォーメーションの略で、ITの普及で社会を変革させるという意味です。2018年には政府から「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン」が発表され、その一環として電子契約の推進も注目を集めています。
また、新型コロナウイルスの影響によってリモートワークを実施する企業が増えたことも、電子契約の普及を後押ししたと考えられるでしょう。
電子契約の仕組みと技術
続いて、電子契約の仕組みや技術についてご説明いたします。
電子署名の技術を採用
電子契約は情報の改ざんを防ぐ電子署名の技術を採用しています。電子認証局から発行される「電子証明書」を用いて、署名や捺印などの電子化を実現しているのです。「電子証明書」を発行できるのは国が許可した認証事業者や電子契約サービス会社のみなので、電子契約は強固な技術と仕組みによって支えられています。
公開鍵暗号方式によって安全が守られている
また、電子契約では「公開鍵暗号方式」という技術を用いています。これは送信側が公開鍵(誰でも取得できる鍵)でデータ送信をして、受信側が秘密鍵(受信側だけが取得できる鍵)を用いて暗号を解き、データを開封するという仕組みのこと。構造上、秘密鍵さえ守れば第三者からデータを閲覧される心配はないため、安全なデータ送信が実現されています。
電子契約のメリット
次に、電子契約のメリットについて詳しくご説明いたします。
コストを削減できる
電子契約はインターネット上で行われるため、書面契約で必要とされていた下記コストが不要となります。
・印刷代、コピー用紙代
・インク代
・封筒代
・郵送費用
・印紙代
契約書1通あたりのコストは小さいですが、社内外を問わず多くの契約を交わす企業では、長期的にみると大きな削減に繋がるでしょう。
業務効率化につながる
書面契約では印刷や製本など、アナログな手続きが必要でした。郵送に時間がかかり、契約締結までスムーズに運ばないことに頭を悩ませる人も多かったことでしょう。しかし、電子契約ではこのような手間がかからないため、業務効率化に繋がります。たとえばリモートワーク中でも、わざわざ押印のために出社する必要がないため、無駄な時間コストがかかりません。
コンプライアンスを強化できる
書面契約では紛失のリスクが伴います。しかし電子契約ではこのような心配がないため、管理上コンプライアンスの強化に繋がります。また、火災や自然災害によって契約書のバックアップがとれないといったリスクも少ないため、BCP(Business Continuity Plan:企業継続計画)の観点からもリスクの少ない契約手段であると考えられます。
電子契約のデメリットや注意点
一方で、電子契約にはデメリットや注意点もあります。
取引先の同意がないと利用できない
電子契約は双方の同意があって初めて成立するものです。 取引先に電子契約で問題がないか許可を得る必要があり、もし許可をもらえない場合には理解してもらうよう説得が必要となります。
導入時には社内の業務フローを見直す必要がある
全社的に電子契約を導入する場合、業務フローを見直す必要があります。また、ルールや利用マニュアルも必要となるため、導入前にしっかりと用意しておきましょう。
セキュリティ面のリスクがある
電子契約は安全な技術が採用されていますが、サイバー攻撃の可能性は0ではありません。電子契約サービスを導入する際には、セキュリティが強固なものを検討するなど、事前にリスクを下げる努力が必要です。
電子契約できない書類もある
多くの契約は電子契約が認められていますが、一部できないものもあります。
①任意後見契約
②事業用定期借地契約
③企業担保権の設定又は変更を目的とする契約
これらの契約は法律によって 公正証書を作成する義務があるとされているため、現状では電子契約がは認められていません。あらかじめ確認しておきましょう。
電子契約に関する法律
電子契約に関する法律をご紹介いたします。
電子署名法
2000年に成立した電子署名法によって、電子契約は下記要件を満たした場合のみ法的効力が認められています。
・電子文書に電子署名が付与されていること
・電子署名が本人(電子文書の作成名義人)の意思に基づき行われたものであること
参考:利用者の指示に基づきサービス提供事業者自身の署名鍵により暗号化等を行う電子契約サービスに関するQ&A
電子帳簿保存法
契約書は税法により、紙で保存することが義務付けられています。しかし電子帳簿保存法によって一部書類では電子保存が可能とされています。
1998年に成立した法律ですが、時代の変化と伴って改正を続けており、2021年には下記の変更が加わりました。
改正前(~2021年) | 改正後(2021年~) | |
税務署長の事前承認制度 | 電子契約を導入する3ヶ月前までに税務署に申請をして許可を待つ | 廃止されたため不要になった |
タイムスタンプ要件 | ・受領者が自署 ・3営業日以内にタイムスタンプを付与 | ・受領者の署名は不要 ・最長約2ヶ月と7日営業日以内にタイムスタンプを付与 |
検索要件 | 電子データを保存する際にさまざまな検索機能を確保する必要があった | 年月日・金額・取引先のみになった |
電子契約サービスを選ぶポイント

電子契約を導入するためには、自社にあったサービスを選ぶ必要があります。
ここでは、電子契約サービスの選び方を3点解説いたします。
- 導入前後のサポート体制
- ツールの使いやすさ
- セキュリティレベル
導入前後のサポート体制
電子契約を導入する上で重要なのは、サポート体制です。
新たなサービスは、導入してからトラブルが起こることも珍しくありません。
困ったときにすぐ対応してくれる体制が整っているサービスを選ぶと、無駄に時間をロスしてしまうことを避けられます。
問い合わせ方法や専属担当者の有無、無料・有料サポートの違いなどサポート体制について細かく確認しておくとよいでしょう。
ツールの使いやすさ
電子契約を導入した後、スムーズに使えるかというのも重要なポイントです。
操作が複雑、時間がかかるなど使いにくい点があると、電子契約のメリットである業務効率化に支障が出てしまいます。
無料体験があるサービスがほとんどなので、トライアル期間に操作性を確かめるのがおすすめです。
セキュリティレベル
電子契約には「当事者署名型」と「事業者署名型(立会人型)」の2種類があります。
当事者署名型では、認証サービスの会社から電子証明書のファイルを発行してもらう必要があるため、より強固な証拠能力があります。
一方、事業者署名型(立会人型)は電子証明書の発行が必要ないため、手軽に導入できる点がメリットです。
業種によってはよりセキュリティレベルが高いとされる当事者署名型が適している場合もありますので、それぞれのメリット・デメリットを比較して検討することをおすすめします。
電子契約導入までの7ステップ

ここでは、電子契約導入までの流れを順に解説いたします。
1.電子契約を導入する目的を確認する
まずは、なぜ自社で電子契約を導入したいのか確認しましょう。
電子契約サービスには、使える機能が多い高額なものから最低限の機能を備えた低コストなものまでさまざまなものがあります。
自社で電子契約を導入する目的が定まっていなければ、サービスを比較するポイントが定まりません。
経費を削減したい、リモートワークを進めるためにワークフローを電子化したいなど具体的な目的を洗い出しましょう。
2.電子契約に切り替える書類を決定する
次に、どの契約書を電子契約に切り替えるかを考えましょう。
すべての契約書を電子化することが最終目標ではありますが、最初からすべて電子化してしまうと混乱を招いてしまいます。
おすすめは、使用頻度の高い契約書から切り替えていくことです。
契約の手間が省けることを従業員が実感しやすいため、電子契約の定着に繋がります。
3.自社にあったサービスを探す
電子契約に切り替える書類契約を決めたら、いよいよサービスを探します。
初めに考えた電子契約を導入したい目的を軸にして、導入するサービスの候補を決めましょう。
ここでは1つに絞る必要はなく、「コスト面ならA」「視認性の良いワークフローならB」のようにいくつか挙げておき、それぞれ無料トライアルを試すことをおすすめします。
4.運用方法やワークフローを確認する
紙での契約から電子契約に変更するにあたって、運用方法やワークフローを確認しましょう。
電子契約サービスは、権限の付与によって利用できる従業員を限定できます。
セキュリティの観点からも、どの従業員にどの権限を与えるかは、慎重な検討が必要です。
また、紙での契約から稟議の流れが変わることも予想されます。
曖昧なまま運用を始めてしまわないよう、導入以前に運用方法やワークフローを検定することが重要です。
5.社内アナウンスを行う
電子契約の導入や運用方法の変更を社内従業員に伝えましょう。
実際に契約業務を行う従業員には、導入予定のサービスの操作方法や規程などを説明します。
本格的に導入する前から説明することで、スムーズな切り替えに繋がります。
6.取引先に説明を行い、同意を得る
取引先に自社が電子契約を導入する目的を伝え、承諾を得ることも忘れてはいけません。
サービスによっては、担当者が取引先への説明に同行してくれる場合もあります。
安全面や操作方法、双方のメリットなどを伝え、同意を得られるよう交渉しましょう。
7.正式に電子契約サービスを導入する
無料トライアルを利用して、今後も使い続けたいと思ったサービスを本契約します。
社内での定着には時間がかかることが予想されます。
焦らず、数年かけて紙から電子に移行するイメージで進めていきましょう。
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電子契約には、業務効率化やコスト削減など大きなメリットがあります。セキュリティ面が心配されていますが、そもそもセキュリティが万全な電子契約サービスを導入すれば問題はありません。
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インターネット環境とメールアドレスさえあればすぐに使えるので、是非一度お試しください。















