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コラム

在宅勤務の普及で「脱ハンコ文化」は進むのか?変わる労働環境とハンコ問題

WRITER
石井 慶
シヤチハタ株式会社 システム開発部 開発4課課長
1994年入社。入社5年後電子印鑑を共同開発したアスキー・ネットワーク・テクノロジー社に出向し何も知らなかったITの基礎を学ぶ。現部署に異動後、業務改革を実行する企業に寄り添う毎日を送っている。

新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、普段の私生活はもちろん、企業における働き方も変革期を迎えることとなりました。自身を守り周囲への感染拡大を防止するべく在宅勤務が推奨され、急遽リモートワーク(テレワーク)ができる体制を整備することとなった企業が増加しています。このような労働環境の変化に伴い、日本企業の「ハンコ文化」が問題となって議論されています。

本記事では日本の「ハンコ文化」の現状と、この問題に対する政府や経団連の見解とそれを受けた企業の動きを紹介し、脱ハンコに向けた日本の現状についてご説明します。

日本企業におけるハンコ文化の現状

電子印鑑が日本社会全体で普及しにくい原因の一つに、契約者・被契約者双方の同意が必要ということが挙げられます。自社で電子印鑑システムの導入を決めたとしても、契約先の相手が受け入れなければ、電子印鑑を利用することができません。

法律においては電子契約へ移行させるべく、近年規制は毎年緩和されている傾向にあります。たとえば2019年4月には労働条件通知書の電子化が解禁されました。

参考:厚生労働省「労働基準法施⾏規則」 改正のお知らせ
https://www.mhlw.go.jp/content/000481172.pdf

しかし、コロナ禍で緊急事態宣言が発令された状況においても、紙書類への捺印のために出社せざるを得ない方がまだ多いのが現状です。出社を余儀なくされるということは、社員の健康・生命を危険に晒すことでもあります。まさに今こそペーパーレス化を推進すべきときなのではないでしょうか。

ハンコ文化に対する政府や経済界の反応

政府はテレワーク推進を目的として、「脱ハンコ文化」に積極的な姿勢を見せています。経団連としてもハンコを無くすことに対し肯定的です。ハンコをめぐる関係各所の意見をまとめてご紹介します。

IT担当大臣・竹本直一氏の発言

IT担当大臣の竹本氏は、「日本の印章制度・文化を守る議員連盟(はんこ議連)」の会長でもあります。2019年9月12日の就任記者会見の時点では、印鑑を生業としている方々にとって、ハンコ文化がなくなることは死活問題であり、ハンコとデジタル化は両方残すべきであるとの見解でした*1

また、新型コロナウイルスの感染が拡大した2020年4月14日の記者会見の時点でも、ハンコ文化の問題は民間同士の話であり、国として介入する意向はないことを示していました*2

しかし、2020年4月24日の閣議後会見では、「ハンコのために会社に行くと公共交通機関の中で密の状態が発生する可能性がある。できるだけ省いたほうがいい」と述べています。ハンコ文化廃止へと大きく舵を切ったことと受け取れます*3

安倍首相も2020年4月22日に、IT総合戦略本部の会合で「民間の経済活動についても、紙や押印を前提とした業務慣行を改め、オンラインで完結することが原則となるよう、民事ルールも含め、国の制度面で見直すべき点がないか全面的な点検を」と閣僚らに指示をしています*4

防衛大臣・河野太郎氏の発言

このような状況を受けて、河野防衛大臣は2020年4月24日の閣議後会見において、「こういうコロナの状況で果たしてハンコが必要なのか、電子で稟議をやれるような仕組みもあります」「業務の効率化を」と発言し、防衛省が率先して脱ハンコに取り組む姿勢を示しました*5

経団連・中西宏明氏の発言

経団連の中西会長は2020年4月27日の定例記者会見において、紙書類への押印のために出社を余儀なくされるケースについて触れ、「ハンコはナンセンスだと思う」「電子署名でもいい」と指摘し、企業や行政のやり取りをデジタル化するよう訴えました*6

脱ハンコ宣言を行った民間企業

以上のような流れを受けて、早速「脱ハンコ宣言」をする民間企業が出てきました。以下の企業はニュースリリースも発表し、改革に乗り出しています。

株式会社メルカリ・メルペイ

メルカリ・メルペイにおいては、新型コロナウイルスの感染拡大長期化に伴い、電子署名サービスでの契約締結に切り替えていく方針を決定し、2020年4月8日にその内容を発表しています。取引先の協力なくして推進することはできないため、契約締結の際に取引先へ電子署名サービスでの対応を要請すると方針を固めています。

参考:https://about.mercari.com/press/news/article/electronic_seal/

電子印鑑の法的効力

契約書等を電子化するにあたり、おそらく多くの企業の方が危惧されるのが、電子印鑑でも法的効力を持つ証明になるのかという点ではないでしょうか。実印と同等の法的効力のある捺印をすることは、電子印鑑においても可能です。ただし、捺印したのが本人である証明となる「電子証明書」が必要となります。電子証明は高度なセキュリティ技術により守られており、不正利用や改ざんを防止します。電子証明書の機能が付いた電子印鑑であれば、安心して契約に利用できます。

法律的に脱ハンコできない文書

電子化の推進に向けて動き出すことにはプラスの影響が多々ありますが、一方で注意しなければならないのが、法律的に「ハンコが必要な文書」も存在している点です。

電子契約は前提として被契約者の同意があって成立するものであり、企業によっては電子印鑑を認めていない場合もあります。相手方が認めていない以上、引き続き印鑑を使用した契約をするしか手段がありません。

また、財産目録を作成する場合にも注意が必要です。パソコンで作成した財産目録には、必ず「署名し、印を押さなければならない」と民法968条2項で規定されています。直筆の遺言書へ加筆・削除等する場合にも、署名と押印が必要とされています(民法968条第3項)。

コロナショックが企業の慣習を見直す契機に

かつては欧米でも紙書類を用いた契約が一般的でした。日本もコロナショックを契機に、電子化がさらに促進されていくものと見込まれます。これまで見直しされる機会のなかった企業の慣習を改めていく取り組みが今求められているのではないでしょうか。

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*1 内閣府 2019年9月12日 記者会見要旨
https://www.cao.go.jp/minister/1909_n_takemoto/kaiken/20190912kaiken.html

*2 内閣府 2020年4月14日 記者会見要旨
https://www.cao.go.jp/minister/1909_n_takemoto/kaiken/20200414kaiken.html

*3 内閣府 2020年4月24日 記者会見要旨
https://www.cao.go.jp/minister/1909_n_takemoto/kaiken/20200424kaiken.html

*4 首相官邸:IT総合戦略本部・官民データ活用推進戦略会議合同会議, 2020/4/22
https://www.kantei.go.jp/jp/98_abe/actions/202004/22it_kanmin.html

*5 防衛省・自衛隊:河野防衛大臣閣議後会見, 2020/4/24
https://www.mod.go.jp/j/press/kisha/2020/0424a.html

*6 日本経済新聞:経団連会長、ハンコ文化「ナンセンス」, 2020/4/27
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO58536970X20C20A4EE8000/